決戦武装姫シンデレラ! 〜真夜中の決戦〜

真偽ゆらり

魔法少女(物理)は早く帰って寝たい

「変身」


 その短い掛け声と共にまだ幼さが残る少女は眩い光に包まれた。

 真夜中を真昼間へと変える如き閃光が怪人達の目を焼き、少女の形へと収束する。


 胎児の様に丸まって浮かぶ光の少女。

 彼女が身体を起こすのに合わせて少女の身体が成長し始める。


 手脚は伸びてしなやかな四肢へ。

 伸びる頭身に合わせて腰にくびれが生まれ、より女性的な体型となっていく。

 慎ましかった胸は女性である事を主張できる程度にしか膨らまなかったが光に包まれた姿は淑女と呼ぶに相応しい肢体へと変化していた。


 変化は身体の成長だけに止まらない。


 手脚を包んでいた光が解け、光の帯となって少女に集いドレスの形へと変わる。光が完全なドレスの形となると光が弾け、淡い水色を基調とした華やかなドレスが姿を現した。弾けた光が流れる様に少女の指先から肘の辺りを包むと白いオペラグローブに、足を包むとガラスの靴へと姿を変える。


 手足を包む光の変化に合わせて少女の顔を包んでいた光も解け、光は美しく成長した少女の顔に化粧を施していった。

 少女の髪を包んでいた光は髪に吸い込まれる様に消えていき、少女の黒髪が内側から輝く様にして金色へと変わっていく。


 光の変化が終わり少女が閉じていた眼を開いて金色となった瞳を顕にさせるが、彼女の変身はまだ終わりではなかった。


 少女が拳を力強く握れば、彼女の両手は白銀に輝く鎧籠手ガントレットに包まれていく。

 白銀の鎧籠手が装着された両手で胸を撫で下ろせば白銀の胸当が、腰元を撫でれば白銀の腰当が現れた。


 他にも肩当や細かな装飾がドレスに装着されていき、舞踏会のドレスだったモノは武闘会へと着て行くドレスアーマーへと変わり果てる。


 最後に少女が金色となった長い髪を後ろで束ねると頭上にティアラが冠され、小さな王冠クラウンが束ねる髪の留め具となった。


決戦武装姫バトル・プリンセスシンデレラ! 魔法が解ける前にさっさと終わらせる」


 威圧感満載の決めポーズと共に少女が名乗りを上げると夜の暗闇を照らしていた光が更に光量を上げて再び彼女を取り囲んでいた怪人達の網膜を焼き尽くした。


 ただ一人を除いて。


「なんでお前らは毎回毎回分かってて閃光の対策をしてこないんだよ!?」


 夜の帷に溶け込む様な黒のタキシード風の衣装に身を包むサングラスをかけた少年が嘆く。


「だって真夜中の王子様ミッドナイト・プリンス様、夜にサングラスかけたら何も見えなくなるじゃないっすか——ぐぎゃ……」


 光る瞬間だけすれば良いという至極真っ当なツッコミを少年が入れる間もなく怪人達は地面と熱烈な口付けを交わしていた。


「もうやられてるし!? お前、変身バンクは長いくせに戦闘終わらせるの早過ぎんだよ!」


 悪の組織の幹部である少年は少女の拳を受け止め……きれずに吹き飛ばされながら少女への文句を口にする。


「私は早く帰って寝たいのよ。あんた達こそ何で毎度毎度、真夜中に出てくるのよ。夜更かしが美容の天敵なの知ってる? あんた達のせいでこの美人が約束された姿に成長できなかったらどうしてくれるのよ! 赤熱硝子の靴シンデレラ・ストライク!」


「それは……って、待て待て待て!? お前、聞く気無えじゃ——」


 少年が体勢を立て直す隙を作るべく話で気を引こうとした瞬間には既に少女は必殺技を放っていた。


「私に合った瞬間があなたのお別れの時間シンデレラ・タイムよ」


 

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