春に願う
有期 遊
春に願う
私は年に一度、三週間ほど目を開く。河川敷にある大きな公園に私はいる。私の目が開いている時、人々は「おめでとう」と口にして、私の前に並んで写真を撮る。本来であれば嬉しい言葉であるはずなのに、その目には涙がある。私はそれが不思議で仕方なかった。三週間という短い期間を何回も過ごして、沢山のことを見聞きした。取りこぼさないように。この身にある願いが全て叶うように。
私はよく、私より少し遅く目を開けたお隣さんに昔話やうんちく話など聞かせてもらった。どれも面白くて興味深いものばかりだったが、どれも現実味のあまりないものだった。
そのお隣さんによると、私は他の皆よりも少しだけ早く目を開く種類らしい。目を開く時期も期間も皆がバラバラだという。のんびりとしていたり、私みたいにせっかちだったり。
私はよく「君は生き急ぎすぎだよ。」と言われたが、生き急いで何が悪いんだ。と、この話を聞いて改めて思った。私が生き急いだって、他の誰かに迷惑をかけることはない。ただ私は、色々なことを見聞きしなければいけない。という知識欲が他よりも多かっただけだ。
季節というものを知って、感情というものを知って、少しでも人間の考えていることを感じてみたい。何回先の春でもいいから、この願いが叶いますように。
春に願う 有期 遊 @yuukiyuu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます