幼馴染の美少女姉妹と幸せになります
夜宵乃月
第1幕
第1話 学園の姫君
ある日の放課後、俺・
今日は週に1日割り当てられた司書当番の日なのだ。
今年、稜麗学園高校に入学した俺はクラスの図書委員に立候補した。
学校の図書室は静かに過ごすことが出来る校内でも好きな場所の一つだが、別に俺は本の虫でもないし、図書委員の仕事に興味があった訳でもない。
ではなぜ俺が図書委員になったのかと言うと、とある女子生徒が図書委員をしていて、彼女が俺に同じ委員になることを望んだからだ。
俺の隣にはその女子生徒が、やはり司書当番として座っていた。
「ねえ、ゆう。今日の晩御飯どうする?」
「司書当番終わってからだと時間ないから、また美菜さんにお願いしてもらって良いか?」
「じゃあ、お母さんにメッセージ入れとくね。今晩のおかずは何だろね♪」
「美菜さんの手料理はみんな美味いからなぁ、あやとは大違いだ。」
「ひどっ! どーせ私は料理が下手ですよーだ。」
俺と親しげに会話している司書当番の相方は、
腰まで流れる艶やかなストレートの黒髪、形の良いパーツが完璧に配置された涼しげで品の良い顔立ち、165cmと高2女子としてはやや高めの身長とモデル並みに均整のとれたスタイルは、人目を惹きつけるには十分すぎるほど魅力的だ。
さらに、少しアルト掛かった通りの良い声も、特に彼女に憧れる女子生徒からは高い評価を得ている。
高評価は外見だけでなく、定期試験の成績は常に10位以内を確保する才女であり、どんなスポーツをやらせても人並み以上の実力を見せている。
そんな正に才色兼備・文武両道を絵に描いたような彼女は、日本人形のような物静かでクールな佇まいも相俟って、学園の生徒たちからはこう呼ばれていた。
曰く、『学園の姫君』と。
1年生の俺が学年の違う先輩女子と一緒に司書コーナーに居るのには理由がある。
この学園の司書当番は1・2年生の同じクラスがペアですることになっていて、俺も彼女も1組に在籍していることから、同じ日に司書コーナーに座ることになっているのだ。
この学園は各学年5クラスあるので、週に一度、決まった曜日に当番が回ってくる。
1組が月曜日、2組が火曜日と、単純にクラス順に当番が割り振られているので、俺たちは毎週月曜日を担当している訳だ。
ちなみに3年生は図書委員として名を連ねてはいるものの、受験を控えているという理由で、実態として仕事を免除されている。
「それにしてもさ、連休明けの初日に当番って、かったるくない? どうせ誰も本なんて借りに来ないんだから、閉めといても良いと思うんだけど。」
確かに、俺が当番をするのは今日で3回目なのだが、過去2回で貸し出しは1冊のみ、返却に至っては取扱数0だ。
他の曜日もそんなものなら、思い切ってこの部屋を自習室にでもしてしまった方が良いのではないかと思いはするが…
「そう言う訳にも行かないだろ。ほら、そんなことより課題を済ませろ。」
「うー、ゆうが優しくないー」
司書コーナーに居てもほとんど仕事がない俺たちは、今日の授業で出た課題に取り組んでいる。
俺たちがここに座ってから1時間あまり、既に姫君は自習に飽きてしまったようだ。
今日はお互い5科目で課題があるというのに。
しょうがない、こっちはもう終わったから少しだけ課題を見てやるか。
「ほら、かったるいのは分かったから、どこか判らないところでもあるのか?」
「それは大丈夫ー、ただ、ゆうが構ってくれないから、やる気が出ないだけー」
「あー、分かったよ、ちょっとだけだぞ?」
口を尖らせている彩菜の頭を軽く撫でてやると、途端に目尻を下げてふにゃふにゃと喜びだした。
結局、甘えたいだけだったようだ。
「ふふ、なでなでしてもらっちゃった♪」
こんなところを他の生徒に見られたら、クール美人のイメージが台無しだぞ。
あ、図書室利用者の一人がこっちを見てる…。
まあ、隠す気もないし、今更やめないけどな。
「なあ、あや。」
「ん、なに?」
「一応確認するけど、俺たちのこと隠す気はないんだよな?」
「うん、全然。わざわざ宣伝するつもりはないけど、みんなの前だからって遠慮する気もないよ?」
「多少は遠慮しないと大変なことになると思うけどな。『学園の姫君』のファンが泣きだしそうだ。」
「そんなの良いよ。1年生の時に、ゆうが居なくて寂しくて元気が出なくて、ほとんど喋らずに大人しくしてたんだよ? そしたらなぜかクールだとかお淑やかだとか言われちゃって。そのうち姫君とか呼ばれちゃうし。」
「それが実際はこんな感じだからなぁ。」
彩菜は座っている椅子を俺の隣にピタリとくっ付けて、俺の肩に頭を預けて来た。
豊かな黒髪からふわりと漂うフローラル系の香りと彼女自身が放つ甘やかな香りが混じり合い、一つの豊かな芳香となって鼻腔をくすぐる。
この香りに浸っていると不思議と気持ちが和らいでくる。
俺はこのまま下校時刻まで、彼女の纏う香りに包まれて静かにゆったりと過ごしていたいと思った。
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