第328話
近況報告にて皆様へのご報告があります。
本当に応援して頂き、ありがとうございます。
『さぁ、選ぶのです。憎き人族を滅ぼす力を得るのか。それともこのまま牢の中で一生を過ごすのか。』
この手で憎き人族の命を奪える。
それは何とも甘美な話なのだろう。
そのシーンを想像すると、自然とニヤケてきてしまう。
「これは……これは素晴らしい力だ!」
そんな歓喜の叫びをあげる仲間。
「お、お前たち何をした!?」
魔力が一気に高まった事により、異変に気がついた看守は慌てて上司がいる部屋へと報告に向かう。
パン、パパン!!
魔力抑制の魔道具が悲鳴をあげ、次々と破壊音と共に落ちていくのが見えた。
「私にも……私にも力を!!」
カルミラがそう叫ぶと
ドクン!
心臓が大きく脈を打つ。
「あ……ああ……アァーッ!!!」
身体の奥底から湧き上がる何かを感じ、カルミラは絶叫を上げる。
「はははははははははははははは!!!」
高笑いを上げながら、まるで別人のような表情を浮かべる。
「これで私は奴らへの……憎き人間どもとそれに尻尾を振る同胞へ復讐出来るのだな!女神様に仇成す存在に神罰を!!」
自身の言動の変化に気がつかないカルミラは何の違和感も感じることなく牢を破壊すると、雄叫びをあげる仲間と共に牢を脱出する為にゆっくりと歩きながら出口へと向かう。
「「女神様に仇成す存在に神罰を!!」」
何の違和感も感じないまま、皆そう雄叫びをあげるのだった。
『あぁ、混沌が広がっていく……素晴らしい……甘美な味。もっと……もっと混沌を……』
女神の名を語る何かは、自身へと流れ込む力にウットリしていた。
アルテリオンに危機が迫る中、ドワーフ達は一番の危機を迎えていた。
「「「「「「「「「「「本当に許して下さい!!」」」」」」」」」」」
プンプンと怒っているラグナ。
いくら謝罪しても一向に許して貰えないドワーフ達。
「お酒は出しません!!」
腕を組んで顔を背けたまま、そう宣言するラグナ。
「「そ、それだけは勘弁してくれぇ~!!!」」
土下座をしてでもお願いしたいドワーフ達が、必死になってそれだけはと頼み込んでいた。
「僕が怪我したからってミラージュに攻め込もうとしたのは何で何ですか!!」
「何でと言われても……だって国王がなぁ……?」
自然と視線は国王の元へ。
「なっ!?お主達も許せぬと言ったじゃろ!!戦争だと初めに言ったのは儂では無いぞ!?」
すると皆の視線は王弟であるルヴァンへと。
「確かに儂が最初に発言をしたかも知れないが、お主達だって賛同したじゃないか!」
責任逃れの為にお互いに責任を押し付け合うドワーフ達。
その様子を見てラグナは溜め息を吐きながら、
「……皆さんはそんなに禁酒がしたいのですか?」
「「それだけは勘弁して下さい!!」」
と再び綺麗な土下座を。
「はぁ……市民の皆様や一般の兵士には罪が無いですからね。そちらには今まで通りお酒を引き渡します。」
「市民や兵士には……わ、儂らには……」
ラグナの言い方に恐怖を感じる国王や幹部のドワーフ達。
ガタガタと身体が震えてくる。
「そうですねぇ……幹部の方は3日間の禁酒。ルヴェイド様やルヴァン様は国王や王弟でもありますから責任を取って一週間の禁酒でどうでしょうか?あ、勿論一般市民の皆さんや兵士から奪ったりなんてしたら次はお酒を持ってきませんよ?」
ニッコリと微笑むラグナに、ドワーフ達の血の気が引いていく。
「三日間の禁酒……」
ラグナからのお仕置きに絶望する幹部達。
「一週間の禁酒……」
あまりのショックで気絶しそうな王弟。
「「もう二度とこのような軽はずみで重大な決定をいたしませぬので、どうかご慈悲を……」」
2人は地面に額を付け、必死に懇願するのだった。
土下座をする2人の姿を見ていたラグナは、そもそも何故この国の国王であるルヴェイドやルヴァンがこんな半ば勢いで物事を決めたのか不思議だった。
「そもそも何でこんな決定をしたのですか?」
「それは……」
答えに詰まるルヴェイド。
「……使徒様が負傷したという報告を受けてショックを受けたのは確かだ。しかし……」
今更ながら何故そこから許せないという感情が高ぶったのだろうか?
自分自身いくら考えてもわからない。
「……兄者を含めて皆そうなんじゃないか?冷静になって思い起こせば、急激にミラージュに対して強い嫌悪感を感じたんじゃないか?」
「そうですな……」
「確かに……使徒様が負傷した事のショックよりもミラージュに対しての復讐心が強くなった気がします。」
困惑する官僚達。
冷静に考えれば考えるほど、何故あそこまで嫌悪感や復讐心を感じたのか。
何故あそこまで好戦的になったのかわからない。
「ミラージュなど滅ぼしてまで欲しい土地でもない。統治するのすら嫌だからと防衛だけに専念していたのだ。それなのにあの時、何故あんなにも怒りを覚えたんだろうか。」
冷静になればなるほど、困惑するドワーフ達なのだった。
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