第314話

短いけど許して………



ラグナが物資の輸送を始めてから早一年。


ラグナはついに13歳に。


魔王が誕生する予定まで残り2年。


すでにアルテリオン、ガッデスへの荷の輸送をしているのはラグナだけとなっていた。


あのエチゴヤ商隊ですらとある事件が発生し、荷の輸送を行うには危険だと判断し苦渋の決断により撤退。


1度目の輸送はエイミーが指揮を執っていた事、そして運良くラグナに助けられた事で事なきを得たが……


2度目の輸送時に事態は急変した。


「エ、エイミー様ぁぁぁぁぁぁ!!」



シーカリオンの商店で可愛らしい服に身を包み売り子をしていたエイミーの下へ、2回目の輸送任務へと向かっていたハズの1人の護衛が必死の形相で駆け込んできた。


あまりにも必死に叫びながら駆け込んできたせいで、周囲にいた人々はなんだなんだと集まり始めてしまっていた。


エイミーはその様子に内心舌打ちしながらも、


「皆さま~、お騒がせてしまいごめんなさいねぇ?ちょーっと私は奥に下がりますが、ゆっくりとお買い物をお楽しみくださ~ぃ。」


とネットリとした口調でそう告げると、護衛を引っ張るようにして店の奥へと向かうのだった。


「何があったの!?」


「そ、それが……」


「早く言いなさぁい!!」


「は、はい。実は……ガッデスから受け取っていた武器やアルテリオンからの品をこちらへと輸送していたのですが、襲撃を受けてしまいました……」


顔を青ざめさせながらも、状況を説明する。


「なんですって!!被害状況は?」


エイミーは襲撃と聞いてあのバケモノの姿を思い出す。


『無理してでも着いていくべきだったわね……』


長期に渡って二度もシーカリオンを離れる事がどうしても出来なかった。


エイミーが一度目の輸送任務でいない間、一部の業務が滞ってしまいかなりの支障が出てしまっていた。


その後始末に追われ、エイミーは二度目の輸送任務に着いていく事が出来なかったのだった。


しかし……エイミーの考えとは全く違う報告を受けたのだった……


「ミラージュの兵士達によって積み荷は全て徴収されてしまいました……」


「あん?何だって?もう一変言ってみろや!」


エイミーの全身から迸る殺気に怯えながらも、護衛は再び勇気を振り絞って伝える。


「で、ですから……つ、積み荷は全てミラージュに……」


「素直に徴収されてんじゃねぇよ!ボケが!!前例を作っちまったら今後もそれが続いてしまうじゃねぇか!!」


「ひ、ひぃぃ!!ご、ごめんなさい!!」


エイミーのど迫力に腰を抜かしてしまう護衛。


その怒号は店内へも響き、膨大な殺気に襲われた客や、野次馬をしていた人集りは蜘蛛の子を散らすように慌てて商店から逃げ惑うのだった。


「……ふぅ。すぐに動くわよ。代表に繋いで!!」


店員達は恐怖に固まり、誰一人として動く気配が無い。


「ぼさっとしてんじゃねぇぞ!!クビにされたくなけりゃ、さっさと動けや!!」


再び発せられた怒号によって再起動した店員達は必死の形相で行動を開始。


慌ただしく走り回るのだった。


『まさか……そこまでバカでは無いと思っていたのだけど……』


ミラージュがエチゴヤを襲うとは考えてもいなかった。


お互いにあの伝説の勇者パーティーの一員から産まれた存在だったから。


『こうなったからには仕方ないわね。きっと代表も覚悟するはず。』


ミラージュからの完全撤退。


それは確実に行われるはず。


それに、急いで行動しなければミラージュにある資産や資材、食料が全て徴収される可能性もあるのだから。


『エチゴヤに舐めた事をしやがって……絶対に許さねぇからな!』


エイミーもすぐに行動を開始。


ブリットやサイに連絡を取ると、今後の行動について話し合いを始めるのだった。

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