第297話

夜遅くになってしまいましたが、お待たせしました。

本日より更新再開します!




リオの部屋に泊まった翌日。


「リオさんや……」


「何かねラグナくんや。」


「何故、僕はリオさんの膝枕で寝てるんですか?むしろいつの間に部屋に入ったんですか……」


「そりゃ勿論……ラグナくんの寝顔を見るために魔法を駆使して。」


リオが何かを描くように空中に指を滑らせると光り輝いた文字が浮かび上がっていた。


「はぁ……もういいです……」


呆れたようにため息をつくラグナ。



「まあまあ、そんな事より今日は忙しいから急いで支度しなきゃ。ミオンちゃんとの逢い引きの約束があるでしょ?」


「逢い引きって……全く……今日はそんな事じゃないでしょうに……」


今日は指定された倉庫に赴き、亡くなった商隊の遺体の引き渡しを行うことになっていた。


遺体の処置についてはシーカリオンが全面的に行ってくれるらしい。


処置が完了次第、遺族の方々が立ち会う事になっているとの事だった。


立ち会った方がいいのか悩んでいた所、ミオン様からきっぱりとこう言われた。


「ラグナ様が立ち会う必要はありません。これは私の判断によって起きた事であって、ラグナ様が気にすることではありません。」


と言われてしまった。


ミオン様に気を遣わせてしまっている事は申し訳なかったのだが……


これは俺の為を思って言ってくれた言葉だと理解していた為、素直にその言葉を受け止める事にした。


「ほらほら、急いで支度しないと遅刻しちゃうよ?」


「わかってますよ!だから部屋から出てって下さい!」


リオさんのゴーレムを部屋から追い出すと急いで支度をする。


そして指定された倉庫へと向かう事にしようとしたのだが……


「えっと……?」


「ん?どしたの?」


「まさかリオさんも一緒に……?」


「それは勿論。だからこんな格好をしてるんじゃないか~!」


そう言うとくるっと回って見せるリオ。


「はぁ……途中で止まって倒れたりしませんよね?」


「それのテストも兼ねてだよ!それじゃあ行くよ!!」


リオはそう言うとラグナの手を取り、グイグイと引っ張っていく。


どうやら今日は市民に紛れ込んで街を歩くつもりらしい。


「……いくら市民の服に着替えた所で、顔を見られたらバレませんか?」


シーカリオンには至る所にマリオン様やリオの石像が設置されている。



しかもかなり本人に似せて作られているので、いくら服で誤魔化そうとしても顔を見られれば一発でバレる気がする。


「そこはちょいちょいっと!」


リオは着替えた際に付けたイヤリングに手を触れると……


「まじかよ……」


一瞬にしてリオの顔が変化したのだった。


普段の言動と行動で忘れそうになるものの……


流石、賢者と呼ばれていただけはあるなと……感心してしまう。


「これで問題ないよね~!」


「確かに……これならバレないとは思いますけど……」


「さあさあ、早く行こうよ~!」


「はいはいわかりましたよ。」


こうして二人で街へ繰り出していくのであった。


「あの倉庫が約束の場所だよ~」


リオが指さす先は倉庫街の中でも端の方にひっそりと古い倉庫が何軒かある場所だった。


倉庫の周囲を兵士達が囲んで警戒している。


つまりあの中にいるのは……


「あっ!中にミオンちゃんの魔力発見!!」



リオはどの倉庫にシーカリオンの女王であるミオンがどこにいるのか探知したらしく、とある倉庫に突撃していったのだが……


「止まれぇぇぇぃ!!」


兵士達はリオの接近に気がつくと武器を構えて威嚇するのだった。


「あれ?あれあれあれ?」


リオは兵士達のその対応に驚き、その場で立ち止まると手を挙げて降参の意志を示す。


ラグナはその様子に溜め息をつきながら……


「あーもう!何やってるんですか!!ちょっと待ってて下さい!!」


リオの側に駆け寄ると、小声で話しかける。


「ここは僕に任せて下さい。リオさんは少し離れていて下さい。」


「う、うん。わかったよ。」


ラグナの言葉に従い、リオは兵士から距離を取るのだった。


「おい貴様達、何者だ!!」


リオがミオンのいる倉庫に突撃しようとしてしまったお陰で、すっかり敵意を向けられてしまっている。


「僕の連れが大変失礼しました。私の身分についてはどうぞこちらを。」


権威を使うようで本当はあまり使いたく無かったのだが……


ここでラグナが取り出したのはエチゴヤの証。


兵士はラグナを警戒しながらも、ラグナから身分証でもある証を受け取ると……


「大変失礼しました!!まさかエチゴヤの方々とは……」


ラグナの身分を確認した兵士達はペコペコと謝罪するのだが……


「元々は僕達の方がいけなかったので申し訳ありませんでした。ほら、お前も。」


ラグナはあえてリオをお前と呼ぶと兵士達に謝罪させる。



「本当にごめんなさい。」


と素直に謝罪したのだった。


「何事ですか?」


倉庫の扉が少しだけ開くとミオンの顔がひょこっと出てきた。


「これはミオン女王陛下!お騒がせしてしまい、申し訳ありません!!」


ミオンのその声を聞いた兵士達は一斉に姿勢を整えて敬礼すると……


「あら、到着なさったのですね?彼らは私のお客なので中に案内してあげて。後は先ほど話をした通りに。」


「いや、しかし……お客様と言えど護衛を一人も付けないのは……」


流石に女王と客人のみを倉庫内にいれて何かあったとすれば責任問題に発展しかねない。


「これは命令ですよ。周囲の警戒は頼みました。そして彼らの事についてもミーティングの通りに。」


「……了解しました。」


ミオンの命令に逆らうわけにもいかない為、兵士達は渋々了承するしかなかった。


「では私は中に戻りますね。」


そう言うとミオンはリオとラグナを倉庫内へと招き入れると、再び扉を閉めるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る