第200話

暴漢達との追いかけっこは前日と同様に同じ場所に逃げ込んで終了。


でも今回は面白い結果に。


「くそっ!!また消えた!」


暴漢達の1人が少し考え込んだ後、徐々に顔色が悪くなる。


「な、なぁ。あ、あのよ……俺たちが追っかけていた女ってゴーストじゃねぇよな……?」


それを聞いた暴漢達がビクッとする。


「だってよ……こんな所に隠れるとこなんて、ないんだぞ?それが一瞬で消えるなんて……」


「確かに……しかも明らかに子供なのに、俺達が追いつけないっておかしいだろ……」 


「で、でもよ……こんな街中で、しかも日中にゴーストなんて出るのか?」


「強いゴーストは日中でも関係ないって聞いたことあるぞ……」


「でもゴーストって魔物だろ?ま、まさかこんな所に出ないだろ……出ないよな……?」


暴漢達のリアクションが面白くなってきたので驚かす事にした。 


『収納から木の枝を出してっと……』 


男達の近くに落ちるように放り投げる。


カラン


男達の背後にうまいこと投げることが出来た。 


「「「ひぃぃぃ!!」」」 


突然背後に何かが落ちた音がしたので男達は腰を抜かして倒れ込む。


「勘弁してくれぇ!!」


「もうこんな事はしねぇから!!」


頭を抱えてビビる暴漢達。


ただ1人が落ちた正体に気がつく。


「おい!!なにビビってるんだよ。見て見ろよ、木の枝が落ちただけだぞ。」


木の枝が落ちてきたと言われて先ほどまでビビっていた暴漢達はすぐに立ち上がる。


「別にビビってねぇし。」 


「ただ、当たったら怪我するから避けただけだし。ビビってねぇし。」


立ち上がってじっと周りをキョロキョロと眺めていた1人が異変に気がついてしまう。


「な、なぁ……ちょっと周りを見て見ろよ……」


「なにビビってるんだよ。木の枝が落ちてきただけだろ?」


「だからちょっとよく周りを見ろって!!」


「なにキレてるんだよ。だから木の枝がどうしたんだよ。」


「いいから見て見ろよ!!俺達が今いる周囲に『木』なんてあるか!?」


「木なんてそこら辺に……無い……」


その言葉に青ざめる俺達。


「この枝はいったいどこから……」


ガタガタと手足が震える。


そしてラグナは木の枝に注目している暴漢達の背後にもう一度木の枝を投げつける。


カラン


背後から再び音がしたので暴漢達はゆっくりと後ろを振り向く。


そして……


「「出たぁぁぁぁ!!」」


「母ちゃーーん!!」


暴漢達は足をもつれさせながらもその場から必死に走り去る。


その光景を声を出さないように必死に堪えながら眺めるラグナ。


「あ~、すっきりした。こんだけやればもう懲りたでしょ。」


さてと……


この街はどの商品もかなり高めなので買い物する気にもならない。


『夜にもう一度公爵の城を見に行ってみるか。とりあえず仮眠しよ。』


今後の予定を決めて宿に戻る。


「手紙ですか?」


「はい。この手紙をラーナ様へとお渡し下さいと。」


「どなたからでしょう?」


「それなのですが……名前を聞く前に立ち去ってしまって……確実に渡すようにと金銭まで渡してきたので断れなく……」


「誰からだろ?とりあえず部屋で読んでみますね。ありがとうございます。」


送り主不明の手紙を受け取ると部屋へと戻る。


『誰からだろ……』


封を開けると手紙は2枚入っていた。


2枚のうち片方は白紙。


もう1枚には字が書かれている。


『ラーナ様本人であるならば商業ギルド会員証を白紙の紙の上に置いて下さい。』


ラグナは不思議に思いながらもギルド会員証を収納から取り出すと紙の上に置く。


『ラーナって名前を知ってる人って限られてるしな。』


何となく差出人の見当はついていた。


ギルド会員証を白紙の上に置くと紙が徐々に光り始める。


『なんか文字が浮かび上がってきたんだけど……なにこれ。魔導具?魔法?』


こんな物があるなんて聞いたことが無い。


光が収まったのでギルド会員証を収納して浮かび上がった文字を読む。


『ラーナ様、突然の連絡申し訳ありません。急遽お伝えしたいことがあります。ラーナ様が身に付けておられた赤い宝石の所在が判明致しました。守護の女神の神殿からヨハム公爵が赤い宝石を買い取り、現在この街のヨハム公爵家のどこかに保管されているとの事です。』


『サリオラから渡された宝石がこの街に……』


タチアナさんからまさかの報告がされるのだった。

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