第185話
アオバ村を出発してから6日。
王都まで後4日ほどの所まで移動していた。
「やっぱりチラホラと魔物がいるね。」
アオバ村に滞在中はほとんど魔物に出会うことは無かったが、王都までの移動中に魔物と出会う事が多々あった。
「仕方あるまい。アースドラゴンから逃げるために魔の森から逃げ出した魔物は大量にいたんだ。だが気が付いたか?奴らの変化を。」
「うん。明らかに弱ってたよね。怪我をしている様子も無かったのに。」
魔物に出会う事は確かに多かったが……
魔物は明らかにやせ細っており、簡単に討伐出来る個体ばかりだったのだ。
「つまり魔の森に何かあると考えるべきだろうな。」
「今すぐどうこう出来る訳じゃないけど、ビリーさんやマルクさんに相談だね。」
フィリスと話をしていると馬車の隊列が急停止する。
また魔物の襲撃かと思い、馬車から飛び出す2人。
しかし、どうやら違うらしい。
先頭の馬車で揉め事なのか怒号が聞こえる。
急いで先頭の馬車へと向かうと、兵士達と旅人だろうか?
馬に跨がっている人物と揉めているのが見えた。
「おい!時間がないんだ!ラグナに会わせてくれ!」
「急にラグナ様に会わせろとは何だ!怪しい奴め!」
揉めている人物の声に聞き覚えがあったのですぐに兵士達と旅人の間に割って入る。
「この人は知り合いなので大丈夫です!リビオさん、久しぶり!」
兵士達と揉めていたのはエチゴヤ商会所属のリビオさんだった。
「おぅ、久しぶり!じゃねぇ!今すぐここから逃げろ!」
「えっ?急にどうしたの?」
「いいからお前だけはすぐにここから移動するんだ!いいか、よく聞け。何が起きたのかはわからねぇ。だがな、急に守護の女神の教会がお前を異端者として認定したんだよ!理由はわからねぇが、急にラグナ・パスカリーノは異端者として認定すると発表しやがった!」
「「はぁっ!?」」
フィリスと2人で驚いた声をあげる。
周囲にいた兵士達もその話に困惑する。
「お前を捕まえようと守護の女神の神殿騎士がこっちに向かっているんだ!だから逃げろ!」
「急に逃げろと言われても……」
あまりにも理解しがたい状況で困惑してしまう。
騒ぎに気がつき駆けつけた兵士の1人がラグナの後方から近寄る。
そして……
「逃げられては困るのだよ。」
近寄ってきた兵士はラグナの腕を急に掴むとガチャリとラグナの手首に何かを装着した。
「な、何……を……」
ラグナはそのまま意識を失うのだった……
………………
…………………
……………………寒い……
身体中が凍えるような寒さに襲われているのに気がつき目を開ける。
「ここは…………」
周囲を見渡す。
そしてすぐに理解する。
目の前に広がる景色。
ゲームで時折見た光景だ。
「牢屋か……」
身体を動かそうにもうまく力が入らない。
左手首には謎の魔道具?が装着されており、左の足首は鎖で壁と繋がっている。
鎖の長さの範囲内でしか自由に動くことが出来ない状態だった。
魔力を出そうとしても阻害されているのか魔力を纏うことすら出来ない。
『異端者認定か……』
つまり守護の女神を信仰してないから……
思い当たるとしたらマリオン様を降臨させたからかな。
ってことは兵士達の中に神殿のスパイが潜り込んでいたと……
俺の腕にこれをつけたのはそいつか……
右手で魔道具を触ると何かが吸い取られていく感覚があった。
すぐに手を離す。
そして胸元を触るが……
『サリオラから貰った宝石も奪われたか……』
試しにサリオラやマリオン様を呼び掛けてみるが返答は無い。
そのまま床に寝っ転がる。
『流石にこれは予想してなかったな……』
それからどれだけ時間が経過しただろうか……
突然、バタバタと何人もの足音が聞こえてきた。
そしてガチャリと牢屋の扉が開く。
「連れて行け。」
顔を完全に隠している被り物をした集団によって両腕を掴まれ、連れて行かれる。
「ねぇ、これから僕はどうなるの……?」
わざとらしく子供っぽい話し方で俺を連行している兵士に話し掛けるが……
『完全無視か……』
長い階段をひたすらぐるぐると登り続けていると、突然頑丈に作られているであろう扉が現れる。
俺の後ろを歩いていた1人がその扉に手をかざすとガチャリとロックが外れたような音がする。
そしてそのまま扉の外へと連れて行かれる。
「これは……」
扉が開いた先は崖の上だった。
そして崖の周囲には闘技場のような観客席が多数設けられている。
そのまま観客席の中心へと連れて行かれた。
「準備を。」
そう言うと手と足をロープでぐるぐる巻きにされ、直立のまま動けなくされた。
偉そうなキラキラした装飾品で着飾っている人物が壇上へと進み、観客席に座る人間に対して宣言する。
「これより異端者ラグナの処刑を執り行う!」
そう高々と宣言するのだった。
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