第148話
ラグナ達は試合終了後に控え室で休んでいた。
「君たちが上がるべきだよ。」
少しの休憩の後に表彰式が行われる。
通常は6年生の生徒が学園代表として壇上に上がるのだが……
エマさん達にそう言われて辞退されてしまったので、ラグナ達が魔法学園代表として優勝旗を受け取ることになった。
一方その頃、騎士学園側では……
「くそっ!!あんな奴に負けるなんて!!」
選手控え室でロイは暴れていた。
すると、突然ガチャリと扉が開く。
「誰だ!!ノックもしないで!!」
大量の兵士が室内へと押し寄せてきた。
あまりにもこの光景に驚いた生徒達は身動き出来なかった。
「交流戦の不正行為、および不正魔法薬使用の疑いで貴殿らを逮捕する!!」
ロイとザイトは反抗するがいとも簡単に兵士達に組み伏せられると、腕輪状の魔道具を装着させられる。
この魔道具を装着させられると魔法の使用が阻害されて使用できないだけでなく、肉体的にも制限される。
「なんだ、お前たちは!!」
「な、何をする!!父上に言いつけるぞ!」
騒ぐ2人の前にとある人物が現れる。
「もっと早くお前たちを処分するべきだった。セシルには本当に悪いことをした……連れて行け!!」
2人の父親であるマルク・ラヴァンだ。
「父上!!」
「助けて!!」
マルクは手で合図すると2人を連行。
さらに代表戦出場者の身体チェックが行われた。
6年生の2人と5年生の3人。
それに何故か応援席ではなく控え室にいた教諭についても身体チェックを行った結果、違法魔法薬を所持していた。
学生の5人に魔道具を装着。
兵士達が連れて行く。
そして教諭にも魔道具を装着しようとした所、突如暴れ出した。
ぐわぁぁ!!
兵士数人掛かりで取り押さえようとしていたのにも関わらず全員が吹き飛ばされる。
すぐに異変を感じたマルクはすぐに叫ぶ。
「全員、抜剣!!」
兵士達は狭い室内ではあるが抜剣すると、教諭を取り囲み包囲する。
すると突如教諭の肉体がボコボコと膨れ上がる。
「ガァァァ!!グルァァア!!」
教諭が人間とは思えない声で叫ぶと驚きの姿へと変貌していく。
背中からは漆黒の翼が生えて、目も4つ、腕は4本。
そして頭部からは角が生えてくる。
「まさか魔族だとでも言うのか!?全員でかかれ!!」
「もウ少しダけ実験しタかっタが、仕方なイ。」
全員で切りかかるが、魔力障壁が展開されて防がれる。
室内にいた生徒達は慌てて外へと逃げ出した。
「魔族が出たぞーー!!」
多数の生徒が叫びながら試合会場へと流れ出てくる。
闘技場の観客席の生徒達はポカンとした顔をしていた。
ラグナ達も外が騒がしいことに気がつき控え室から出る。
魔族?
あいつら何言ってるんだ?
魔族なんてもう居るわけ無いじゃん。
ドカーン!!
激しい衝撃音と共に騎士学園側の控え室周辺が吹き飛ぶ。
『びー、びー、緊急事態発生ー!!緊急避難魔法を発動ー!!』
観客席が光り輝くと観客席にいた大多数の生徒が消えた。
この場に取り残されたのは教員達と魔法学園特級組1学年の生徒達だった。
『およ?君たちは水準以上の魔力を持っていたんだね。めんご、めんご。次回の改良点だねー。』
「な、何が起きて……」
「おい、空に何か居るぞ!!」
全員の目線が空に向かう。
そこには人型ではあるが明らかに人間では無い何かが空に浮いていた。
『我は魔王軍
魔王軍?
六芒星?
魔王が復活するまであと5年はかかるって話しだったのに……
俺達が突然現れた魔族に呆然としていると、彼女はすぐに動き出していた。
「燃やせ、燃やせ、燃やし尽くせ!エクスプロージョン!!」
突然の詠唱。
そして発動した魔法は爆炎魔法。
魔族に向けて発射された魔法は着弾と共に大爆発を起こした。
「風よ!荒れ狂う暴風となりて全てを薙ぎ払え!ソニックストーム!!」
続けざまに学園長が魔法を詠唱。
凄まじい風の嵐が魔族に襲いかかる。
「ガァァァァァァ!」
魔族の咆哮と共にソニックストームがかき消される。
「軟弱ナ攻撃ナド我にハ通じヌ!!」
あれだけの魔法を受けたにも関わらず全くの無傷だった。
『ラグナ!!あれは魔王の残滓を受け継ぐ配下の1人なの!まさかもう現れるなんて。まだあなたでは無理!はやく逃げて!!』
サリオラからの声が届いた。
『逃げろって言われても……』
ここには仲間達がいる。
置いて逃げるなんて出来ない。
「ありったけの魔法をぶつけなさい!!」
戦略魔法大臣のビリー・アブリックは部下や教員達にそう指示すると、自身も詠唱を始める。
そして様々な魔法がグラムニュートへと叩き込まれる。
「無駄ダぁぁ!!」
この場にいる全員の魔法を、魔力障壁で完璧に防ぎきっていた。
「人間共メ!楯突クトは生意気ナ!今一度恐怖を思い知らセテヤろウ!」
グラムニュートは自分と同じ様に空を飛んでいる学園長を睨みつける。
「グラビティ!」
空中を飛んでいた学園長に手を向けてグラビティとただ一言。
空を飛んでいた学園長は地面へと叩きつけられる。
「次はオ前ダ!」
グラムニュートはそう言うと、目にも止まらぬ速さでフィオナへと突撃。
あまりにも速い攻撃に対してフィオナは回避行動が遅れてしまった。
「ぐはっ……」
吹き飛ばされたフィオナは口からは吐血、腹部からは出血。
手足はあらぬ方向を向いていた。
「ホう。避けタか。だガそンな身体でハ苦しカろウ。止めを刺しテヤる。亡骸は我が実験に使うノデ安心セよ。」
グラムニュートはゆっくりとフィオナに近寄って行く。
誰一人として助けに行く事が出来なかった。
『このままだと先生が……どうすれば……』
一歩一歩ゆっくりとフィオナへと近寄るグラムニュート。
このままでは確実に殺されるだろう。
フィオナ先生が殺される。
本当にこのままでいいのか?
失ってもいい人なのか?
恐怖に包まれていたはずの身体が勝手に動き出す。
一度動き出したら止まらない。
覚悟を決める。
「させるかぁぁぁぁ!!」
今まで流したことが無いほど、ありったけの魔力を身体強化魔法に注ぎ込む。
「ム?子供カ?そんナに死にタイなラ先に送ってやロウ。」
グラムニュートはラグナの方へと振り向くと魔力障壁を展開。
ラグナは覚悟を決めるとそのまま魔力障壁を全力で殴りつける。
「何だト!?グヌゥゥゥ!!」
グラムニュートは子供とは思えぬ攻撃力に驚く。
魔力障壁に魔力を注いでいるが気を抜くと障壁が破壊されそうだからだ。
「子供ガァァァ!!ヌァァァァ!!」
4つの目を見開いて踏ん張るグラムニュート。
『今だ!!LEDライト』
目を見開いていたグラムニュートへ向けてラグナはLEDライト発動。
ライトの光を至近距離で直視させる。
『ギャァァァァァァ!!』
魔族として生を受けてから感じたことの無い目の痛みに襲われるグラムニュート。
思わず4つの目を4本の手で覆ってしまう。
パリンと音を立てて破壊される魔力障壁。
そして……
「フィオナから離れろぉぉー!!」
ラグナは右腕にガストーチソードを発動させると腕自体が燃え盛る炎の剣となる。
そして視力を一時的に失いもがくグラムニュートの右足へと斬り掛かる。
「ガァァァァァ!!」
突然右足を切断されてバランスを崩して倒れ込むグラムニュート。
すかさずラグナは追撃を行う。
首を目掛けて腕を振るうが寸前の所で避けられてしまう。
しかしガストーチソードはグラムニュートの角に直撃。
角を切断した。
「貴様、貴様!!我の角ヲヨクも!!」
グラムニュートは空へと飛び立つと怒り叫ぶ。
懐より薬のようなものを取り出すと顔全体に振りかける。
するとしゅわしゅわと音を立てて傷口が塞がり目が開く。
「漆黒の闇二包まレろ!!ダークボール!!」
巨大な黒い球がラグナへと向かい発射される。
『ここで俺が避けたらフィオナ先生に直撃する!!絶対に彼女を守るんだ!!』
ガストーチソードを両手に発動させるとクロスして眼前に迫り来る黒い球へと向かっていく。
「死んでたまるかぁぁぁぁ!!」
ガストーチソードはダークボールと接触。
じゅうじゅうと激しい音を立てている。
『もう……本当にバカなんだから。今から私の力を流すわよ。死ぬほど痛いんだからね!』
サリオラからの声が届いた。
すると、ドクンと心臓が跳ね上がる。
身体中が流れてくる何かによって悲鳴を上げる。
目や鼻、口からは血が流れる。
「ぐぎぎぎぎぃ!!」
ラグナは必死に歯を食いしばり痛みに耐える。
するとラグナの身体が変化していく。
黒髪だった髪の毛の色は金と銀の2色へ。
そしてほんのりとラグナ自身が光り輝いている。
グラムニュートの攻撃により意識を失いかけていたフィオナだったが、ラグナのフィオナと呼び捨てで呼んできた声で辛うじて意識が覚醒していた。
「……バカが……私なんかの為に……」
必死に魔力障壁を殴りつけていたラグナをじっと見つめていた。
諦めずに挑むその姿を目に焼き付けるように。
そして今現在。
変貌をとげたラグナがフィオナの目の前で迫り来るダークボールと衝突していた。
ラグナを覆っている光がフィオナへと流れ込んでいく。
『暖かい光……』
怪我が治った訳では無いが、痛みがスゥッと抜けていく。
何故だかわからないが、フィオナの目から涙がこぼれていく。
絶対に守るんだと言うラグナの声が頭に響いていた。
「負けてたまるかぁぁぁぁ!!」
ラグナを覆っていた光が爆発。
ダークボールが消し飛んでいた。
「お前は女神ノ代行者ダナ!!そノ光は見覚えがアる。そウか、マタ我等の邪魔をするノだナ!今はマだソの時デは無い。土産を貰って今日は退散スるとしよう。」
グラムニュートは闘技場試合会場の隅に隠れていた2人の兄弟の上空へと移動。
「うわぁぁぁ!!」
「誰か助けてぇーー!!」
グラムニュートが手をかざすと2人は上空へと浮かび上がる。
必死に助けを求めるがどうにもならなかった。
「まタ会おウ。サラばダ、人間共ヨ。」
空高く飛んでいき、姿が見えなくなった。
魔族が立ち去ったことに安堵すると、全身の力が抜けたように感じて俺は意識を失った。
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