第147話

『それじゃあ、いっくよ~!!運命の最終戦!!勝利はどちらの手に!?レディー・ゴー!!』


交流戦、最終試合がいよいよスタートした。


「いくぞ!!詠唱させるな!!」


ロイ率いる3人は身体強化魔法を掛けて教本通りに魔法に対して接近戦をしかけるべく一歩踏み込む。


そして……


ズサァァァ-ー。


闘技場全体がシーンとなる。


速攻を掛けようとした騎士学園の生徒3人が盛大に顔面から転んだ。


「よしっ!!」


ラグナは嬉しそうに叫ぶ。


「ラグナ、これはちょっと……」


「ふふっ、無様ね。」


何故こうなったのか。


相手が開始直後に一気に距離を縮めてくることは、最初から分かっていた。


なのてラグナは相手が身体強化魔法を発動した瞬間に、3人の足下に小さくアースウォールを発動。


速攻を掛けようと一歩目を踏み込んだときに小さく現れたアースウォールに足が引っかかってしまい、現在の光景になっていた。


ロイ達は顔の痛みに耐えながら立ち上がる。


「ぐっ、おのれ!この面汚、ごぼぉぁっ!!」


ロイが立ち上がりセシルを罵倒しようとしたのが直ぐに分かったので、話をしている口の中を狙いウォーターボールを発射。


「なんか変な音聞こえたけど?」


闘技場に笑いが広がる。


「ぺっ、ぺっ、くそっ!!馬鹿にしよって!!しかし魔法師など接近してしまえば!!」


ラグナ達は追撃を一切行わなかったので、3人は立ち上がると直ぐに体制を立て直す。


「コイツは俺がやる!!2人は残りの魔法師を倒すんだ!!」


「「はい!!」」


二手に別れて戦闘が始まった。


「死ねぇぇぇ!!」


ロイがラグナに向けて剣を振るう。


しかしラグナはひょいひょいと剣を避けていく。


うーん……


リビオさんとか神殿騎士の皆に比べたら動きが遅い。


『おーっと。まさかの接近戦だぁぁ。ラグナ選手!ロイ選手が繰り出す剣戟を見事交わしていく~!!』


いけ~!!


そのまま倒せ~!!


ラグナはひょいひょいと回避しながらも、直ぐにロイの欠点に気が付く。


この人、上ばっかりに意識が集中していて足下がガラ空きだ。


「何故、何故当たらない!!」


大振りで剣を振ってきたので横に避けるとすぐに足を引っ掛ける。


すると見事にバランスを崩して地面へと転がる。


そして転がったロイに対してウィンドボールを発射。


ゴロゴロとロイは転がっていく。


一方その頃、セシルとウィリアムは近接戦闘に持ち込まれないように無詠唱魔法で牽制していた。


「これでは近寄れん!!」


ひたすら高速で連打されるファイアーボールによって足止めをされていた。


「流石、6年生ね。どこを狙っても完璧に防御される。」


「ほめてる場合か!このままだと俺達の魔力も危ういぞ。」


2人はラグナのように近接戦闘が出来るわけではないので、足止めに徹していた。


「くそ!!威力は大したこと無いがこの連射は早すぎる!!」


騎士学園の2人も何とか接近戦に持ち込もうとするが、あまりにも早く展開される魔法により近寄れない。


完全に膠着状態だった。


お互いに何とか隙さえ作れれば……と考えていた。


その時。


「グハッ!!」


2人はひたすら前方から来る魔法を防御していたが……突如として側面から衝撃が襲ってくる。


バランスを崩した2人は倒れ込む。


犯人はラグナだった。


ロイの攻撃を捌きながらも2人が膠着状態になっているのが見えたので、ウィンドボールを2発発射していたのだった。


セシルとウィリアムはラグナからの援護に感謝しつつも、この隙に追い込んでいく。


「火よ!多数の飛礫となりて焼き尽くせ!!ファイアーショット!!」


「土よ、敵を打つ飛礫となれ!アースショット!」


ウィリアムとセシルは魔法を詠唱する。


そして多数の火と土の飛礫が倒れ込んだ2人に襲いかかる。


倒れ込んだ2人は詠唱に気が付くとすぐに転がったまま盾を構える。


しかし、無詠唱の単発のボール系の魔法とは違い詠唱したショット系の魔法は完璧に防御することが出来なかった。


『倒れ込んだ2人に対してショット系の魔法で追い込みだぁぁぁ!!』


そしてついに盾が耐えきれなくなり2人ほぼ同時に破壊された。


防ぐ手段が無くなり飛来し続ける魔法が着弾。


『盾が壊れてはどうにもならなかったぁぁぁ!!2人はここでリタイア!!騎士学園側はあと1人!!』


「はぁはぁ……流石に疲れた。」


「ふぅ……もう1発分くらいしか魔力が残って無いわ。」


流石の2人も連続で魔法を繰り出していったので、ほぼ魔力は空になりかけていた。


2人はラグナの方を見る。


「くそ!!役立たず共め!!壁にもならないとは!!」


ロイは味方2人に対して悪態をつく。


仲間の2人は、たかが1年生に敗北。


このままでは自分の評判が落ちてしまうと憤慨していた。


「父上が見ているのだ!このままでは負けられんのだ!!」


ロイはバレないように懐から錠剤を取り出すと飲み込む。


「いくぞ!!」


ロイは再び身体強化魔法を使いラグナへと剣を振るう。


「うわっ!!」


先程とは比べものにならないほどの剣捌きの速さだった。


『さっきとは別人みたいな動きだ!避けきれない!」


『おっと~!!ロイ選手の動きが見違える様だ!!先程とは雲泥の差。ラグナ選手は防戦一方だぁぁ!!』


わぁぁぁぁ!!


一気に白熱した試合に切り替わり観客席から声援が木霊する。


ラグナは回避出来ないと悟ると、魔力障壁を繰り出して防御。


反撃の隙を窺う。


「死ね、はやく倒れろ!!」


激しい攻撃にラグナの魔力障壁にヒビが入る。


「まじかよ!さっきとは別人みたいだな!」


ラグナは慌てて魔力障壁から離れると一旦距離を取ろうと下がる。


しかし、ロイは魔力障壁をあっと言う間に粉砕すると下がろうとしているラグナへと肉薄する。


「やばっ!!」


ラグナの首目掛けて振るわれた剣を

体勢を崩しながらもギリギリで回避する。


「ラグナ!!」


2人は思わず声を出してしまう。


「そうか……そうだな。」


ロイは先程の声の主を思い出す。


すると体勢を崩したラグナを放置して別方向へと向かっていく。


「くそっ!!」


ラグナは体制を立て直しロイを追い掛ける。


ロイは魔力がほとんど尽きている2人から先にトドメを刺すことにした。


「愚妹から死ねぇぇぇ!!」


魔力が尽き掛けている2人はロイからの攻撃を避けることが出来ない。


しかしセシルはまだ諦めて居なかった。


「ウォーターボール!!」


少しでも威力をあげるために無詠唱ではなく詠唱短縮を選択。


剣を振るおうとしているロイの顔を目掛けて発射。


「くっ!!悪足掻きめ!だが死ねぇ!!」


ウォーターボールを盾で防ぐとセシルに対してロイは剣を振るう。


ガキン。


セシルに直撃すると思われた剣は半透明の魔力によって守られた。


「何!?グハッ!!」


後ろからのファイアーボールが直撃してロイは転がっていく。


「ラグナ、ありがとう。」


「なんとか追いついた。ごめんね、いきなり動きが速くなって油断した。」


ラグナはセシルが斬られる寸前に、ギリギリ射程内に入ったセシルへと魔力障壁を展開。


なんとか守ることが出来た。


『もう駄目かと思われたがラグナ選手がセシル選手を守ったぁぁぁ!!』


「くそっ!!あと一歩と言うところで!!」


ロイは立ち上がるとラグナを睨みつける。


「2人とも、魔力は?」


「もうすっからかんよ。」


「同じく。」


「そっか。それじゃあ危ないから後ろに下がってて。後は僕がやる。」


セシルとウィリアムは試合会場のギリギリまで下がると後はラグナに任せることにした。


「さぁ、おいでよ。先輩。」


手をクイっとやってあえてラグナはロイを煽る。


「舐めるなよ!ガキが!!」


煽られたロイは剣を構えてラグナへと突撃する。


すぐさまラグナは魔力障壁を次々と展開。


次々と現れる魔力障壁をロイはどんどん破壊していく。


『異常なほど目が血走ってるな。なんかやったのか、この人?』


パッと見は目が真っ赤。


白目の部分が赤く染め上げられていた。


「死ね!死ねぇ!!」


力任せに剣を振るう。


負けじとラグナも魔力障壁を展開。


観客席からはラグナが押されているように見えていた。


きゃぁぁぁ!!


ロイ様ー!!


頑張ってー!!


ラグナくん、負けないでー!!


5分ほど攻防が続いていた。


『くそっ!!』


ロイは焦っていた。


アレを飲んだら短期決戦で終わると思っていたが、ラグナが予想以上に粘ってきた。


ラグナは違和感に気がつく。


『徐々に剣速が落ちてる?疲れてきたかな?』


それからガクンと目に見えて攻撃速度が落ちた。


『これだけ攻撃が遅くなれば詠唱出来る!』


すかさずラグナは魔力障壁を展開したまま魔法を詠唱する。


「火よ!多数の飛礫となりて焼き尽くせ!!ファイアーショット!!」


爆炎魔法だと後ろの2人に被害が出る恐れがあったので使用しなかった。


「グハァァ!!」


盾を構えるタイミングが遅れてしまい、ラグナが発動させたファイアーショットが直撃。


そのままゴロゴロと転がっていくと動かなくなった。


『決まったぁぁぁ!!前代未聞!!長い歴史上初めて。初めてだよ!!まさかの1年生の生徒達が総合優勝だぁぁ!!』


うぉーー!!


ラグナ達の優勝が決まった。


貴賓室では新たな戦いが始まろうとしていた。


「あいつ、ウチに欲しいな。」


「あの子は私が手に入れますから。魔法師ですからね。」


「だがあいつは魔法剣も使えるんだ。ウチでもいいだろう?」


「魔法剣は魔法ですよ!絶対に譲りませんからね!」


軍務大臣マルク・ラヴァンと戦略魔法大臣ビリー・アブリックはラグナを完全にロックオンした。


お互いの娘の相手に欲しいと。

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