第111話

ガタン


突然、扉が乱暴に開かれる。


そして現れたのは魔法師の正装であるローブを着崩してやや露出が多い服装の女性だった。


「おー、偉いな。きちんと席に座ってるなんて。」


教室に入ってきた女性は教諭の席にドカッと座ると水タバコを服の中から取り出した。


「今年このクラスの担当になったフィオナ・パスカリーノだ。よろしく。」


どうやらこの女性は教師らしい。


先生が名乗った直後から教室の雰囲気がガラッと変わった。


空気がピリピリしてる。


そんな空気の中、最後列に座っていたチャラ男君が小さな声で呟く。


「パ、パスカリーノってまじかよ。」


隣に座るミレーヌさんの顔色も気持ち青ざめている気がする。


「うん?誰が呼び捨てで呼んでもいいって許可したんだ?あん?」


急にチャラ男に向けてデコピンの動作をした。


振り抜いた瞬間恐ろしいことに。


「なっ!!」


デコピンの動作と共に極小の炎か発生して指を振り抜くとそれは発射された。


炎はチャラ男君目掛けて一直線に進む。


パン


前髪にぶつかると極小の炎は小さな爆発を起こした。


「あちっ!あちあち!」


チャラ男君が慌てて前髪で弱々しく燃えている炎を手で叩いて消したがすでに手遅れ。


消えた頃にはチリチリになった前髪へとヘアーチェンジしていた。


「ぶっ!アハハハっ!チリチリがお似合いじゃねぇか。全部チリチリにかえとくか?」


涙目のチャラ男君はすぐに謝罪した。


「生意気な言動をしてしまい申し訳ありませんでした。」


チャラ男君がペコペコ謝っている。


この人、行動はあれだけど凄い。


無詠唱で普通に会話しながら魔法を発動させてる。


「まぁ今回だけは許してやろう。私は寛大だからな。とりあえず私が自己紹介したんだ。次はお前たちの番な。チリチリから順番に自己紹介しろ。」


チリチリと言われたチャラ男君は一瞬悔しそうな顔をするものの、逆らうとどんな目に遭うかわからないので素直に立ち上がり自己紹介を始めた。


「シャールです。よろしくお願いします。」


チャラ男君はシャールか。


「セシルよ。よろしく。」


ちょっと気の強そうな女の子はセシル。


「ウィリアムだ。よろしく頼む。」


部屋に入るなり平民と見下してきた奴はウィリアムか。


先生がウィリアムの偉そうな態度にピクッと顔が反応した。


「……よろしくお願いします。」


チリチリになりたくないもんな……


「次、2列目~。」


次の子はあの子か。


「シ、シーヴァです……よ、よろしくお願いしますです。」


この子、オドオドしてるな。


しかも俺を見たときの悲鳴が地味に傷つく。


次は双子の片割れ。


「私はルーです。よろしくお願いします。」


顔立ちが2人とも中性的で分からなかったけど真ん中に座っている子は女の子らしい。


「僕はテオです。隣の姉共々よろしくお願いします。後、こんな見た目ですが僕は男ですので間違えないで下さると助かります。」


もう1人の男の子は弟なのか。


たしかにこの双子の顔だと女の子の服装したら美少女だし、男の子の服装だと美少年だからな。


「おっ!お前たちはあれか。アブリックの子供か!父親に似なくて良かったなぁ、お前たち。」 


どうやら先生の知り合いの子供らしい。


「先生、家名を学園で言うのはちょっと……」


「ん?あぁそうか。悪い悪い、そういやそんなルールだったな。忘れてたわ。いいかお前達、今何も聞いてないよな?」


流石に逆らうと何をされるのか分からないので皆頷いている。


「んじゃ次は最後の列だな。お前からだ。」


扉側に座った女の子から自己紹介。


最後が俺か。


この子は確かアースウォールを試験の時に発動した子だよな。


「初めまして、クララです。よろしくお願いします。」


きちんとお辞儀までして礼儀正しい子だな。


そして次は召喚魔法を発動した子だ。


「……ベティーです。お願いします。」


見た目通り大人しそうな子だな。    


次はミレーヌさんだ。 


「ミレーヌです。皆様、よろしくお願いします。」


綺麗にお辞儀をするミレーヌさん。


こう見るとミレーヌさんが大人びて見えるな。


次は俺の番か。


「ラグナです。よろしくお願いします。」


ビシッとお辞儀をして挨拶する。


流石に悪印象で髪の毛チリチリにされたくないし。


「あぁ、お前が噂の問題児か。」


えっ?


「僕が問題児ですか‥…?」


ミレーヌさんも首を傾げてる。


「まぁ、こっちの話だ。気にすんな。これで10人全員の自己紹介は終わったな。」


先生が時計を確認してる。


「やべぇな、まだ時間が余ってるわ。あれだ、なんか私に質問あるか?遠慮せずに聞いてみろ。」


この先生に遠慮せずに聞けと言われても‥…


するとミレーヌさんがゆっくりと手をあげる。


「おっ。君はミレーヌだっけか?何が聞きたい?」


ミレーヌさんは立ち上がると小さく息を整えた。


「先生は確かヒノハバラ第2魔法師団の特攻隊長だとお聞きしたことがあるのですがどうして学園に?」


特攻隊長って‥…


やばい職名だな。


「あぁ、あれな。第1魔法師団団長のじじぃがムカついたんでシバいたらクビになった。んでこの学園の学園長が今年は面白い人間が揃ってるから来いって言うんで来た。それだけだ。」


そう言って俺のことを見ながらニヤッと笑った。


それだけって……


実力でいったら第1師団の団長よりも強いってことじゃん……


それに学園長も面白い人間が揃ってるって。


コンコン


「失礼します。」


部屋に入ってきたのはコレットさんだ。


「先ほど入学式が終わりましたのでこれより皆様を学園生活の説明および特級組の寮や食堂を案内します。」


ぺこりとお辞儀をするコレットさん。


「んじゃあとはよろしくー。今日はこれで終わりだから私は帰るわー。」


俺達が教室を出る前に先生は先に帰っていった。


「それではこれより学園生活について説明を始めたいと思います。」


コレットさんからの学園生活についての説明が始まったのだった。

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