ヒノ魔法学園ピカピカの1年生

第110話

「新入生代表、ミレーヌ。」


今日は学園の入学式。


「はい。」


ミレーヌさんが壇上に上がって行く。


「本日はこの様な素晴らしい入学式を行って下さり、本当にありがとうございます。私達は歴史ある王立ヒノ魔法学園の入学式を迎えることが出来ました。これから卒業までの6年間、名誉ある初代勇者様がお作りになられた本校の生徒の1人として自覚ある行動をし、仲間と共に勉学に励み、自身を鍛え、将来はこの栄光あるヒノハバラ国を支え、守り抜く力を持つ素晴らしい魔法師になれるよう日々努力していこうと思います。先生方、先輩方におきましては、厳しくも温かいご指導をよろしくお願いします。最後になりましたが保護者の皆様、私達をここまで育てて頂き本当にありがとうございます。6年後、立派な魔法師となりご恩を返せるように研鑽してまいります。本日は私達の為にお集まりいただき本当にありがとうございます。 新入生代表 ミレーヌ。」


ミレーヌさんが頭を下げると大勢の人からの拍手が送られた。


そして壇上から降りてきて俺の隣に座る。


「お疲れ様。」


「流石に緊張したわ。」


ふぅとミレーヌさんが息を吐く。


そして入学式の最後に現れたのは学園長であるイアンだった。


「新入生の皆、入学おめでとう。俺はこの王立ヒノ魔法学園の学園長であるイアン・ロビンソンだ。これから6年間、1日1日を大切に過ごしてほしい。俺の挨拶はこれで終わりにしよう。そしてこれからはお前たちがお待ちかねのクラス分けの発表だ。まずはクラス分けについて説明を行う。これを見てくれ!」


学園長の掛け声と共に空中に巨大な掲示板が現れた。


1年生 1クラス 特級組 10人

    2クラス  銀組 30人

    3クラス  青組 40人

    4クラス  黒組 50人

    5クラス  白組 70人


クラスによって人数も違うのか。


クラスの人数が多かろうが少なかろうが教師の人数は同じ。


つまり人数が少なければ少ないほど濃密な指導が行われる訳か。


そして次の表示に切り替わる。


特級組 


特別寮にて生活。


朝食、昼食、夕食は特級専用の食堂にて無料で提供・学費の無料。


また様々な優遇制度有り。


銀組


上級寮にて生活。


一般食堂での使用料金の割引。


学費の一部割引。


青組


一般寮にて生活。


割引などの特待は無し。


黒組・白組


共同寮にて生活。


青組と同じく特待は無し。


「ここまで差がつくんだね。」


「学園には優秀な人材を育てることを求められていますからね。仕方ありませんわ。」


「それじゃあこれから各クラスの振り分けを発表する。名前を呼ばれたら壇上に上がり許可書を受け取り各クラス毎に振り分けられた教室へと向かってくれ。」


流石に緊張してくるな。


せめて青組以上に入れたらいいんだけど……


「それでは発表する。特級組の1人目は新入生代表でもあるミレーヌ!」


ミレーヌさんが1番手に名前を呼ばれた。


「はい!」


そして壇上へと向かい書類を受け取った。


「おめでとーー!」


保護者席から突然聞き覚えのある声が届いた。


ミレーヌさんもその声にビクッとして振り向く。


目線の先にいるのはフードを深く被った謎の男性。


『あれってブリットさんだよな。帰ってきたんだ。』


ミレーヌも正体に気がついたのか顔を真っ赤にして壇上から降りて教室に向かっていった。


『流石にあれは恥ずかしいよな……』


「次席ラグナ!」


えっ?俺!?


「は、はい。」


俺が次席なの!?


少し頭が真っ白なまま壇上へと進む。


「おめでとう。本来ならお前が新入生代表だったんだけどな。お前を守るためだ。すまんな。」


学園長が小さい声で爆弾を投下する。


「い、いえ。助かります。」


あんな挨拶なんて俺には本当に無理だよ。


逆にミレーヌさんには申し訳ない気持ちになる。


学園長から書類を受け取り後ろに振り向く。


「おめでとうー!」


ブリットさんと思われる声がまた響いた。


『これは想像以上に恥ずかしいな。』


自分でも顔が真っ赤になっているのが自覚出来たのでそそくさと教室に向かう。


特級と表示のある教室の前には女性が待っていた。


「ラグナ君、特級クラス入りおめでとう。」


確かコレットさんだっけかな?


「ありがとうございます。これからよろしくお願いします。」


そして教室へ。


教室内の配置はこんな感じ。

   最前列が4席

   2列目が3席

   3列目も3席

   トータル10席


ミレーヌさんは最前列のセンターに座っていた。


「ラグナ君も同じクラスで良かったぁ。」


俺はミレーヌさんの隣、最前列の壁側に座る。


「僕も同じクラスで安心しましたよ。そう言えばあれブリットさんですよね。」


ミレーヌさんは思い出したのか顔が真っ赤になってきた。


「本当にもぅ、恥ずかしいんだから……」


「大丈夫。ミレーヌさんだけじゃありませんでした。僕も同じ目に合いましたので……」


「本当にうちの父がごめんなさい。」


本当に恥ずかしかったんだろうな。確かにあれは俺も恥ずかしかったけど。


ガラガラと扉が開く。


「ふん、平民が。」


態度がデカい人が来た。貴族の子供かな。


大人しくしとこ。


今入ってきた子供は3列目の壁側に座ったみたいだ。


すぐに次の子が入ってきた。


「あっ。」


4人目は女の子だ。


「貴女は確か召喚術を使っていた子ですよね?」


ミレーヌさんが早速話かけていた。


「は、はい。これからよろしくお願いします……」


大人しそうな子だな。


最前列の入り口に座った。


ガラガラ。


「おっ!」


またまた見たことある子が入ってきた。


「あなた達は確か一緒に試験を受けた子よね?よろしく。」


今きた子はミレーヌさんの隣に座る。


これで最前列が埋まったな。


でもまだ誰1人として名前を名乗らないけど何でだろ?


次に入ってきたのは……


「おっ!エチゴヤの可愛い子じゃん。よろしくー。」


チャラそうな男だな。


しかもエチゴヤって名乗ってない筈なのによく気がついたな。


「えぇ、よろしくお願いします。でもルール違反ですわよ。」


ルール違反?


ポカンとした顔をした俺に気がついたミレーヌさんが教えてくれた。


「学園内では貴族であろうと平民であろうと平等と言うルールになっていますの。だから家名を名乗るのはルール違反なのですわ。」


ミレーヌさんの横に座っている2人も頷いている。


「そうなんだ。でも君はよくミレーヌさんの家名に気がついたね。」


俺が話し掛けたけど返事がない。


「君みたいな可愛い子がいるなら俺ってばやる気でるー!」


俺をスルーしてひたすらミレーヌさんに絡んでいる。


「おい。」


「うっさいなー。男が話しかけないでくれるかな。シッシッ。」


こいつは!


するとミレーヌさんが急に腕を組んできた。


「この方は私の大事な、と、ともだちですの。そういうのは辞めていただきたいわ。」


キッと睨んでくると3列目の入り口側に向かい無言で座った。


重苦しい空気の中現れたのは顔がそっくりの2人。


兄弟かな?


「「どもー。」」


声がハモった!


でも声の高さが違った気がする。


2人は2列目の壁側とセンターに座った。


再び扉が開く。


「ふんっ。」


俺達の姿をみたその子はその一言だけ言い放ち3列目のセンターに座る。


「へぇ。君もこのクラスなのか。」


さっそくチャラそうな奴が絡んでるな。


「汚らわしい。」


もの凄く蔑んだ目で見てるな……


「くっ……」


流石にあの目には勝てなかったらしい。


絡むのを諦めて大人しくなった。


そして最後の1人が部屋に入ってくる。


「すみません、すみません」


ペコペコしながら入ってきたのは女の子だった。


「あっ。」


初めて見た。この子はオッドアイだ。つまり『魔眼』持ちだ。


その子が俺のことを見た途端、目が見開いた。


「ひぃっ!」


何故か急におびえ始めた……


「どうかしましたか?大丈夫?」


流石ミレーヌさん。直ぐに異変に気がついて声をかけた。


「だ、大丈夫です。何でもないです……」


恐る恐る空いていた最後の席に座った。


これで特級組10人が揃った。

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