第81話
日の光が目に当たり目が覚める。
あんなことがあったせいで寝不足だ。
起きて馬車から出ると皆起きていた。
「おはよう。」
父さん達にまずは挨拶。
「おう、おはよう。飯食うか?」
朝食は昨夜と同じ。スープとパン。
朝食を食べた後はいよいよ捕縛した人を転移させる。
まだ寝ている襲撃者を縛り上げているロープの隙間に手紙が挟んであった。
「後の処理はエチゴヤにお任せ下さい。それでは今から発動させます。」
捕縛した人間に転移球を握らせて魔力を流す。
すると直ぐに転移球が発光し始めたので御者さんは手を離す。
「なっ!?」
ゆったりと消えていく訳じゃなかった。
本当に一瞬。
目の前に居た人間が一瞬で本当に消え去った。
「これはまた本当に凄いですな。」
「以前実物を拝見しその後使用方法は教わりましたが、私も実際に使ったのは初めてです。自分でも驚きました。本当に一瞬なのですね。」
「これが安価になれば戦争が変わっちまいそうだな。」
「それが使用している素材、魔石の量が物凄いらしく販売価格からしても原価ギリギリらしいのですよ。この価格からさらに利益を求めるととてつもない値段になってしまうらしいです。」
ミスリル銀貨1枚って言うくらいだから技術料でだいぶ儲けていると思っていたんだけど。
素材と魔石の量か。
確かに一瞬で移動出来るんだもんな。
必要な魔力だけでもとんでもない量が必要なんだろう。
「それでは我々は村へと移動しますか。」
火の始末を終えた後は馬車に乗り込み村へと再び街道を進む。
ハルヒィさんは昨夜から一睡もしていないので馬車の中で横になり寝るみたいだ。
村長さんはハルヒィさんがゆっくり休めるように御者さんの隣に座り何やら2人で話し込むらしい。
父さんはまさかの行動だった。
身体が鈍るからと馬車から降りて馬車と併走しながら走っている。
お前も走るか?と聞かれたけどもちろん拒否。
馬車の中で大人しく座りながらネックレスを触る。
『サリオラ、今大丈夫?』
『……うん。』
『とりあえずいろいろ心配かけてごめん。』
『……仕方ないとは思ってるわよ。でもいきなり繋がりが切れてラグナが見えなくなった時は怖かった。』
『本当にごめん。まさかこんな事になるとは思って無かったよ。』
『私もよ。まさかラグナがマリオン様の所に居るなんて思ってもいなかった。』
『俺自身呼ばれるとは思ってもいなかったさ。』
『それでこれからどうするの?』
どうする……
神託と言うよりお願いって感じだったんだよな。
強制的にやれって訳じゃなくて思い付いた時でいいって言われたし。
『ん~。とりあえずはこれからも料理をしながら何か思いついたら実験。上手く行けばマリオン様に申請かな。』
『申請ねぇ。どうやって……?』
『どうやってってそれは……!!』
『気が付いたのね。』
そうだった。
料理を思いついてもうちは所詮辺境にある村。
商業ギルドもあの神殿も村には存在してない。
『どうしよう……』
『こればかりはどうしようも無いわね。』
特許の申請には商業ギルドがある街に行かなきゃ行けないのか……
『サリオラはマリオン様と連絡取れたりしないよね?』
『出来るわけ無いでしょ……繋がりもないし。それに私は……守護の女神様の……娘よ?』
『そか……詳しくはまだ聞かないでおくよ。』
『ありがとう……いつか時が来るか覚悟出来るまでは……待ってて。』
『わかった。』
また時間が出来た時に話をしようと約束してサリオラとの連絡を終わりにする。
「ふぅ。」
ここ最近いろいろなことが起きすぎた。
領主の私兵に捕まってからは毎日が濃すぎる。
最終的にマリオン様との謁見。
そして地上に戻れば使徒扱い。
「いろいろ疲れた。ちょっと寝よう。」
ラグナは考えることを放棄して寝ることにした。
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