第69話
「ここに契約は結ばれた。汝命尽きるその時まで、我はラグナと共に。」
天界?で出会った女の子と契約した。
「君は守護の女神様の娘だったんだね。」
「まぁそうね、お母様は守護の女神様よ。」
「それで契約って具体的にどうなるのかな?加護が強化されるだけ?」
「加護の強化は勿論されるよ。でも気をつけて。その分色々な面で力が強くなるから。」
「いろいろな面?」
「うん。いろいろと。例えば今回捕まった時も多少の動揺はあったみたいだけど、全然平気だったでしょ?」
「うん。思ってたよりも辛くはなかったかな。前世を引き継いでるからだと思ったんだけど。」
「やっぱりね。普通なら大人でも動揺と恐怖があるわよ。あなたの村の人達は平気だったみたいだけど……あの商人さんは常に怯えていたわよ。絶対に顔には出さなかったけどね。その状況下でも君にだけは安心させようといろいろ話しかけたりアクションしたりしたみたい。凄いわね、この人。きっと一流の商人になるわ。この縁は大切にして。」
「サイさん凄いな。怯えてる素振りなんて全く分からなかったよ。つまり君からの加護のおかげでパニックにならないで済んだけど、今回の契約でメンタル面も強化されたってこと?」
「そう言うこと。もうワイルドボア如きに襲われてもパニックになることなんて無いわ。でも気をつけてね?万が一契約が途切れた場合、あなたは本来の自分に戻ってしまうの。慢心しないで心と身体を鍛えなさい。」
心を鍛えるか……
「契約が途切れることなんてあるの?」
「あるわよ。創造神様、あの事を伝えてもいいでしょうか?」
「ふむ……それくらいは伝えても構わぬよ。」
サリオラから衝撃的な一言が発せられる。
「今から6年後、魔王が復活するわ。」
えっ……
「ま、魔王?」
「そう、魔王よ。だから鍛えなさい。じゃないと死ぬわよ?」
「えっ……勇者とかは……」
「残念じゃが……今回に限って、儂等は手を出すことが出来ぬのじゃ。」
「君のお母様でもある守護の女神様は……?」
サリオラが苦々しい顔をする。
「今回、あの方は力を振るうことが出来ないの。詳しくは話すことが出来ない。」
いろいろ訳ありってことか。
あと6年。
あぁ、そうか。
「これが契約で心が強化されてるってことか。普通なら魔王が復活するなんて言われたらパニックになりそうだもんな。」
「だから気をつけて。魔王の力なら一時的に契約を封印することだって出来るの。だから絶対の力ではないのよ。」
確かに魔王を目の前にして契約を封印なんてされたら……
前世のメンタルだとショック死しそうだ。
「分かった。6年後だね?それまで全力で取り組むよ。それで君と……」
「サリオラで良いわよ。私もラグナって呼ぶから。」
「そっか。それじゃサリオラ、聞きたいことがある。」
「何かしら?」
「君と頻繁に連絡を取りたい。」
「ばっ、バッカじゃないの!?急に何を言うのよ!」
サリオラが慌てているけど……
「別に無理なら良いんだ。サリオラには迷惑かけたくないし。」
「別に迷惑なんて無いわよ。」
すると創造神様が笑いを堪えきれずに吹き出した。
「サリオラよ、恥ずかしがることなんて無いんじゃないか?」
顔が真っ赤になったサリオラ。
「べ、別に恥ずかしくなんて有りません!」
「なら何で伝えないのじゃ。月に1度だけ。ラグナ君の側にいることが条件の替わりに1日地上に降臨出来るのことを。」
「そ、それは……」
「それは月に一度ならサリオラと会えるってことですか!?」
「そうじゃよ。月に一度なら会うことが出来る。」
「良かった……」
「な、何よ。私と会えるのが嬉しいとでも?」
「そりゃ嬉しいよ!君に会えるんだから。」
「なっ……」
顔を真っ赤にしたまま思考が停止するサリオラ。
その状態に全く気がつかないラグナ。
「それにしても創造神様、神様達も子供って産めるのですね。」
神様が普通に子供を産んでいることに驚くばかりだよ。
「それは……」
サリオラは言いにくそうにだんまりした。
「その娘は特別じゃよ。普通は神や女神は繁殖などせぬからのぅ。」
えっ?
「ならば神様達はどうやって数を増やすのですか?」
創造神様が笑い出す。
「ラグナ君や。儂は誰かね?」
誰かね?
「創造神様ですよね?」
「つまり?」
あぁ、そういうことか。
「創造神様が他の神々の方や女神様を?」
「最初はな。いくら儂でも1人で世界を管理するなど無理じゃ。儂が基本となる神々や女神を創造し作り出した。まぁ今となっては他の神に任せている部分も多いがのぅ。」
「他の神様にですか?」
「うむ、如何せん世界は1つではない。それぞれ責任者たる神を決めて見守らせておる。その責任者にある程度権限を与えて神を増やしたりしておるんじゃ。」
そうだったのか……
ん?じゃあ元の世界で俺を殺した神は……?
「あれは本当にすまんのぅ。あの世界の神が新たな手法でと作り出した新神がヤラカした事件じゃ……人間と同じ様に自らが作り出した神々を学校のような所で学ばせ育てて、一人前の神々を作り出そうとした結果がアレじゃ。一部の新神は自分達は選ばれた存在であると言う思想に染まっており修正出来んかった。直ぐに処罰したがのぅ。あの世界の神も本当に申し訳ないことをしたと悔やんでおったわ。」
心残りが全く無いと言えば嘘になるけど。
「今ではもう気にしてませんよ。今の世界にも馴染んで来ましたし。全てが順風満帆とは言いませんが楽しく過ごさせて頂いてます。」
「それならよいがのぅ。そう言えばスキルはどうじゃ?」
スキル……スキルかぁ。
「収納が初代勇者様しか今まで使えなかったことに驚きました。異世界転生物の小説などでは割と収納ってスキルはスタンダードだと思っていたんですけどね。」
「儂が転生間際に言うたであろう。スキルにおまけしといたと。それが収納のスキルじゃ。」
収納のスキルがオマケだったことに驚く。
もっと単純なスキルかと思ったんだけど。
「他には気がついたことがあるかのぅ?」
「サリオラと契約してから気がついたんですけど。スキルの発動条件はあれかな?って頭に浮かんでることはありますね。」
「どれ、儂がラグナ君を見てみようじゃないか。」
創造神様の指が俺の額に指をさすと何かが見えているみたい。
「ふむふむ、スパイスに備長炭にガストーチか。それに剣術と魔法剣、魔法に生活魔法もか。頑張っておるのぅ。」
ステータスの様なものが創造神様には見えているのか。
「戻ったら、更にいろいろ試してみます。」
「せっかくの第2の人生じゃ。めいいっぱい楽しむといいんじゃよ。」
「はい!ありがとうございます。サリオラも改めてありがとう。」
「べ、別に気を使わなくて良いから。たまには現世に降臨してあげるから何かあれば呼びなさい。」
「ありがとう。頼りにしてるよ。」
「あ、後はそのネックレスの宝石を握りながら私を呼びなさい。時間があれば話し相手くらいにはなってあげる。」
サリオラと自由に話しが出来るのか。
「それは良かったよ!本当に嬉しい。」
また顔が真っ赤になるサリオラ。
「ふぉっふぉっふぉっ。それじゃあそろそろ君を元の場所に戻すとしよう。」
もうそんなタイミングなのか。
「分かりました。よろしくお願いします。それじゃあサリオラ。またね?」
「う、うん。またね。」
そうしてゆっくりと意識が朦朧としていくのであった。
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