第68話

うーん……


目を開けると久々に真っ白な空間が。


「風呂に入った後、ふとんにダイブしたまま寝ちゃったのか。」


ふと何かの気配を感じる。


「突然誰か来たと思ったらまたお主なのじゃ。」


後ろを振り向くとあの時の女の子。


「久しぶり。なんでかわからないけどまた来ちゃったみたい。」


「ここはそう簡単に人がこれる場所じゃないんじゃが。」


確かに。なんで簡単に来れたんだろう。


「何を言っておるんじゃ。主がラグナ君にそれを渡したからじゃろう。」


「「創造神様!?」」


突然声がしたので二人で振り向くと創造神様がいつの間にか側に来ていた。


「主がラグナ君に渡したソレはラグナ君と主を繋ぐ回路になっておるぞ。それにほら、見てみぃ。」


この娘から貰ったと言えばネックレスに加工した綺麗な石かな。


女の子がこっちを見てくる。


「なっ!?」


何かに気がついたみたいで驚いた顔をしている。


「どうかしたの?」


「い、いや……何でもないのじゃ……」


「何を照れているんじゃ、主は。ラグナ君はこの娘から加護を貰ったみたいじゃのぅ。」


えっ?加護?


「ど、どうして?」


創造神様がじっと俺を見てくる。


「なるほどのぅ。主も無意識だったと言う訳じゃな。」


「無意識?」


「うむ、どうやら無意識に加護を与えたらしい。つい最近死にかけることは無かったかな?」


死にかける?


「もしかしてワイルドボアに襲われた時ですかね?」


「そうじゃ。その時にラグナ君を守ろうとこの娘が力を振るった時に無意識に加護を与えたみたいじゃ。」


あの時かぁ。


そうだ、きちんとお礼をしないと。


「あの時は守ってくれて本当にありがとう。本気で死ぬって思ったくらい。何かお礼をしたいんだけど。」


女の子は顔を真っ赤にしたまま気にするなと小さく呟くだけ。


うーん。宝石なんて無いからなぁ。


あれでも出してみるか。


「スパイス召喚!」


手のひらからスパイスの粉がいつもなら出てくる筈が手に何かを握っている感覚が。


恐る恐る目を向けると七味などが入っているような小さめの透明な容器を握り締めており、中にはスパイスが入っていた。


「なっ!?」


今までは粉が出てくるだけだったのに!?


「ほぅ、スキルの熟練度が上がって進化したようじゃのぅ。」


「スキルの熟練度ですか?」


「うむ、スキルには熟練度があるんじゃよ。使い込めば使い込むほどスキルの発動が早くなったり威力が増したり。まぁものによっては今のように進化する場合もあるんじゃ。」


ってことは今握っている容器に入っている状態のスパイスはスキルが進化した結果ってこと?


「そうじゃよ。進化した結果がこれと言う訳じゃ。」


声に出してないのに……


「すまんのぅ、意識していないと勝手に心の声が聞こえてきてしまうんじゃよ。」


「大丈夫です。気にしてません。」


流石にこの小さいの1本だとあれだもんな。


トータル5本のスパイスを召喚した。


3本を女の子のに。


「お礼って考えたけど手渡せるものがこれくらいしか無くて……受け取ってくれるかな?」


未だ顔を赤くしたまま女の子はコクリと頷くと手を伸ばして受け取ろうとした。


手渡したその時に一瞬だがお互いの手が触れた。


バチン。


触れた瞬間身体が痺れるくらいの電気が流れた感覚があった。


目の前をみると真っ赤だった顔が驚きに変わっていた。


「ほぅ。なるほどのぅ。」


なるほど?今のは一体……


「まぁ説明するかしないかはこやつに任せることにしようか。」


創造神様がそう言いながら女の子の頭をトントンとしている。


「今のは一体何だったの?電気が流れたみたいだったけど。」


真っ赤だった顔が驚きに変わりまた再び真っ赤になっていた。


「詳しくはまだ言えない。あとこれありがとう。何回か食べてる所を見たときに気になってたの。」


「あれ?話し方が……」


のじゃがついてない。


「もう君には偉ぶる必要がないからいいの。」


のじゃって偉ぶってることだったのか。


「そうよ。一応君よりは偉いもの。」


もう一度試すかのように女の子が手を伸ばすので今度は握手してみた。


ビリビリ。


身体中に電気が走るような感覚がする。


「やっぱりね。創造神様、決めました。」


決めました?


「いいんじゃな?」


「はい、構いません。」


「ならば好きにせぃ。儂は特に何も言わんよ。」


創造神様から許可を貰った女の子がこっちに振り向く。


「話が見えないんだけど……」


全くわからん。何を言っているのか。この娘は何を決めたんだ?


「まだ詳しくは言えない。」


女の子が何かを決心したみたい。


「ラグナ、私と契約しましょ。」


契約?


「契約って?」


契約ってなんの?


「今は一方的に私が君に加護を与えた状態になっているけど、契約をすれば双方が同意したことになり加護がより強化されるから。」


加護の強化?


「もう私の加護がついちゃってるんだもの。構わないわよね?」


加護自体がよくわからないけど。


この娘に触れてから何故だかわからないけど守らなきゃって感覚が止まらない。


「よくわからないけど、君となら契約するよ。」


「ありがとう。いつか必ず説明するから。」


そう言うと女の子が手を組みよくわからない言語を話始めた。


徐々に女の子が光輝く。


頭の中に言葉が流れてきた。


「汝、我と契約する者。我が真名を唱えよ。」


真名?


真の名前?


ふと言葉が浮かんだ。


「守護の女神の子、サリオラ。」


自然とそう唱えていた。


すると彼女が纏っていた光が俺の周りににも纏い始めた。


「ここに契約は結ばれた。汝命尽きるその時まで、我はラグナと共に。」


うん?共に?命尽きるまで?

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