第61話
報奨金・賠償金の受け取りをした後は領主の城より退出。
領主の部屋を出て扉を閉めた途端に部屋の中から怒号と何かを破壊する音がしていた。
それを聞いたブリットはわざと領主がいる部屋に聞こえる声で大笑いをしていた。
笑い声が聞こえた領主はさらに暴れたらしい。
ガッチャン、ガッチャン壊れる音が響いていた。
「さてと。うちの息子の命を救って頂いた皆様に私からもお礼をしませんと。」
ブリットがそう言うと村長が断りを入れる。
「すでに領主様より過大な金額のお金を頂いているのでお気にせずに。」
しかしブリットは首を振ると、
「私からも皆様に感謝を伝えたいのですよ。とりあえず今日はもうそろそろ暗くなるので私共が経営している宿にお泊まりください。明日の朝食後、宿に使いの者を送るので私共の店までお越しください。」
確かにもう夕方。
今から宿屋を探すのは骨が折れるので村長は甘えることにしてサイやブリット達と別れた。
そしてエチゴヤ商会の店員に案内された宿屋がこちら。
「こ、これはまた……」
目の前に現れた宿は1日5組限定の超高級宿。
『エチゴヤの宿・ナルタ店』
宿の扉が開くと室内には魔力灯で明るくなった室内。
そして左右でずらっと並んでいる店員達。
流石の村長も身分が違いすぎると慌てて案内してくれた店員に声を掛けようと後ろを向いた所……
「居ない……」
目の前でずらっと並んでいた店員達が声を揃えて挨拶してくる。
「「アオバ村の皆様、エチゴヤの宿・ナルタ店へようこそお越しくださいました。」」
深々と頭を下げて店員達が挨拶する。
流石にこんな状況に慣れていない村長は慌ててパニックになってしまったので見かねたグイドがかわりに挨拶する。
「こちらこそわざわざありがとう。すまないが支配人はいるかね?」
元はと言え一応貴族の端くれだったグイドが対応する。
一番奥にいた人物が前に出て深々と頭を下げる。
「本日はようこそいらっしゃいました。支配人のフームと申します。」
「フームさん、本当に俺達みたいな人間が泊まってもいいのか?」
グイドの質問はもっともだった。
普通はこのランクの高級宿に入る時点でドレスコードがあるはず。
「若様の命の恩人たるアオバ村の方々をもてなす様にと旦那様より言伝がありました。この度は若様を救って頂き本当にありがとうございました。」
「「ありがとうございました。」」
支配人と共に従業員も揃って感謝を伝えて頭を下げた。
硬直したまま皆が動かないので子供の俺がここは一芝居するしか無いよな。
「サイさんってみんなに慕われてるんだね!」
「ここにいる者達の何人かは訳あって若様に命を救われた者達なのです。」
「本日は皆様の貸し切りとなっております。部屋割りなどはいかが致しましょうか?各部屋お一人様に致しますか?」
村長はグイドとハルヒィと目を合わせると頷く。
「それではお言葉に甘えまして。3部屋でお願いするのじゃ。」
部屋割りは以下の通りになった。
村長さんで一部屋
ハルヒィさんで一部屋
父さんと俺で一部屋
「当商会では本当にありがたいことに初代勇者様とご縁がありまして勇者様の故郷について記してある書物が多数保管されております。当店では初代勇者様の故郷である『ヒノモト』と呼ばれている国の宿を模して作られております。お部屋の希望などはありますでしょうか?」
勇者様の故郷を模した宿と言われてもわからない大人組に対してラグナはワクワクしていた。
(和室とかあるかな?温泉もあれば最高だよな~。前世だと高級旅館なんて泊まったことないし。)
ラグナ達はソワソワしながら各部屋を見ていくことにした。
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