第50話

グイド達が村に到着したのは昼過ぎだった。


「やっとついたぁ。」


村の中に倒れ込む狩人達。


行きは1時間半ほどで商人のサイの所に追い付いたが、帰り道は人力による馬車を引きながらの帰宅になっていた為とても時間が掛かった。


「やっぱり馬はすげぇな。」


ハルヒィは改めて馬の凄さに驚く。


「ハルヒィもお疲れさん。お前なら門番じゃなくて狩人も行けるんじゃないか?」


ハルヒィは苦笑いで首を振る。


「俺はのんびり門番するくらいが丁度いい。狩人って柄じゃねぇよ。」


「お前さんなら何時でも歓迎じゃ。」


馬車から村長が降りてくる。


「皆もお疲れさん。今日は1日狩りは無しじゃ。ゆっくり休んでくれ!」


商人のサイも馬車から降りた。


「皆さん改めて本当にありがとうございました。皆さんのお陰で命を失わずにすみました。」


そしてサイは積み荷に入れていた箱を開封する。


「奇跡的に割れた容器は無かったので助かりましたね。皆さん、お酒の箱は奇跡的に被害が無かったようなので1人1本お持ち帰り下さい。」


「「うぉー!!」」


1人1杯は酒が飲めると思っていた狩人達は喜びの雄叫びをあげた。


こんな辺境な村で酒が手に入る機会などあまりない。


しかもとても高価。


それが各自1本持ち帰れる。


狩人達は喜びが爆発した。


1人1人に感謝の言葉を伝えてサイは狩人達に酒を手渡す。


酒を手にした狩人達はルンルンで各自の家に帰宅した。


「村長様とグイドさんとハルヒィさんはこちらをどうぞ。」


手渡されたのは果実酒。


ワインと呼ばれているお酒だ。


「いいのか?高いだろう?」


「村長様には救助に向かう決断をして頂きました。それが無ければ死んでいました。さらに言うならばグイドさんが魔物と出会って無ければ私の身が危ないと言うことも判らなかったのです。本当に助かりました。そしてハルヒィさん。適切な治療をありがとうございます。お陰で痛みに苦しみ続けることなく戻ってくることが出来ました。これは感謝の印です。」


「なんかすまねぇな。ありがたく飲むとするよ。」


「立ち話もなんじゃ。とりあえず3人とも儂の家で話をしよう。」


村長の家へと向かう。


「とりあえず命を失う前に間に合って良かったのぅ。」


「本当に助かりました。」


サイは頭を下げる。


「今回ばかりはサイも儂らもとばっちりだからのぅ。悪いのはあの領主の親族の誰かじゃ。」


グイドはあの時にすれ違った若者達を改めて思い出し怒りが込み上げてきた。


「あいつらが魔物を引っ張ってきたお陰でうちのラグナは死にかけた。あいつが偶々ワイルドボアを仕留めることが出来たから生き残っただけで普通だったら死んでるからな!」


サイはその話に驚いた。


「グイドさんのお子様はワイルドボアを倒したのですか!?」


やらかしたことに気がつくグイド。


睨む村長とハルヒィ。


「ま、まぁな。うちの子は天才だからな。剣でグサッと。けん?剣?あっ、俺の剣!」


剣と言う言葉でグイドは思い出した。


「やべぇ!この前買ったばかりの剣ぶっ壊したんだった。ミーナに怒られる。」


やっとの思いで買い直したばかりの新しい剣を壊してしまったことを思い出したグイドは顔色が悪くなっていた。


「この前の剣だって苦労して手に入れたんじゃなかったか?」


「イルガンが王都の商人の1人に頼んでやっと仕入れた剣だったからな……」


その話を聞いて考え込むサイ。


「グイドさん。もしよろしければ領主の町のナルタにうちの店の支店があるので剣を見に来ませんか?親父に説明して無料で差し上げますよ!」


「流石に剣までタダで貰うってわけにはいかねぇよ。友達価格で売ってくれ!」


友達価格って所で笑い合う。


「まぁ冗談はそれくらいにして今後についてじゃ。」


「じいさんはどうする気だ?」


「とりあえず面倒じゃが領主の所に行かないわけには行かんじゃろう。」


「領主かぁ……今の領主バカだからなぁ。会いたくは無い。」


「そんなもん儂らだってそうじゃ。」


「それじゃあ報告に行く際は私も一緒に同行しますね。」


「そうしてくれると助かる。儂らだけだと何を言われるか判らんからのぅ。」


そんな話をしていた時。


ドンドン。


「村長様居ますかー?」


幼い子供の声が聞こえた。


「ラグナのようじゃのぅ。ラグナや!父ならここにおるから入っておいで!」


村長様の声が中からそう聞こえたのでラグナは扉を開ける。


「おじゃましまーす。」


ラグナは村長宅に入ると父親たちのもとへ向かうのだった。

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