第49話

グイド達は遺品を回収すると商人の許可を取り馬車の中に積み込んでいく。


「粗方回収は終わったかのぅ。」


村長は辺りを見回す。


すでに日も落ち暗くなっている。


「とりあえずここで火を焚いて朝になるのを待つとするか。」


狩人達はテキパキと枯れ葉や枝を集めて火を焚く。


「飯は諦めるか。何も準備してねぇからな。」


グイドがそう語ると商人のサイから驚きの提案をされる。


「もしも食べられる様でしたら私の馬車を引いていた2頭の馬をお使い下さい。このままここで朽ちさせるなら食べて私達の血肉にしたいと思います。」


まさかの提案に驚く。


「いいのか?商人にとって馬って言うのは家族みたいなものだと聞いたことがあるんだが。」


「えぇ。大事なパートナーであり家族です。だからこそこのまま此処で朽ちていくのは耐えられません。だからこそ皆様にも食べていただき血肉となり生きた証を残して欲しいのです。」


「わかった。有り難く頂くとしよう。」


村長は狩人達に指示をする。


亡くなった馬達の遺体を確認すると、ワイルドボアの牙が突き刺さった跡がやや多くあるものの、特に食い荒らされたりなどはされていなかった。


馬達の遺体を捌く前に皆で感謝の祈りを捧げ、その後出来るだけ無駄なく食べられるように解体していった。  


「我等の血肉となる馬達に感謝を。」


「お前達の事は忘れない。今まで相棒としてありがとう。お疲れ様。」


食事前に再び皆で感謝を祈る。


解体した馬肉は焚き火の中に石を入れ熱した後に商人から提供してもらった油をたらし、石焼きで肉を焼いていく。


ジューッと焼ける肉の匂い。


空きっ腹にこの匂いはたまらない。 


狩人達は長時間の移動に備えて塩と木皿などを各自で持参していたので塩は焼いた肉の味付けに。


各自は皿を手元に置き焼けた肉を村長が振り分けていく。


そして改めて。


「いただきます。」


3度目の祈りを捧げて馬肉を頂く。


「馬の肉を初めて食べたけどさっぱりしていて食べやすいな。」


「そう言って頂けるとあの子達も浮かばれます。まぁ私も初めて食べますが……初めて食べる馬肉があの子達って思うと複雑な思いは有りますが…」


馬と言うのは本来とても高価なので食用に回すなんてことはしない。


軍事的にも商業的にもとても必要なものだから。


商人のサイと共に、出来る限り自分たちの胃袋に収めていくのだった。


「流石に2頭分はとても多かったですね……」


「ここまで肉を食べたのも久々だったが、とても美味かった。改めて我々の為に家族たる馬たちの肉を提供してくれてありがとう。」


狩人達全員でサイに向けて頭を下げる。


「気にしないでください。私はあなた達のお陰で命を救われました。そしてこの子達も朽ちて動物や魔物たちの餌となる前に私たちの血肉となることが出来ました。この子達の死も意味のあるものになったのです。こちらこそ本当にありがとうございました。」


そして改めて馬達の骨に向かって祈りを捧げる。


その後は狩人達で火の番を行いそして何事もなく無事に朝を迎える。


「魔物たちの襲撃は無かったな。」


「本来なら魔物などいないはずだったのじゃ。馬鹿どものお陰で森の動物たちもいい迷惑だったじゃろうて。」


「もとに戻るまでには時間がかかりそうだな。この森の狩場も一旦見直しか。」


狩人達はため息を吐く。


魔物が存在しなかったこの森はそれぞれ安定した狩場が存在していたので、新人たちの教育にぴったりの森だった。


それが魔物により荒らされたことによって動物たちが逃げてしまい、森が落ち着くまでは狩場の練習としては使えなくなってしまった。


「悔やんでも仕方あるまい。それじゃあ村に帰るぞ。」


村長が狩人たちに声を掛けて撤収する準備をする。


そして積める荷物は馬車へと積み込みが完了した。


「これを引っ張って帰るのか。」


馬車を引っ張って帰ることにため息が出る狩人達。


「皆さん、申し訳ありませんがよろしくお願いします。村に着きましたらお礼に積み荷のお酒を皆様に振舞いますので!」


お酒と聞いて気合が入る狩人達。


「お前ら、気合入れていくぞ!」


「「おう!」」


商人と村長を乗せた馬車を引っ張って狩人達は村へと帰還したのであった。

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