第45話
お昼ご飯を食べた後少しの休憩を挟んで再び森へ。
午前中とは森の雰囲気が違う。
「こりゃなんかあったな。獣達が息を潜めてやがる。」
「なんかピリピリしてる感じがするよ。」
なんだろう。
森全体が息苦しい感じ。
「ラグナ、こりゃ駄目だ。森を出るぞ。なるべく物音を立てるなよ。」
周囲を警戒しながらゆっくりと来た道を戻る。
プギャャャャー!
遠くの方で雄叫びが聞こえた。
「この声はワイルドボアだな。食料を求めてこっちの森まで移動してきたか?」
ワイルドボアってあの美味しいお肉か。
「流石にラグナには早過ぎる。とっとと森を出るとするか。」
先ほどとは違い急ぎ足で森を出る。
そして街道へ。
「ここまで来れば大丈夫だろ。」
「こっちの森にも魔物が来るなんてね。」
「こんなことめったに無いんだが……」
しばらく歩いていると後ろから走ってくる集団がいた。
「逃げろ!殺される!魔物だぁぁ。」
元々は高価であったであろう防具がボロボロになっており必死に逃げ惑う若者達の姿があった。
そして後ろからドッドッドッと何かが走って追いかけてきている。
「クソが!さっきのボンボン共がワイルドボアを怒らせてやがったんだ!だからあの森まで来てたのか。ラグナ走るぞ!」
遙か後ろの方から複数の足音がする。
必死に逃げるラグナとグイド。
でも9歳児のラグナには魔物から逃げるなんて酷なことだった。
すぐに逃げきれないと判断したグイドは街道を進むのを止めて森とは反対側の草原へ。
草原に身を隠す2人。
街道を爆走しているのはワイルドボアの群れ8頭だった。
そのまま街道を走り続けて先程のボンボン共を追いかけていくことを祈っていたものの……
2頭が突然走るのを止めて地面の匂いを嗅ぎ始めた。
「ヤバいな。気がつかれたかもしれねぇ。」
息を潜める2人。
6頭は既に走り去っている。
2頭のワイルドボアが徐々にこちらに近づいてくる。
「ラグナ、後ろに下がれ。」
ラグナは頷くと徐々に後ろに下がる。
そして……
「「プギャャャャー!」」
2頭がグイドに気が付くと物凄い勢いで走り出した。
「はぁぁぁ!」
グイドは風の魔法剣を発動すると2頭のワイルドボアに向かって剣を振り抜いた。
風の刃がワイルドボアへと飛んでいく。
風の刃は先頭を走るワイルドの額に直撃し片方の眼を潰すことが出来た。
しかしもう1頭は前を走るワイルドボアが盾のような配置になってしまいほとんど傷を負っていない。
「くそったれ!ラグナ、死ぬんじゃねぇぞ!」
迫り来る2頭のワイルドボアへとグイドは剣を構えて立ち向かっていく。
キン
ワイルドボアの牙と剣が交差する。
2頭目のワイルドボアがグイドのわき腹を突き刺さんと突撃していく。
「こんな所で死んでたまるか!」
交差しているワイルドボアを剣でいなすと身体にを横にそらす。
そして2頭目のワイルドボアの突撃をすんでの所でかわす。
グイドの横を通り過ぎていくワイルドボアの横腹に火の魔法剣で一撃。
1頭目のワイルドボアが剣でいなされた先に違う匂いがあることに気が付いてしまう。
そしてラグナはワイルドボアと目があってしまう。
「やべぇ!ラグナ、気が付かれたぞ!」
慌ててグイドが1頭目のワイルドボアに剣を振るうも走り出したワイルドボアには間に合わない。
「来た来た来た!やばい!」
初めての魔物との突発的な戦闘。
普段は冷静なラグナもこの時ばかりはパニックに陥っていた。
「落ち着け、ラグナ!」
パニックになっているラグナを諫めようとするもグイドの声はラグナに届かなかった。
前方には自分を殺そうと殺気をむけてくるワイルドボアが迫ってきている。
怖い、死にたくない。嫌だ!こんな終わりなんて嫌だ!
ラグナは無意識にネックレスを握っていた。
それは神界で出会った女の子に貰った石をネックレスに加工したものだった。
「ラグナァァァァ!」
今まさに魔物の牙に突き刺されんとしている
ラグナの耳元に声が聞こえた。
「男なのに情けないのじゃ。今回だけじゃぞ。」
魔物の牙で突き刺されると恐怖のあまり目を閉じてしまったラグナだったが一向に痛みが来なかった。
恐る恐る目をあけると不思議な光に牙が刺さり抜けずにもがくワイルドボアの姿が目の前にあった。
「えっ?なんで……」
「なんでではないのじゃ!はやくトドメをささぬか!」
耳元より女の子の声が聞こえる。
「えっ?」
驚き固まるラグナ。
「えっではないのじゃ!はようせい!」
慌てて目の前にいるワイルドボアに向けてガストーチソードをレイピア状にして頭に突き刺す。
ジュワッ。
肉が焼けた匂いと共に倒れるワイルドボア。
そして不思議な光が消えていく。
「全く、もっと早く倒して欲しかったのじゃ。」
この声はやっぱりそうか。
「君はあの時の女の子だよね?どうして……」
うぐっ。
変な呻き声が聞こえた。
「偶々じゃ。偶々地上界を見ていたらピンチなお主を見つけただけなのじゃ。」
「本当にありがとう。君のおかげで生き残ることが出来たよ。」
「全く世話の焼ける男の子じゃ。今後は気を付けるのじゃよ?」
「うん。わかった。もっと心も身体も強くなるよ。」
「ならばよろしい。父親がお主の元に走ってきてるのぅ。それならば妾は戻るとするのじゃ。」
「本当にありがとう。助かったよ。またね?」
「またね、なのじゃ。」
彼女のおかげで死なずに済んだ事に安堵と助けてもらった感謝を心から祈るラグナだった。
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