第46話

グイドはワイルドボアを1頭仕留めるとラグナの元へと駆けつける。


そして目の前の光景に唖然とする。


立ち尽くすラグナと倒れているワイルドボア。


「ラグナ、倒したのか……?」


「う、うん。倒したみたい。」


グイドはラグナが無事だった事に心から安堵した。


そして抱きしめた。


「父さん?」


「すまん、怖い思いをさせて。守りきれなかった。一歩間違えばお前が死んでいた。」


確かにあの子が守ってくれなかったら死んでたと思う。


「父さん、大丈夫だよ。」


父さんとハグしながら背中をとんとんする。


「女神様が守ってくれたから。怪我もしてないよ。」


父さんはポカンとした顔をしてる。


「め、女神様?」


「うん。女神様。僕には可愛い女神様がついてるから大丈夫。」


父さんは理解できていない顔。


まぁそりゃそうか。


天界に行きましたーなんて信じてもらえないしね。


「とりあえず無事だったから。それでいいんだよ。それよりもこれどうする?」


ラグナが自分が倒したワイルドボアを指で指す。


グイドはラグナが倒したと思われるワイルドボアを見る。


そして異変に気が付く。


何かがおかしい。


傷が無い。


「ん?これどうやって倒した?切り傷は?」


「ワイルドボアの眉間にガストーチソードをレイピア状にしてぐっさりと。」


「脳天直撃か。普通のレイピアじゃ折れてそんなこと出来ないんだがな。」


目の前にはラグナが倒したワイルドボアと遠くにはグイドが倒したワイルドボアの2頭。


「とりあえず持って帰ろうとは思うが……こんなでかいのも収納出来るのか?」


ラグナは手をかざす。


ワイルドボアが光に包まれて消えていった。


「昔みたいに倒れたりはしないから大丈夫。魔力だけは鍛えたからまだまだ余裕だよ。」


「大丈夫ならいいが。」


そして父さんが倒したワイルドボアの元へと向かう。


「父さんこれは………」


まさに斬殺死体。


身体には無数の切り傷。


首半分がだらんと切れている。


「はやくおまえの元に行かないとって思ってたから……」


それだけ慌てて急いでたってことだよね。


「と、とりあえず収納するね。」


斬殺ワイルドボアも収納する。


「とりあえず村に戻って村長に相談だな。」


現在地から村までは徒歩で1時間も掛からない。


そして村に到着。


今日の門番はハルヒィさんだった。


「お疲れさん。成果はどうだったよ?」


「それどころじゃねぇさ。それよりも変な奴らは来てないか?」


ハルヒィさんの目つきが鋭くなる。


「何かあったのか?今日は商人以外は誰も来てないが。」


「今日の門番は1人か?」


「いや。ヘルメスも居るが。どうしたんだ?」


「面倒事になるかもしれん。一緒に付き合ってくれ。」


ハルヒィは奥で休憩していたヘルメスに声をかけると一緒に村長の家へと向かった。


「じいさん居るかー。」


家の中から物音がする。


「なんじゃ。今日はラグナと狩りに行ったんじゃなかったのか?」


「狩りには行ったさ。ラグナが死にかけたけどな。」


その言葉に驚く2人。


「とりあえず家に入れ。詳しく話を聞こうじゃないか。」


村長さんの家に入る。


「ラグナは怪我は無いんじゃな?」


「怪我は無かったよ。危なかったけど。」


「それで何があったんじゃ。」


グイドは今日起きた出来事を村長とハルヒィに話をした。


「魔物を街道まで引っ張ってくるじゃと……不味いな。ハルヒィよ。今日来てる商人はまだ村の中に居るな?」


「ここに来る前までは村にいたと思うが。」


「すぐに商人を引き止めよ!」


ハルヒィは急いで村長の家から飛び出して行った。


「面倒事を起こしよったボンボンどもはどうなったのじゃ?」


「わかんねぇ。ワイルドボアが2頭こっちに来てからはどうなったのかわからん。」


考え込む村長。


そしてハルヒィさんが息を切らして戻ってくる。


「不味いことになった。商人が村から出て町へとさっき馬車で出発しちまった!」


「何じゃと!やばいのぅ。直ぐに人を集めよ!」


村長は村に居る狩人とハルヒィを広場に集めた。


そして集まったみんなに今日の出来事を話した。


「ボンボンどもめ!どこのどいつだ。」


「バカ共が!」


普段魔物狩りをしているものからしたらお遊びでやらかしたであろうボンボン共の行いはとても許せるものではなかった。


一歩間違えていたら仲間の命が失われていた行為。


魔物の擦り付けなんて以ての外であった。


「村を先ほど何もしらぬ商人が出発してしもうた。これより救出に向かう!よいな?」


「「おぅ!」」


村の狩人達と村長とグイドとハルヒィが村から出発していった。


ラグナはみんなを見送った後に母が待つ家へと帰宅した。


魔物の恐ろしさは身を持って味わったばかり。


流石に皆に付いて行けるなんて自惚れた考えは持って居なかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る