第32話

パチパチ。


流石備長炭。


なかなか着火しなかった。


父さんの魔法剣が無かったら着火出来なかっただろうな。


「やっぱり魔法剣って疲れるの?」


魔法剣で炎を纏わせて着火した後、父さんはぐったりとしていた。


「普通は魔法剣ってのは発動させても攻撃する一瞬だぞ?こうも長時間炎を出しっぱなしにするには向いてない。それならこの国の魔法の方が向いているだろうさ。」


魔法かぁ。そう言えば父さんはこの国の魔法って使えないんだろうか?


「父さんは魔法使えないの?」


「全く使えないってことはないんだが……ほら。」


流石、父さん。


無詠唱で炎を出した。


でも小さい……


「何でか着火の魔道具くらいの炎しか出ないんだよ。ちなみミーナもそうだ。」


「ほら。小さい炎しか出ないのよ。不思議よね。同じ人間なのに。」


「どういうこと?」


「この国で生まれた人間は何故か魔法の威力が高い。でもその代わりに魔法剣などの付与魔法は全く使えん。反対にうちの国の魔法使いは魔法剣は使えるけど放出系の魔法は駄目なんだ。」


「あとは、いろんな魔道具が有るでしょ?あの魔道具は海神国シーカリオン国の人間しか作ることが出来ないの。」


ん?何でだろう。血が関係?それとも地域特有の何か?


「海神国かぁ。一度だけ小さい頃に行ったな。」


「懐かしいわねぇ。確か伯爵家合同視察と言う名の旅行に行ったわね。」


「海神国ってことは海に関する国?」


「一応海神国って名前だからな。海に面した土地が多くある。あとはあれだなぁ。」


「あれって?」


「あの国は宗教国家って面も強い。海の女神である『マリオン』様を主神として崇めているな。」


海の女神かぁ。


創造神様が居るくらいだもん。きっと居るんだろうなぁ。


居る……?


もしかして国によって主神が違う?


その国の神様の加護によって各国の得意分野に差があったり?


「父さんの国には主神っているの?」


「ん?うちの国かぁ。うちの国はなぁ……」


「そうねぇ。神様って意味では違うのかしら。一応人間だった方だし。」


人間だった?


「もしかして、魔剣神エミルダス様?」


「そうだ。うちの国はエミルダス様が主神だな。」


「それじゃあこの国を主神は勇者?」


「それが違うんだよ。この国の主神は守護の女神『サイオン』様なんだ。」


サイオン?守護の女神?


「サイオン様はこの滅びに向かっている世界を救うために勇者ヒノを召喚した女神様って言われているな。」


勇者を召喚した女神様かぁ。


「ってことはやっぱり国によって主神って違うんだね。」


「言われてみればそうだなぁ。あとはこの大陸にある国と言えば救済国家ミラージュと鍛冶の国ガッデスと深緑の森アルテリオンの3つだな。」


「それぞれ勇者とその仲間達が作った国ってこと?」


「あぁそうだな。この大陸にある国家は6ヶ国だな。」


ん?6ヶ国?勇者とその仲間達は6人居たはず。


「ねぇ父さん。勇者と仲間達って全部で7人だよね?でも国は6ヶ国。あと1ヶ国はどうなったの?」


「勇者の仲間の1人、カサンドラだけは魔王討伐後に行方がぱったりと判らなくなったと言われているんだよ。」


みんなそれぞれ国を作ったと言う訳じゃないのか。


カサンドラ、魔王討伐後にどうして姿を消したんだろう。


魔王討伐と言う偉業を成し遂げたのに。


それとやっぱりそうか。


国ごとに主神が違う。


詳しいことは判らないけど加護みたいなのがきっとあるんだろう。


その国の特色が現れるように。


「それじゃあ他国の人と結婚して出来た子供は両親の両方の得意魔法でも使えるの?」


「一応何人か他国とのハーフの子供は見たことあるが……みんな両親のどちらか一方の得意魔法しか使えなかったな。」


うーん、わからん。血の濃さ?それとも生まれた国によって?


「まぁ何にせよ、大なり小なり得意不得意は有るってことよ。」


そうなると俺はどうなるんだろう?


この国どころかこの世界の人間って訳じゃないし。


むしろよくよく考えたらこの身体はどうやって作られたんだ?


むしろ俺は人間なのか?


急に不安になってきた。


「どうした?顔色が良くないぞ?」


「備長炭召喚スキルを初めて使ったからそのの疲れが来たのかも。」


「また魔力切れになりそうなのか?大丈夫か?」


心配掛けちゃいけないな。


「大丈夫。ちょっとだけ疲れただけだよ。」


「本当に大丈夫?無理はしちゃ駄目よ?ほら、こっちにおいで。」


そう言うと母さんは俺を抱き寄せて膝枕をしてくれた。

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