第21話
『スパイスを召喚しますか?』
前世の時にキャンプ飯を自宅で作っていた時に使用していたスパイスが有ればなぁって願ったら頭のなかに流れてきた謎のメッセージ。
流石に怪しすぎるだろ!?
仮に今召喚した場合……
もしも……もしもだけど本当にスパイスが出ちゃった場合は隣に座ってるイルマに絶対怪しまれる。
最悪周りに言いふらされる危険性もあるな。
うーん……どうしたもんか。
「ラグナどうかしたか?さっきから難しい顔をしてるよ?」
「ん?……うーん。まぁ。」
なんて説明するべきか……
「やっぱりラグナは賢いな!この肉美味しいから魔物のことを考えてるんだろ?」
「ま、まぁね。これだけ大きいのにまだ子供って言ってたからさぁ。大人のサイズってどれだけ大きいんだろ?とか思ってさ。」
イルマが鈍感で助かった……
けどこの流れは危険だから修正しなきゃ。
「大人サイズの魔物見てみたいよなぁ。どうにかして見に行けないかな?」
でた!!無茶ぶり発言。
「それは流石に無理。イルマのお願いでも絶対無理。」
「えーっ。ラグナならどうにか出来ない?」
やっぱり言い始めちゃったか。
「魔物だけはどうにもならないよ。僕達はまだ子供だよ?子供でどうにか出来るくらいならこんなにも立派な防壁が村を囲ってるわけ無いじゃん。」
「そっかぁ。流石にラグナでも無理かぁ。無理かなぁ。」
そんな可愛い顔でチラチラ見てきても無理なものは無理!
「はっきり言うよ。野生の動物でも僕達じゃ死ぬよ?オオカミとかに襲われて大丈夫だと思う?」
イルマが深いため息を吐いた。
「そうだよなぁ。オオカミでも大人達が怪我したり死んじゃったりするからなぁ。もっと大きくなるまで諦めるかぁ。はぁ………」
ため息ばっかりだけどこればっかりは本当に無理だよ。
「おーい、イルマー!!」
「あっ!親父!」
イルマの親父さんが来たけどどうしたんだろ?
「ラグナ、誕生日おめでとう。ちょっとうちのお転婆借りていくよ。イルマ、母さんが呼んでるけどなんかしたんか?母さんの目つきが怖いんだが。」
「何も今じゃなくたっていいじゃん。!はぁ、ちょっと怒られてくるわ~」
イルマと親父さんが離れていった。
ラグナは周りを見渡すと俺達2人の誕生日のお祝いという名目でハシャいでる大人達が見えるだけ。
近くに母さんが居るから一声かけてちょっとだけ家に戻ってみるか。
「母さん、ちょっと忘れ物しちゃったから家に取りに行ってくるね!」
「うふふ、気をつけていくのよ~。」
母さんだいぶ酔ってるな……
まぁいいか。とりあえず急いで戻って実験だ!
ラグナはそわそわしながら家へと急いだ。
誰かさんに見られてるとも知らずに……
「家に到着っと。今は周りに誰もいないし……自分の部屋でやってみるか。」
『スパイスを召喚しますか?』
ラグナはゆっくりと息を吐いて気持ちを落ち着かせた。
よし!
「スパイス召喚!」
………ん?
何にも起こらない…?
そう思って手を見てみると………
ずっと昔にテレビで見た手から砂を出していた人みたいに手のひらからちょっとだけパラパラと何かが地面に垂れ流しになっていた。
「ストップ!ストップ!」
すると手のひらから垂れ流しになっていた謎の粉が止まった。
えっと……
てっきり入れ物に入って出てくると思ってたんだけど……
下に零れた粉を恐る恐る確認してみる。
「この色ってやっぱりスパイスだよな……?それにこの匂い。」
床に零れて少し不衛生かもしれないけど……
指につけたそれを舐めてみる。
「やっぱりそうだ!しかもこの味は『ほり○し』だ!まじで!?この世界でも食事に諦めなくて済むぞ!」
ドンドン!ドンドン!
突然、家のドアを誰かが叩いている。
「やばい。急いで隠さなきゃ!どうしよう、これ。」
わたわたするラグナ。
「ラグナ居るんだろー!入るぞー!」
「ヤバい!イルマがなんでうちに!これどっかに収納しなきゃ。」
『収納しますか?』
嘘だろ!?
でも時間がないし。
「収納!」
小さい声でそう唱えると床に落ちていたスパイスがぼんやりと消えていった。
そして、家のドアがあいて部屋に向かって来る足音。
「ラグナ居るんだろ~。って部屋に居たのか。」
「急にうちに来るなんてどうしたの?イルマ。」
「なんかラグナがウキウキしながら歩いてたから母ちゃんから逃げてきた。」
見られてたのか。
「それにしても、なんかラグナから美味そうな匂いがするな。」
ヤバい。ちょっと匂いが残っちゃったかな?
「そう?気のせいじゃないかな?」
「それと。なんで急に家に戻ったんだよ?」
やっぱりそう思うよなぁ。どうやって誤魔化すべきか……
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