第14話
村長とグイドは門番が普段待機している休憩所に到着した。
「ハルヒィ居るかー?」
休憩所から小柄な男性が出てきた。
「なんでぇ、グイドじゃねぇか。まぁ、あれだ……今回は残念だったが気を落とすんじゃねぇぞ………」
「あぁ。心配かけてすまんな。ただな…本当なら素直に落ち込んでる予定だったんだが……」
「どうした?なんかあったか?そういや村長も一緒だしな。」
グイドと村長は昨夜起きたことをハルヒィに伝えた。
「なんだそりゃ。冗談じゃ……ねぇみていだな?」
「冗談みたいなことが現実に起きてるんだ。それでなんだが……夕方から朝にかけて門が閉まったあとに人が近寄ったりしなかったか?」
「いや……門の周辺には誰も居なかったと思うぞ?」
やはり手掛かりは無し。
じゃあいったいあの赤子はどこからどうやって家の前まで来たんだ……?
「そうか……昨夜、突然ドアが揺れて開けたら赤子だからな……普通に考えたら意味がわからん状況だよ。」
「昨夜か……うーん。」
そう言うとハルヒィは少し考え込んだ。
「まぁ関係は無いと思うんだがな……」
「なんかあったのか?」
「昨夜だが一回だけ不自然に風が一瞬だけ強く吹いたんだよ。しかも多分上から下に向かって不可解な風が。」
確かに上から下へ風が吹くなんて不可解だ。
「多少な違和感と言ったらそれくらいだな。本当に一瞬だったから」
その話があの赤子と繋がるとしたら。
あの赤子は空から地上へと降ってきたと言うことに……
しかもわざわざ赤子を失い悲しんでいる家の前まで……
「いや……現実感が無いな。赤子が空から降ってくるなんて。」
「突然現れた赤子はどんくらいなんだ?1歳くらいか?」
「いや……本当に有り得ないんだが……産まれたばかりの赤子だと思う。」
産まれたばかりの子が空から降ってくる?
そんな神様の使いでも有るまいし……
使いでも……違うよな……?
「どうした?表情をコロコロかえて。」
「いや、バカな妄想を一瞬しちまった。空から赤子が降ってくるなんて神様の使いでも有るまいし……」
「確かにそんなこと有るわけ……無いよな……?」
「あぁ。多分大丈夫だろう……神様の使いが赤子とは言え、小便を盛大に漏らしたりおっぱい飲んでゲロっちまうわけ無いだろ。」
「確かにそれなら違うな!神様の使いともある存在がそんな醜態さらすわけ無いわな!」
「違いねぇ。そんな人間みたいな赤子が使いなわけはねぇわな!」
そう話ながら笑う3人。
「くちゅん。」
「あらあら。何回も湯で身体を洗ったから冷えちゃったかしらね?」
3人に笑われている当の本人は小さいくしゃみをして若干の寒さと格闘していた。
その後、門番のハルヒィと別れた2人は赤子の元へと向かって歩いていた。
「本当にどこの誰の子だ?」
「わからん。本当にわからないんだ。突然だったから。」
そして2人は家に到着した。
「今帰ったけど開けて大丈夫か?じいさんも一緒にいる。」
中から人が動く音。
そして扉が開く。
「お帰りなさい。そして村長さんもいらっしゃい。」
「押し掛けてすまんな。それじゃあ失礼する。」
家の中に入り赤子の元へ。
「湯で綺麗に洗って拭いていたらそのまま寝てしまったわ。」
赤子を覗く村長。
「黒髪か。この辺りだと見たことが無い髪色だ。」
「確かに。黒髪なんて初めて見たな。」
沈黙に包まれる室内。
「それで……お前達はこの子をどうしたい?」
「それは……」
「どこの誰の赤子かもわからんのだぞ?面倒事かもしれんのだぞ?」
「それはわかっています。でもこの子をこのままには出来ませんわ……亡くなった赤子のかわりって訳ではないんです……この子を立派に育てなきゃって見ていて感じたんです。」
「感じたか……本当にこの赤子は神様の使いではないだろうな?グイド、お主も良いのか?この子を引き取ると言うことに。」
「あぁ。この子とミーナを見て決めた。俺達がこの子を育てていく。」
真剣な目つきの夫婦を見てため息を吐く村長。
「この子は突然現れた。それはわかってるな?本当に面倒事があるかもしれんのだぞ?」
「わかってます。覚悟の上です。」
「わかった。何とかしよう。明日の昼、村に住む住人を集めて話をする。」
「ありがとうございます。村長さんの決断に感謝を。」
「やめぃ。」
夫婦を真剣な目で見つめ返す村長。
「この子を育てることは了承した。しかし……お主等には辛いかもしれぬが覚悟してもらうことがあるぞ。」
ピリッとした空気が部屋中に包まれた。
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