第13話
「じぃさんいるかー?」
先ほど奥さんと別れた男が村の中で一番立派な家の扉のドアを叩いていた。
何度かドアを叩いているとようやく扉が開いた。
「こんな朝っぱらからなんじゃい、グイド。ゆっくりと寝ていたかったんだが。」
「もう日は出てるだろうよ。それよりも聞いてくれ!」
グイドと呼ばれた男は昨夜に起きた事情を村長に説明した。
「言いにくいことだが…それは本当か?子供を失ったショックで気を患ったわけじゃなく…」
「こっちだって驚きしかないんだ。何故うちの前に居るんだって。」
「ちとお主の家に行くぞ。寝起きじゃから支度するから待っとれ。」
確かに口で説明しても信じてもらえない状況だった。
自分でも同じ立場なら疑っていたと思う。
やっとの思いで授かった子が産まれる直前に村で唯一の産婆を領主に連れて行かれた。
その状況で産気づいてしまった。
しかも難産。周りには素人のみ。
結果、元気な我が子を抱くことが出来ずに終わった。
そして昨日、悲しみを胸に亡くなった我が子を自分たちの手でお墓に…
昨夜は悲しみに包まれていた。
そんな時、何故か家の前に赤子が突然現れた。
これはなんの嫌がらせなのか。
赤子を見た瞬間、そう思ってしまった。
だってそうだろう?
自分達の赤子を失った日の夜に、何故か家の前に赤子が放置されて居るなんて。
こっちは失ったばかりなんだぞ?
何故置いていった?
うちでは手に入れることが出来なかった赤子をわざわざ放置していったあの子の両親は何を考えてる?
「じぃさん。ちょっと気がついちまった。」
「もうちょっとまて、後少しで着替え終わるから。」
「なぁじぃさん。家の村に子供が産まれそうな家族って……うち以外に居たか?」
「ふむ……確かに考えてみたら……居ないのう……」
「だよな。キースのとこが産まれたばかりであとはうちだけだったはず……」
村と呼ばれているがここは辺境の開拓村。
眼前に広がるは魔物の大森林。
魔物の被害を抑えるために防壁だけは領主が魔法使いどもに作らせたので無駄に立派な物が佇んでいる。
村の入り口は森側と近隣の村側の2ヶ所のみ。
森側の入り口は通常は閉めたまま。
近隣の村側のみ朝から夕方まで開いているがそれ以降は閉じている。
うちの村に侵入は中々厳しいはず。
それも赤子を抱えて誰にもバレずに侵入など……
過去に居たと言われている、空を自由に飛んでいたらしい賢者様以外不可能ではないだろうか。
そうしたらあの子はいったいどこから現れた……?
「確かに不可解なことばかりだ。お主の家に行く前に門のとこに行くぞ。まだ門番の朝の交代の時間では無いはずだ。」
「昨夜の担当はハルヒィだったはず。」
「あやつなら異変を見逃すわけはないか。元はBランクの冒険者だったのだからな。」
村長とグイドは謎の赤子に会う前に門番をしているハルヒィの所へと向かって歩いて行った。
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