初心者キャンパーの異世界転生 スキル[キャンプ]でなんとか生きていきます。

奈輝

プロローグという名の物語。

第1話

「やっとだ。やっと念願のソロキャンプ!」


俺は社会人1年目の18歳。名前は春日井かすがい翔弥 しょうや


最近始めた趣味はキャンプ。 


もっとも小さい頃から親に連れられてよくキャンプをしていたが、内心イヤイヤだった。


何故イヤイヤだったかって?


だって当然じゃないか。


やりたいゲームも出来ない。


テレビも見れない。


夏は暑くて虫がいる、冬は寒すぎて苦行。


なんで自分からこんな苦しい思いをしなきゃいけないんだと何度も思ったが、一度も父親には言えなかった。


だってあんなに楽しそうにしてる父親のハートを折ることなんて絶対出来ないじゃないか。


俺はちゃんと空気を読める子供だったんだよ。


しかも、父親は出張だらけで普段は一緒に居られないからその分濃密になるのは仕方ないんだ。


しかしまぁ、キャンプで唯一好きなことがある。


それは…


たき火で作るご飯。


飯盒で炊くご飯って雰囲気もプラスされてめっちゃ美味しく感じるから。


こんな感じで小さい頃はキャンプにはよく行っていたよ。


小学校卒業と共に行かなくなったけどね。


部活で忙しくなったのとやっぱり…


思春期になって親と2人で行くのが恥ずかしくなったから。


何故こんなにもイヤイヤだったハズのキャンプが好きになったか。


きっかけは動画サイトでみたキャンプ動画だった。


芸人さんのキャンプ動画でたき火を見ていたら少し気になってしまった。


そしてその芸人さんが言った一言がきっかけだった。


「キャンプって自由なんだよ。何したっていいんだ。やりたくなければ、やらなければいいし。やりたいことやればいいんだよ。」 


あぁ。こんな緩い感じでいいんだ。あれやらなきゃ、これやらなきゃなんて必要ないんだ。


やりたいことだけやればいいのか。


そして気がついたらどっぷりとキャンプ動画にハマってしまった高校3年生。


就職先もね…


これだけハマってしまったら影響されてしまうのも仕方ないよね?


元々は物を作るのが好きだったので大手の建築関係の会社に就職を目指していた。


何度か会社見学で伺った会社も数社ある。


うちの会社の面接で待ってるよと言われたのも一度ではない。


それなのに気がついたらね…


キャンプ道具製造メーカーやら販売店やらに履歴書を片っ端から送りつけていた。


担任には何度も説得されたけど…


もう無理なんだよ。


キャンプに関わる仕事がしたくて仕方ないんだよ。


母親は大激怒でめちゃくちゃ怒られたけど。


「キャンプブームなんていつかは下火になる。その時に会社の経営は大丈夫なの?大手の建築関連企業の方が安定しているじゃない!」


まぁ気持ちはわからないでもない。


父は笑って許してくれた。


やりたいことをやればいいよと後押ししてくれた。


それを聞いた母には燃料を投下したようなものだったらしい。


2人して仲良く正座で怒られた。


そして、冷たい冷め切った眼で母の後ろから見てくる妹。


母が立ち去ったあとに妹はゆっくり俺と父の2人のそばにきて言った一言。


「揃いも揃って状況にすぐに流される、情けない男達ね。」


中学3年生の妹に罵倒される男2人。


もの凄くね…


心にグサッときたね…


しかし、我が家の女帝2人が立ち去った後に父が言った一言。


「もしも就職出来たらたき火台とかの道具。格安で頼むわ。」


この人スゴいな。あれだけ言われても、怒られても全くブレない。


「就職できたらね。成績アップに貢献よろしく!」


まぁ怒られたからと言って就活先を変更するとか、俺も全く考えてないけどね。

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