Ep.2 フィクションと現実の狭間
彼が外に出ると、さっきまでの空が嘘のように暗くなっていることに気づいた。
「これは。すごいなぁ」
その時、遠くからスタタタと走ってくる影が見えた。
「奏多!」
そういうと由依は彼に飛びついた。
地球滅亡を目の前にして、一瞬だけ日常が帰ってきた瞬間だった。
「由依」
彼はそっと彼女を抱きしめ、この先のことを考えている様子だった。
「由依。とりあえず部屋にはいんな」
「お、おすっ」
部屋の中は外の暗さを感じさせないほど明るく、そして穏やかだ。
彼は何を思い立ったか紙とペンを持って彼女の隣に座った。
「何するの?」
彼女が聞くと「助かる方法考える」
と自分の世界に入ってしまった。
彼は一つ一つ今できること、そして助かる可能性を考えて紙に書き出していた。
しかし、どれも現実的だはなかったようだ。
「ごめん由依。僕の頭じゃ何もできないらしい」
彼は申し訳なさそうに彼女を見た。
「そんなことないよ。私にはわけわからんし、何がどうなってるのかもさっぱり。でも、最後の瞬間かもしれないこの時をあなたと過ごしたかったの」
彼女は今にも泣きそうな顔で答えた。
「だから最後は、思いっきり楽しいことしよ!」
そういうと彼女は、テレビの横に置いてあったゲームのコントローラーを二つ手に取り、片方を彼に渡した。
「それもそうか」
現実を全て諦めようとしていた彼だったが、彼女が気づかせてくれた日常によって、最後までやり通すことにしたのだった。
そして、二人が今まで楽しいと感じてきたことを一通りやりきり、さっさと眠りについたのであった。
地球滅亡まで──あと1時間。
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