虚空世世

@Sutayasu

序章 虚の世

一組織が入るには小さすぎるような家の部屋で俺は目を覚ました。

部下とも家族とも言える侍たちの声で。そして目覚まし時計の代わりに入ってきた果報は、「パラレルワールド移動装置が完成しました!」

ついに完成したのか。パラレルワールド移動装置。夢見た異世界を正夢に変える科学の結晶。それは同時に、俺たちの科学の結晶でもある。

「漢透兄ちゃん〜」と泣いているのは実の弟である灰芒粋明。なんで弟なのにフルネームが思い浮かんできたのか。俺は朝ごはんも食べず、弟とともにその機械に乗った。試し乗りのつもりだった、しかし次の瞬間には、奇妙な空間に放り出されていた、機械とともに。辺りに満ちる、白と青のコントラスト。光の夜景の中で俺たちは2人。ここはどうやら未来のようだ。辺りを歩く前にひとつ気づいた。「パラレルワールド移動装置がない!」俺は思わず叫んだ。郷に入っては郷に従えということわざがあるが、この仕打ちはあんまりにも酷い。だが、郷に従ってこうなったのならば、郷に問題があるはず。この世界を虚の世と名付け、この世を知るため歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る