結婚契約

シヨゥ

第1話

「結婚をしたくない理由?」

 におわせ続けて早半年。ついに彼に問いかけてしまった。

「気づいていないわけないでしょ?」

「そりゃあ、まあねぇ」

 彼は苦笑いをする。

「だからその理由を教えてほしいの」

「理由か……男らしくとか女らしくとかそういう点がまず1つかな」

「らしさ?」

「そう。告白をするのは男からとかそういう風潮? みたいなの。別に女性からの告白でもいいじゃないと思っている」

「つまり私から告白したらいいの?」

「急ぐのであれば。僕はいつでも受け入れる態勢は整えているよ」

 その答えに唖然としてしまう。この半年間何だったのか。

「あとは結婚という制度についての疑問かな」

「制度についての疑問?」

「そう。男女間の身分を縛る契約なわけだろう?」

「そうだね」

「そんな重要な契約を一生涯続けるわけだろ? しかも契約した当初の内容のまま。そんなの契約内容と実態が合わなくなる。だから契約更新の機会がない結婚制度を利用していいものか、と考えてしまうんだよね」

 慎重な彼らしい意見だ。

「だから結婚をするなら婚姻届けだけじゃなくて、僕と君で契約書を交わすべきかなと思ってさ。ずっと考えているんだけどまとまらなくてね」

 そう言って彼は1枚の紙を見せてくる。言葉の通り作りかけの契約書。

「夫婦になったら互いの人生の責任を半分ぐらい負うとは思うけどさ。やっぱり君は君で僕は僕だ。互いの人生を守るためにしっかりしないとね」

 そう言って書類を引っ込める。

「僕はこの契約書が満足のいく出来になった時、君に告白するよ」

「そっか。それなら待とうかな」

 納得してしまって焦っていた気持ちが落ち着いてしまった。

「そう?」

「うん」

 だって結婚する気持ちがあるのだから焦る必要はないのだから。

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結婚契約 シヨゥ @Shiyoxu

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