毒親と呼ばれて

御法川凩

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三歳までの君は何でもかんでも否定ばかりだった。

何をするも『嫌』

時々、君が望むようなこと言って確かめた。

それも、答えはNO。


〝あまのじゃく〟

もしかしたら、そう呼ばれるものだったのかもしれない。


その代わり、兄の言う言葉は否定しなかった。兄と同じもの、同じ方向。兄の言うことを良くきいた。

常に兄のそばに。同じ者を選択するし欲しがった。

大きくなるにつれ、少しそれがなくなった。けれど、自分の意見を言わなくなってしまった。

そして、同じものを選ぶ傾向は他のみんなから外さないようにすることに置き換わった。

保育園の発表会でも出来るだけ目立たないよう、けん玉のすご技を披露してみせたとき、まるでいけないことでもしたかのようにまわりのみんなに謝っていた。

器用にこなす兄の元で、そういう控え目なそぶりも自然に見えた。


そんな君は流行りものを好み、何それかまわず『嫌』と言うことはなくなった。


私にはそんなのが普通、とか当たり前のように見えた。


【君・観察結果】


保育園    常に嫌

小学校    高学年、自我が発動

中学校    常に嫌

高校     同じ目的では意見は合うが、それ以外は水と油

大学     驚くほど水と水。


大学生の君は、少しも損をしたくない人間となった。

良い情報は何でも吸収する。そして、根拠のない話は耳を傾けない。


だから、「普通は」とか「だから結局」とか「みんなそう言ってる」という言葉は特に嫌がる君。

君にわかってもらえるような理論立ての話は私はできない。

だから、いつだって感情がそれを超えてしまう。


『過去の良いは今の最善ではない』


そのことは十分理解してるよ。


そのうえで、話の一つとしてきいて欲しい。


少なくとも君を支配しようとは思っていない。だから、私の不遜な性格まで吸収することはしないでくれ。

私は現在の少数なんだ。どうか真似しないで。


君への愛は、もっとも遠いところで良いと思っている。

だから、私の中にある未完の子供は君を愛しているし、穏やかでいたいんだよ。


どんな風にみえるか、みえているか、重要じゃない。


好きなことを好きなだけ君はすれば良いし。

それが正解であって、答えもない。


私の記憶の中の両親に、想いのたけを伝えよう。

辛かった

こうして欲しかった

って。


もう同じ事を繰り返したくないんだ。


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毒親と呼ばれて 御法川凩 @6-fabula-9

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