キミの1番になりたいだけ
2号
第1話 敗北の少年
———続いてゴールするのは、杉並中の
陸上競技場内に実況アナウンスが響き渡る。
なんだ、また俺の負けか。
本日最終種目、愛知県大会中学1年男子3000メートル。
1着でゴールしたのは、同じ中学の
ゴール後、俺はグラウンドに仰向けに倒れ込んで6月の澄んだ青空を見上げた。
つまんねー。
何がつまんねーって?
俺の好きな女、
なんだよ、タオル渡すくらいで顔赤くしちゃって。
世奈にとって、いつも俺は2の次。
俺の方が、陸より長い付き合いだろ。
…幼馴染として、だけど。
「晴琉、すごいじゃん!今日は名前のアナウンスまでされてたよ!」
世奈はようやく陸から離れ、俺にタオルを渡す。俺より少しだけ身長が高くて、中学1年にしては大人びた顔立ち。走りやすい様に束ねたポニーテールのおかげで垣間見える
「アナウンスされたって12位だ。表彰台にすら上れやしない」
「でも、春の県大会から5つも順位上げたじゃん。まだまだ中学1年なんだから、3年になる頃には陸とワン•ツーフィニッシュも夢じゃないね!」
「次は陸に勝つ」
そう言って陸に視線を向ける。
あいつは俺なんか見てやしないけど。
世奈は毎回試合の度に褒めてくれる。
でも、そんな世奈自身は走り高跳びで小学生の頃から全国大会に出るほどの実力だから、なんか複雑な気分になる。
俺だってほんとは全国大会でバンバン結果出して、陸も倒して、カッコいいところを世奈に見せたい。
世奈や陸が見た事ない景色を見て、自信をつけたいんだ。
いつか絶対そんな日を迎えてやる。
それができたら俺は、世奈に告白するんだ。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
試合会場からの帰り道。
家までの方向は同じだから、世奈と2人で歩いて帰る。
「そういえば晴琉って、なんで急に長距離やろうと思ったの?」
世奈は俺の顔を覗き込み、急にそんな事言い出した。
そんなにマジマジと見るなよ、恥ずかしい。
俺が長距離走を始めたのは小学6年の春。
始めた理由は、隣の小学校で長距離走がめちゃ速い有名人がいて、世奈がそいつの事が好きとか言い出したからだ。
その有名人が陸だった。
俺も足さえ速くなれば、振り向いてもらえるかと思って始めたんだ。
今思えば相当バカな理由だわ、全く。
俺には全く才能がなかったし、校内のマラソン大会では毎年ビリ走ってたんだから。
俺は世奈から目をそらした。
「ないしょー」
「えー、いいじゃん、それくらい教えてくれたって」
世奈は頬を膨らませる。
「いつか教えてやるよ」
なんで始めようと思ったかなんて、世奈に言えるはずもない。
いや、もしここで言ってしまえば、世奈は多少は俺のこと男として見てくれるのか?
まあそうだとしても、タイミングは今じゃないな。
家に帰ったら、俺は着替えてまた外に出た。
これから自主練だ。
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