勇者に恋をしたモブな子爵令嬢、家を追い出されたので勇者を探し出して添い遂げますわ。~勇者は、長くて白い髪が特徴の美少女ですが。なにか?~
第13話 ゴブリン討伐完了で依頼達成。わたし、やらかしてしまいましたですわ。
第13話 ゴブリン討伐完了で依頼達成。わたし、やらかしてしまいましたですわ。
「おい、これは俺たちの依頼だっ。無印が勝手に出てくるなっ!!」
「そうですっ、私達は勇者グレンのパーティー……意地ってものがあります」
「うん、依頼横取りみたいになっちゃう」
あぁ、依頼絡みのやつかぁ、わたしはてっきり――――。
シエンを除くグレン達3人が私に突っかかってきて「貴様っ。無印の分際でいい気になりやがって」とか怒号を掛けてくるかと思ってた。
ここに来るまで、ランクが無印の私をまるで落ちている石のような目で見てたのに、今はこの3人……いやシエンも私を見る目が変わったような。
「依頼なら、早く片付けてくれ。また発生したら今度は」
ナディアの言葉に、勇者グレン達はゴブリンジェネラルが居た所より少し奥へと向かっていった。
私とナディアも後を追うが、その道中何故かシエンと魔法使いのフレアに、挟まれる。
「ちょっとぉっ、フレアっ」
「いや、マリベルと魔法の話がしたい……から……シエンはあっちに」
「私も、マリベルちゃんと補助魔法の話がしたいのよ」
「私の攻撃魔法が先……」
私を挟んで言い合うのはやめて欲しいが、そんな事言えるような状況でないの。剣幕が激しいのよシエンとフレア。
だけど、シエンのたわわな胸が柔らかくて癒されるし、フレアの少し硬めのも落ち着くのよね。
まるで、腕は心地よいそよ風が流れる草原だけど空は雷雲って感じねぇ。
森の奥に、数匹のゴブリンが残っていたが勇者グレンとエンレイが、あっさりと片付ける。
「ゴブリンの巣穴かっ」
「ちょっと、フレア! シエン! 2人ともマリベルにくっつき過ぎ。仕事して」
騎士のエンレイが怒鳴る。
フレアとシエンが、残念そうな顔で離れていく。しかし何故かエンレイは2人を羨ましそうな目で見ていたのよね。
すると、肩を叩くナディアの安堵の顔。
巣穴に入るとフレアの魔法で周囲が明るくなる。
警戒をしながら先に進む。
1本道だった。
奥に広い部屋があり、その中心におぞましい気配を立ち込める黒い沼がある。
「魔障の発生源だな」
「いつ見ても不快な気持ちになる」
「うん……グレン早く」
勇者グレンは魔障の発生源に向け手をかざし何やらブツブツと。
ユラユラと揺らめく白い炎がグレンの手から放たれる。
その白い炎を、発生源へと投げ込むと、魔障を焦がす大きな火柱が上がり、跡形もなく綺麗さっぱりに魔障が消える。
「魔障が炎で消えたわ」
「あれが、赤の勇者が使う浄化の炎【聖炎】」
「まぁな。少しできる無印女とは違う所知っておけ」
私の肩を軽く叩くグレンは、そのまま歩いていくとエンレイやフレアとシエンも私の顔を物欲しそうな顔で見て、グレンの後を追う。
「なんなの……私の顔に何か付いてるってぇの?」
「マ、マリベルが――――可愛いからじゃない?」
「はぁっ! 貴族とのパーティーで、結構酷いこと言われた私がぁ?」
「まぁぁっ、私は可愛いと思うよっ」
「ナディア、おちょくらない」
少しドギマギするナディアは頬を赤らめて言ってくる事に何の疑問も持たない私は、グレン達の後を追い、この森を出る。
何故か帰りの馬車は、女4人囲まれ有益な情報を得る事なくたわいも無いが、尽きることの無い会話が繰り広げられていた。
◇ ◇ ◇ ◇
クルエールの街に到着する勇者グレン達と私とナディア。
馬車の代金は既に払い済みな為、問題なく私たちはそのまま冒険者組合へとたどり着く。
赤の勇者グレン達は、そのまま真っ直ぐカウンターへ。私とナディアも付き添うかのようにカウンターに向かう。
「……確かに、達成です」と受付嬢が微笑みながら応えると私達と入れ替る。
後ろにやり取りを眺めるグレン達。
さぁ、私の冒険者としてランクアップの時間よっ!!
ゴブリンをめっちゃ倒した、アーチャーも倒した、メイジも、それにジェネラルも倒したのよ。この功績一気に『B』行っちゃうんじゃない?
どういう仕組みか分からないけど、冒険者登録証を見せると受付嬢は装置のような物にはめ込み確認している。
「終わりました。凄いですねっ!!」
「いやぁ、それ程でもぉ」
「凄いですよっ、ナディアさんっ」
「ん?」
「へっ、わたし?」
「はぃっ、まさか魔障を浴びたゴブリンジェネラルを倒してしまうとは」
「あぁ〜。あ、ははははっ」
なんでナディアだけ? わたしだって弱体化させて手助けしたんだよっ!! それに魔法でメイジもアーチャーも倒した。
視界が少しぼやける。
その目にナディアが、困り顔。
「受付の、マリベルはっ? ゴブリン倒したの見てますよっ」
「証に倒しているんですが……魔法で――――」
「それって……」
どういうこと?
困惑する受付嬢とナディア。
「ええ、登録の時に魔法が使えると登録してないから、証に実績として載らず……」
「これって!?」
「ええ、ナディアさんはランク現状維持です。マリベルさんはランク付かないです」
受付嬢は、満面の笑みで応える。
断言した。完全に文句言っても対応しないという笑顔だ。
そもそも登録時に魔法が使えると……。
うる覚えで憶えてないし、時間も経っている。
すると、後ろから耳障りな笑い声が入ってくる。
「まさかぁ、あんなすげぇ事してランク上がんねぇとは!」
腹を抱えて笑う勇者グレンに対し、エンレイやフレアにシエンは驚きと哀れみの目。
3人ともそんな顔しないで……むしろ、グレンのように笑って――――というか、私のおかげでお前は助かったんだろうよぉっ!!
私は、殺意の籠った目でグレンを睨む。
大声過ぎた笑い声が、徐々に静まっていく。
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