第3話 そんなに追い出したいのですね。私は私の心のままに決断させていただきますわ

 あれから3年、私は15となり成人になった。

 そして、決断する日が迫る。

 兄のフォクスは領主様からの依頼で魔物討伐へ出向き、近いうちに家に戻られるとか。そして姉のメリアも王都からの申請で一時的に政務をしに行っているそうなの。

 私が断言できないかというと、少し前メイドのアンナから聞いたからだけど。

 王都から来た剣術と魔法の家庭教師だけど、学ぶことが沢山あったわ。でも一年半程して帰られてしまったので更に凄腕の家庭教師をオネダリしたの。

 その方たちも私が15歳になって数日したらそそくさといなくなってしまった。学問やダンスなど教養の家庭教師はずっといらして、最近王都へ帰られたのよ。

 つまり、これってやはりあの決断の日が迫ってきたという証拠よ。あぁ、あの二択しかないなんて……私って不幸。

 そう、私のギフト《継承:Newgame+》が、秒読みが終わっていてギフトの名が《メニュー》に変わってた。

 メニューって何? 

 なんて考えてたら頭の中に浮かび上がる項目。

 隈無く考えていると、【アイテム】や【スキル】など見れた。

 これって女神様のとこで見ていた、ゲームのやつと同じだわ。どう扱えばいいか分かるし操作は頭の中で出来る。

 決断の日になるまで色々試していたの。中でも【魔物図鑑】と【人物図鑑】が良かった。

 【魔物図鑑】の中に様々なシチュエーションで魔物と戦う事が出来るのよ。操作すると別の空間にいて魔物と戦うようになる。尚いいのが死ぬ事は無いし、途中で解除できて元に戻る。

 後、【人物図鑑】は登場人物紹介ね。真っ先に見たのは勿論アイリス。だったのだけど、何故か見ることが出来なかったの!? 他の人はどうでもいいからやはり、アイリスが見たかったし、触りたかった……なんて、へへへぇ。

 アイテムやスキルに魔法なんて多分だけど全部あるし、お金も桁が多すぎて数える気が起きないほど有るの。

 家庭教師もいない私は、図鑑を使って技量は増えたと思うけど、死なない空間にいたからできた事で、現実ならどう動けるか、地面も違うし何があるか分からない。

 私に足りないのは現実の経験。

 死ぬ事がある戦いはまだなの、それにアイリスと出逢った時のこと考えると……。

 考えることが多いが、決断の日に私が進むべき道は決まっている。

 そう、先ずは冒険者になる事。

 この世界には冒険者制度と言うのがあり、世界をまたいで魔物を倒したりと活躍する、簡単にいえば傭兵的な感じ。冒険者はランク付けされ高ランク程雇うのにお金が掛かるの。ゲームの中で一人か二人冒険者が勇者の仲間になっていたわ。

 次に冒険者になったら、ランクを上げる。そしてランクが上がれば長売れるわ。そうしたら勇者の仲間になれると思うわ。

 現在も勇者アイリスには共に旅をしている仲間がいる。

 その仲間に変わって私がアイリスと一緒に旅をするの。浮かれていえば――――世界をデートする――――なんてぇぇぇ。

 ふぅ、顔が熱いわ。

 手うちわで顔を冷やしているけど、少しでも想像しただけで真っ赤になったら実際アイリスと出会った時大丈夫かしら。

 とにかく、研鑽を積んで置かないと。

 

 ◇ ◇ ◇ ◇

 

 マリベルの決断の日。

 メイドのアンナに呼ばれ共に父親の部屋の前に。

 

「マリベルさま、私はここで……」

「ええ、ありがとう」

「どうか、良い決断を」

 

 アンナに見送られ私は扉を開け中に入る。

 3人の視線が突き刺さる。

 

「マリベル、そこに座りなさい」

 

 父親に言われ席に座ると、真っ先に口を開くのは姉のメリア。

 

「お父様、全員揃いました」

「うむ、フォクスとメリア良いか?」

「問題ないです。お父様」

「はい、大丈夫ですわ」

「マリベル、決まったか?」

 

 私は、敢えて目を丸くし知らぬ顔をする。

 すると、兄と姉が睨む。

 父親は、ため息を吐き、肩の力を抜いた。

 

「そうだろうと思ったよ。教養の家庭教師を呼んだが、まさか剣術と魔法の家庭教師も呼んでほしいと言われた時は、もう忘れているのかと思っていたが」

「マジか! マリベルが剣術と魔法! どうせどの家庭教師もサジを投げたに違いない」

「お兄様、想像してしまってお腹が痛いですわ。マリベルがそんな技量持てるならギフトに反映されてますわ」

「どの家庭教師も一年半頑張ってくれたが――――」

「やはり、ですね。俺が教えてと言ってきた時も全く出来なかったからなぁ」

「私も魔法教えても――――ほんと進歩なかったわ」

「そんな感じだ。家庭教師から頭を悩まされたよ。それで帰ってもらった」

「で、身についたのは教養のみって事か」

「教養なら貴族として身につけなくてはならない物ですし」

「で、思い出したか?」

 

 兄と姉なのに妹の過去を掘り下げて、けなしてくるなんて。

 それにお父様、その話を聞いて聞いてない素振りをしているようですが、肩が小刻みに震えてますよ。

 この3人、身内をけなして楽しんでいるなんて……。

 相手にするのもめんどくさいので、姉がもつギフト【思考加速】と【並列思考】をスキルにセット。

 

「ええ、ですが。どちらも選びません」

「なっ、何も出来ないお前が何ができるというのだ!!」

「そうだ。マリベルお前は貴族の家に嫁ぎ平穏に暮らせ」

「あんた、お父様がどんな思いで言っているか分からないの?」

 

 だが、3人の顔から私への心配をする顔が見られない。唯一その気が見えるのはお兄様だけね。

 

「わかりますわ。ですが先ほどの三人のお話と顔を見てればわかります」

「何が分かるというのだ」

「早くこの家からいなくなって欲しいと」

「そんな、わけ――――」

「なら、除名して頂いて結構ですわ。わたしは冒険者になります」

「マリベルお前が、冒険者!!」

「ええ」

「何も出来ない、何も効力ないギフトのお前が、冒険者になるとは片腹痛い。私の言う通り貴族アーモンド家に嫁げ」

「アーモンド家ですって。あの辺境の」

「あの辺境伯のですか!!」

 

 勝手に話が進んでいるのね。私は折れないし三人の顔から何を言いたいかわかる。

 扉をノックする音と共に聴こえるお父様の従者の声。そして私に追い風を与えてくれる出来事が起きる。

 

「なんだ、いま急ぎの」

「アーモンド家からの手紙が」

「うむ――――なんてこと」

「お父様! なんて」

「まさか、アーモンド伯爵様が何か?」

「マリベルが嫁ぐ話を破棄をしてくれと――――マリベルのギフトの効果が不明という理由で」

 

 慌て出す3人。頭を掻きむしる父親に姉メリアが口を開く。

 

「効果が分かればいいのです」

「そうです、お父様。まだ返事を返すには早い」

「私のギフト【鑑定】ですらわからないのだぞ!!」

「お兄様のギフト【黒獅子】も最初分からなかったと仰ってたじゃないですか!! なら判明する何か条件があるのかも知れませんわ」

「うむ、フォクスは初陣の時効果が現れたからな」

「マリベルが冒険者になりたいと言っているのですわ。戦場に立たせてみてはどうでしょうか。もしかしたら分かるかも知れませんお父様」

「戦いが怖い事を知れば、冒険者となるという事を言わないです」

「うむ、そうだな。ならフォクス今度の魔障調査と討伐に連れて行け」

 

 頷く兄フォクスと不敵な笑みを浮かべる父親と姉。

 また勝手に話が進み、更に良い方向へと進んで私は何かと運がいい。そういえばスキル【幸運】を付けてたよ。

 

「マリベル。数日後、魔障調査をするフォクスの騎士団と同行しろ。そこで現実を知ってこい」

 

 私は、父親の部屋を出た後拳を握り心の中で『よっしゃー』と叫んだわ。

 ほんとう数日、十日も経たないうちに私は兄が率いる騎士団と共に魔障調査に呼ばれた。

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