Episode 7.星落つる跡地にて縁は繋ぎゆく
少女と竜は奥地を目指す
行く手を遮るのは、自分の背丈よりも伸びる蔓草。カロンがそれらをばっさりと斬り捨てていく。
尾先を飾る鉱石に似たそれに鋭さが帯び、一閃。ぱらぱらと斬り捨てられた蔓草が降り落ちる。
おかげでティシェもグローシャも、特に労せずして先を行ける。
自ら先行するカロンの背を頼もしく思いながら、ティシェは空を仰いだ。
空を覆い隠す勢いで枝葉を伸ばす木々。落つる木漏れ日に手をかざす。
眩しさに蒼の瞳を細めた瞬、小さな影が過ぎて行った。あれは、と思わず足を止める。過ぎた影の羽根、その色に見覚えがあった。
ピルゥ。後ろから、どうしたのかと問う声がした。殿も兼ねてティシェの後ろにいたグローシャだ。
先行するカロンも、何かあったかとティシェを振り返る。
ティシェは二頭の竜に「いや、なんでもないよ」と首を振り、足の歩みを再開させた。
不思議そうにカロンは首を傾げたが、まあ、何もないならいいかと、深く気にすることなく前を向き、尾振りを再開させる。ばっさりと蔓草が斬られ、見通せる先がまた広がった。
グローシャは先程ティシェが見上げていた空を仰ぎ、鼻先を天へと高く向け、すんっ、と鼻を鳴らす――その鼻先に触れた匂いに、ぱちりと橙の瞳を瞬かせた。知っている匂いだった。
ビルゥ、とグローシャが嫌そうにもらした声に、ティシェが肩越しに振り返って。
「――縁があれば、また繋がるものだ」
と、蒼の瞳に苦笑をにじませ見やったのち、また前を向く。
グローシャは先へと進むティシェの背を眺めつつ、仕方ないか、と嘆息をひとつ落した。
ティシェにとって足しになる縁ならば、グローシャは拒むことはしない。
先程感じた匂いの主にあまりいい感情を抱いた覚えはないのだが、それはまあ、あくまでグローシャが抱く個の感情だ。
再度の嘆息。重い嘆息だった。そこで気持ちを切り替え、グローシャは周囲に警戒の目を向ける。
整備の行き届いた道から外れ、森の奥部へと足を踏み入れているがゆえだ。
ティシェは肩に、グローシャは首筋に、カロンは被膜に。先の出来事でそれぞれに怪我を抱えた一行は、親切な騎士隊から教えられた地を目指し、森の奥へと足を踏み入れていた。
そこに新たな予感を感じながら。
―――――
全六話構成です。
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