怖い嘘

青サンダル

安宿の裏

 中学生の頃、家族でビジネスホテル的なところに泊まった。親戚の用事というやつだったと思う。

 到着したのは夕方だったけど、日の短い季節のことだったので、周囲はほとんど暗くなっていた。部屋の検分がてら、窓の外を見てみると、工場らしき建物が目に入った。それから下に目線を下げると、墓場が見えた。コンクリート塀に囲まれた、小さな墓石の集まりだ。


 不気味といえば不気味だけど、安宿なんてこんなものだろうという納得もあった。食事や風呂を済ませるうちにそんなことも忘れて、その夜はぐっすり寝た。


 次の朝、窓の外を見ると違和感があった。工場が消えて、代わりに駐車場ができていたのだ。不思議に思い、両親にも確認してみたが、よく覚えていないようだった。デビット・カッ◯ーフィールドじゃあるまいし、とか言われてしまうとだんだん笑い話じみてきて、結局何かの見間違いだろうと納得するしかなかった。


 墓石だって、昨日の夜はそっぽを向いているものばかりではなく、全部がこちらを向いて家の名前を見せていたような気がするのだけれど、それこそ暗くて見間違えただけのような気がするし、何より出来過ぎていて作り話みたいだったので、結局その話はしなかった。

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