女の子みたいな体のボクは、えっちも女の子どうしのえっちになっちゃうわ

ヤッキムン

第1話

2003年ロンドンで生まれたの。

赤ちゃんの時には、テムズ川のほとりを、ベビーカーに乗って、よく散歩していたの。

すれ違うお姉さんと、おたがいに、目と目があっちゃって、ふふふって笑ってたわ。

ママといっしょにロンドン動物園にも行ったのよ。


それから、つぎにパリに行ったわ。

パリで幼稚園に行って、そこでイレーヌちゃんっていう可愛い女の子とおともだちになったの。2人のママもパパも、みとめる仲なのよね。

ボクは、ちっちゃい頃から、女の子みたいな体つきをしている。イレーヌちゃんといっしょにいても、女の子どうしの友達みたいなんだ。イレーヌちゃんは、ボクのほっぺに、よくチュッてしてくれるけど、まわりから見たら、女の子の友達どうしに見えてると思うわ。

ちっちゃい頃から、いつも女の子の友達といっしょにいる。いつも女の子としゃべって、女の子と遊んでいる。


イレーヌちゃんと、オルセー美術館によく行っている。2人とも、カバネルさんやブーグローさんの描いた「ヴィーナス誕生」の絵、大好きで、走って観に行っている。

美術館の学芸員のお姉さんとも、顔見知りで、仲良くなっちゃった。

でもボクは、いつも女の子の服を着てるので、イレーヌちゃんといっしょに行っても、たぶん女の子の仲良しの友達だと思われているみたい。

イレーヌちゃんは、この絵みたいなヴィーナスさんになりたいって、いつも言っている。学芸員のお姉さんも

「2人とも、そのうち、こんなヴィーナスさんに、きっとなるのね~」って言ってくれているわ。

「お姉さんも、このヴィーナスさんみたいだよね~」って言ったら、

「そうね。メルシ~ボ~ク~。なんで知ってるのかしら~?」って言って笑ってた。

でも本当は、いちばん、この絵のヴィーナスさんに似てるのは、イレーヌちゃんだなあ~ってボクは思ってるの。


パリの幼稚園の、ちっちゃい渡り廊下をわたった先に、毎日ちっちゃな可愛いパン屋さんが来る。アーモンド型のパンと、それからもう1つ、丸くてフワフワしたちっちゃいパンがめっちゃ好き。それを楽しみに幼稚園に毎日行っているようなもの。

お母さんは「普段パン食べさせてないみたいじゃないのよ~」って言ってた。でも、家では食べたことないパンだったから、そのパンを食べたりフランスパンを食べに行くのが幼稚園の2番目の楽しみなの。

1番の楽しみは、やっぱりイレーヌちゃんに会うことなのよね。

イレーヌちゃんは、いつも「あやめちゃんの、およめさんになるーっ」て言ってくれているわ。


イレーヌちゃんは、家にもよく遊びに来てくれる。女の子が家に遊びに来ると、ほんとにめっちゃテンション上がって、走りまわって飛び回りたくなっちゃうから、お母さんに

「女の子遊びに来ると、元気になるんだからあ~も~ほんとに~女の子好きなのね~」っていつも言われてる。


イレーヌちゃんとは、セーヌ川の遊覧船にいっしょに乗って、パリの街並をよく眺めているの。セーヌ川のほとりには、色とりどりの花もいっぱい咲いてて、公園もいっぱいあるから、イレーヌちゃんと手をつないで散歩しているのよ。ボクは、パリの女の子の服を着てるから、まわりのパリの人からも、女の子のように思われているにちがいないわ。イレーヌちゃんといっしょに手をつないで歩いてても、女の子の友達みたいに見えてるはずなのよね~。


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