気絶
折れた右腕が痛み続ける。歩く足は止まらないが、徐々に歩幅が短くなっているのに気づいた。
「弁当があればこんな痛みはなんてことないんだが」
「あと少し歩いたら、包帯を巻いてやる。私にだって他人を思いやる気持ちはあるからな」
「どの口が言ってるんです….?」
こんなに家があるのにどの窓にも灯りがついていない。何故だろう、不思議には感じない。骨が削りあって身を焦がしている。目の傷は何かが入り込んだんだろう、感覚がない。体幹がずれて塀に頭がぶつかった。
「チッ..流石に限界か。おい、目を開けたままにしろ。気絶されたら困る」
視界はピントのずれたカメラになり、どこにも焦点が合わないが、整った顔立ちの少女は見える。腕に白い布が纏わりついた。
「山井、こいつに肩を貸してやれ。さっきの恩があるだろ」
「い、いいですよ。でっでも、負傷者同士で歩くってのもあんまり良く無いと思うんですが….」
「私が何とかするよ、それは。だからとっととこいつに肩を貸してやれ」
山井は目線を俺に向け、勢いをつけて俺の腕を持ち上げた。何度か足を震わせた後、安定した。
「さっきは肩、ありがとうございました….あなたのこと、少し好きになりましたよ」
「有難い」
「えっ..お、起きてたんですか?」
「気絶するなって言われたからな」
「本当に人間何ですか….?」
ゆっくりだが、道を歩き始めた。新たな敵の気配はないが、いずれ来るだろう。薙の家がどんなのかが気になる。やはり武器だらけなのだろうか、想像が….
「ん、気絶しましたね」
「はぁ….全部声に出てるんだよ..」
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