AKA

 「あ、インスタはやってませんよ? あれは悪の巣窟なので」

 「お、本当にTwitterアカウントある。フォロワー562人らしいぞ」

 「知るか」


 薙が早速クロスボウを構え、脚を目掛けて打ち込んだ。包丁が入る様な音が鳴り、akaの脚に刺さる。


 「あっ….ちょ、まって下さいよ….あっ、痛い痛い、これ結構じんわり痛みが来ますよ。待って待って、雇い主喋るんで許して貰えませんかね? え、これって動脈とか貫通してませんか? 滅茶苦茶血が流れてますよ、麻痺してきました、脚が麻痺して来ました! 以前インターネットで調べたんですがね、もし動脈が切れてたら死ぬしかないらしいんですよ。ちょっと見てくれませんか? もうラップ辞めます、辞めるので!」

 「雇い主は?」

 「薙さんが前依頼に失敗したじゃないですか、その依頼主ですよ。これ本当です」

 「有難う、じゃあ、ボルトは抜いてやるよ」


 薙が脹脛を貫通している鋼鉄の矢を力を込めて引っ張った。


 「んぅっ! あひ….ぁ….なんか引っかかってますぅ….あぁ..ぎっ」

 「返しが付いてるからな、そりゃ痛いだろうな」

 「……なんで抜くんですか….」

 「楽しいから。ほら、あと数センチだ。頑張れ」

 「は、ふぅっ、ひっ、ひ、うぅ….」


 返しの分まで肉が持ってかれている。見るも無惨な光景だ。ありゃ全治三ヶ月は行くな。


 「よし、抜けた」

 「あっ、あ、あっ」

 「ガムテープ巻いといてやる。あと、これから私に着いてこいよ? 盾にするから」

 「死んじゃう….血もまだ止まってないんですぅ..」

 「気合いで行けるだろ、な、鹿谷」

 「ああ、気合いがあればな」


 akaの肩を掴んで立ち上がらせた。気の毒だが、俺は薙の楽しそうな姿が見られたから満足だ。


 「私、明日で引退だったんですよ….だから、最後にデカい仕事をこなしとこうかなぁって…」

 「そうか、良かったな、早めの引退だぞ」


 薙がakaの脚を蹴りながら言った。


 「ひっ、いだっ。やめ、やめて下さい….」

 「殺しはしないから安心しろ」


 akaの頭を薙が撫でる。俺たちはホームを後にした。

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