第26話
ナイトゴーグルで、地形を確認した。
「あっちか」
オルスは下山していく。運良く見つけた洞窟で、仮眠をとる事にした。
日の出と共に、再び歩き出した。お腹はすいていた。だが、疲れはそれほど残っていなかった。
とある山の頂上に到着した。そこから、プラッカー王国が見えた。
城の至る所に、クレチア王国の国旗が立てられている。城下街でも同じだった。城壁、貴族の館、繁華街。クレチアの国旗が立っている。
オルスはその場に座り込んだ。ロングソードを出そうとしたが、離した。オルスは立ち上がり、プラッカー王国に背を向け、魔王城へと歩いて行った。
魔王城へは、クレチア兵に見つからないように、森の中を駆けながら、向かって行った。
西の見張り塔に侵入していく。中には誰もいなかった。そこから、魔王城の城下街を見たものの、誰もいない。
「あっ」
一軒家の庭に、見覚えのある馬車が置いてあるのが見えた。
オルスは駆けだしていく。何も考えず、跳ね橋を渡り、馬車の前に来た。
中には誰もいなかった。魔王城の中に入る。気配も足音も聞こえない。二階へと上がっていった。
「オルス」
魔王が君臨していた玉座に、テッドとウラシュがいた。テッドは横たわっている。
「生きていましたが」
「クレチア王国と戦って、テッドが右腕を斬られた。もう、魔法の力では、どうにもならないらしい。子供達も、途中ではぐれてしまったよ。」
二人とも、やつれた顔をしている。
「帰る国も、なくなってしまったな」
「これから私たちは、どうすればいいのでしょうか?」
「わからん。私はもはや、指揮官でも貴族でもない」
そこへ、足音が聞こえた。三人は、階段の方を見る。
「おい、オルスだ。オルスがいるぞ」
クレチア王国の兵士だった。相手は十人。オルスは、相手の立ち位置を把握すると、すぐに動いた。
相手はいきなり、一人で襲いかかってきたオルスに驚き、何もできなかった。
縦、右、左。オルスのロングソードが、華麗に舞っていく。それを彩るように、鮮血がほとばしる。
五人ほど倒したところで、残りの兵士達は、逃げ出した。すぐに、加勢がやってきた。相手は、十五人になった。オルスは舌打ちをする。
「オルス、唱えろ」
「ファイアボール!」
目の前に、三個の火の玉が現れた。クレチア王国の兵士めがけて、飛んでいく。顔面、足、腹に直撃した兵士は、叫び声を上げ、のたうち回った。すぐに他の兵士に担がれ、下げられる。
「あいつ、魔法も使えるのか」
「他の者たちを呼べ!」
周りの兵士とは違う、兜に羽のついた兵士が言った。
「ミスト!」
杖から霧が発生した。一気に視界が悪くなる。同時に、オルスは駆け出す。
最初に、出入り口に駆け出したクレチア王国の兵士の首を斬った。まだ混乱している。
「サンダー!」
唱えたと同時に、落雷。焦げた匂いと、叫び声。オルスは次々と刺していった。ミストが消えていく。相手の姿がはっきりとしてきた。
「コールド!」
何回も唱える。相手の腕、足が凍り付く。そこを砕いていった。
魔法を唱えては斬り、その場から離れ、間合いを取り、そして唱えた。相手は戦うことも逃げることも、できなかった。
最後の一人を倒した。オルスは大きなため息をつき、片膝をついた。
「すごいや。もう戦い方を覚えたんだな」
「大丈夫か?」
テッドはかすかに首を横に振った。
「ウラシュ様」
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