第25話
「クレチア王国が侵攻してきました。プラッカー王国、ほぼ壊滅です」
「くそっ」
「クレチアは、他の国と同盟を組んでいました」
「わかった。すぐに帰ろう」
「無理です。ここへクレチアの軍隊が、侵攻しています」
「なんでそんなに早く」
「貴族の誰かが密告を」
「すぐに出よう」
そこに入ってきたのは、あの大男だった。
「見張り塔にいる奴から、大勢のクレチアの兵が、こちらにやって来ているそうだ」
「すぐに逃げるぞ」
「俺について来てくれ。抜け道がある。案内しよう」
オルス達は、二つの馬車に乗り、すぐに走り出した。
テッドがライオードを唱え、暗い抜け道を走らせていく。
「いいか。俺達の国に戻ろう。もしダメだったら、魔王城で落ち合おう。そこで、考えるしかない」
ウラシュの言葉に、二人は頷いた。
「テッドさん!」
後ろから、子供の叫び声が聞こえた。見習い達を乗せた馬車の後ろに、馬に跨がった兵士が、追いかけてきていた。
「ライトを唱えろ」
数人の見習い達が、一斉に唱える。鉄の鎧に、クレチア兵の紋章が見えた。
一人ではなかった。後ろには、乗馬した多くのクレチア兵が、こちらに向かって駆けてきている。
「アイスニードル!」
テッドが唱える。氷の刃が、先頭のクレチア兵の体に突き刺さり、落馬した。馬もその場に倒れる。
「馬車を止めろ! あの子達を乗せる」
馬車を急停車させた。見習いの子達が駆け寄ってくる。
「俺が囮になる」
馬車から飛び出したのは、オルスだった。
「早く出せ。必ず会おう」
「すまない」
「オルス、これを使え」
テッドから賢者の杖を渡された。
「簡単な魔法なら使える」
「ありがとう」
馬車の扉が閉じた。馬が駆け出す。正面から、嘶きが聞こえる。駆けてくる音。sオルスは、幹に隠れた。
「アイス」
地面に向かって唱える。駆けてきた馬が、足を滑らせ、倒れていく。
「ナイトゴーグル」
クレチア兵の位置を確認して、ロングーソードで刺していった。
「いたぞ」
「ファイアボール」
相手の顔面に向かって、火の玉が飛んでいく。同時に、森の中へと入っていった。
「ライト」
唱えては、幹や地面に付けていく。地面に伏せ、クレチア兵の動向を見ていた。
相手は、光に寄っていくのがわかる。
「敵はどこだ」
小声で仲間と話している。
「馬車は完全に見失ったと、報告しろ」
オルスは、腰に装備していた短剣で、クレチア兵の額に向かって投げた。
その場に倒れる。もう一人には、何もしなかった。何度も転びながら、逃げていくのを見届けた。
オルスはそのまま、息を殺し、なるべく音を立てないように、山の中に入り、頂上を目指した。
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