第19話
三人は反射的に館を飛び出す。
「どこからだ」
「あちらです!」
指した方向へ、テッドはライトオードを放った。
「助けて!」
窓から、女性が手を振っている。
「馬を用意しました」
三人はすぐに馬に乗り、その館へと駆け出す。近づくにつれ、怒号と物音が聞こえてきた。
三人は館へと入る。テッドはさらに、ライトオードを放つ。
「誰かないか。助けに来たぞ!」
二階と三階の窓から、数名が飛び降り、逃げていくのが見えた。
「まずは中の者達を助けよう」
テッドはバードで、すぐに救援を要請した。
館に入る。食堂は滅茶苦茶に荒らされている。廊下には、服や装飾物が散乱していた。
「ここの主は、まだ帰宅途中です」
二階に上がる。そこに、女性の使用人が倒れていた。
「大丈夫か?」
「殴られただけです。全身、黒い服を着た者達が、いきなり入ってきました」
「顔も、隠れていたのか?」
「はい、布のようなもので。目以外は全くわかりません」
ウラシュは窓の方を見た。
「あの、これって盗賊団と考えた方がいいですよね」
「とうとう、恐れていた事態が起こったな」
「火災発生、火災発生! 場所はプラッカー王国の城下街」
バードが、三人の前に飛んできた。大声で叫んでいる。オルス達は、外に出ると、馬に乗り、駆けさせた。
城下街の中にある貴族の館から、火の手が上がっている。雪は降らず、乾燥し、風が強かった日。館は一気に燃え広がった。
「誰か、誰か助けて!」
泣き叫ぶ、母親。
「誰か、すぐに魔法使いを呼べ」
ウラシュが、国民達に言った。だが、誰一人動こうとはしない。みな、ただ館から出る炎をじっと見ている。
オルスは家に何度も入り、貴重な品を外に運び出す。
「あったかいのぉ。今日はぐっすり眠れる」
死んだ目をした老人が、そう言った。誰も手伝わず、ただ炎を見ている。
「おい、手伝え!」
ウラシュの言葉に、耳を貸そうとはしなかった。国民はただ、炎をじっと見ていた。
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