第3話
一行は、赤い羽根付きの兜の旗が掲げられている、二階建ての一軒家へと向かった。中に入る。テーブルとイスが中央に置かれていた。壁側には、水瓶とコップ。二階も同じだった。
すぐに革の鎧を脱ぎ、窓を開ける。ひんやりとした風が入ってきた。
「これで、先発隊の仕事は終わりだな。さあ、飲むか」
仲間が言った。オルスは睨んでいる。
「お前らはいいよな。俺はこれから協議堂に入って、国王の後ろに立つんだぜ。しかも夜まで」
「アタリくじを引いた、お前が悪い」
仲間が茶化してくる。オルスは舌打ちをした。テッドは苦笑い。
「今日は夜まで。明日は昼までだっけ? それまでの我慢だよ」
オルスは椅子に座り、深いため息をついた。
太陽が真上に来た頃、ドアをノックする音がした。
「国王が到着されました。もう少しで、協議会が始まります。会議室の守備をお願いします」
「はい」
「がんばれよ。お前の分も、しっかり飲んどいてやるからな」
再び仲間が茶化してくる。
「ちゃんと残しておけ」
そう言いながら、オルスは革の防具を装備する。鞘にロングソードをしまい、協議堂へと向かった。
文句を垂れながら、扉の中に入り、前に進む。両脇には部屋があった。そこには、貴族の服装をしている人達が、談笑している。
天井には、絵が描かれている。剣と杖を持った老人が、宙に浮いている。そこに、五人の若者が剣を片手に、挑もうとしている。
会議室の前に到着した。すでに、他の兵士が直立して待っている。オルスは一番端に並んだ。
「国王が、入られます」
先ほど、オルスが歩いてきた廊下から、国王がやって来た。国王が一人ずつ会議室に入ると、その後ろに兵士が付き添った。最後に、プラッカー国王が入る。オルスも付き添った。
最後に入ったオルスは、周りを確認すると、自分も中に入りながら、扉を閉めていく。
中央には、大きな丸いテーブルがある。椅子に座った国王の後ろに、護衛であるオルスが直立した。
「それでは、会議を始める。今回の議長は私、プラッカー国王の私が務める。まず、魔物による各国の状況を報告してほしい。では、クレチア王国から」
「うちは、ここ数年と同じだ。魔物の被害はあまりない。人も同じ。作物も豊作だ」
「同じく」
同じような内容が続いた。最後に、プラッカー国王が話し始めた。
「我が国でも、同じように豊作が続いている。人口は増えてきている。問題の魔物も、変わらない」
「相変わらず、という所ですか?」
「ええ。ここ五年、新種の魔物は発見されていない。皆様との、魔物に対する研究、対策と支援のおかげで、ケガ人や死者も、低い水準に抑えられている。観光でも、安全に人々の往来ができている」
「魔王城の攻略は、当分まだですかな?」
「あれから十五年。ようやく傷は癒えかけてきました。これから、準備の段階に入ります」
その後、より具体的に、魔物の分布図、被害報告、費用が報告されていった。
翌日は、経済に関する会議が行われた。オルスには、深酒をしてしまった影響で、何度も寝てしまいそうになる。ちょうど太陽が真上に来た時だった。
「では、これで終わりにする。次回は冬に行うことになった。詳細は、後日」
今度はプラッカー国王が一番初めに会議室から出ていく。オルスは扉を開けた。
「私の護衛をありがとう」
国王がそう言った。いきなりの事で、どうしていいか、わからないオルス。
「ただ、もう少し酒は控えなさい」
「……はい」
精一杯の答えだった。
国王を控え室に送り届ける。その後、オルスは石畳を歩き、仲間がいる一軒家へと向かった。中を開けると、防具を装備している、仲間達がいた。
「どうしたんですか? 出発は明日ですよ」
「今日になった。国王からの指示が出でな」
隊長が、ロングソードを鞘に入れていく。
「何かあったんですか?」
「実は、国王がすぐに帰りたいとのことだ。みんなも知っての通り、産まれたばかりの王子が、病気にかかられているだろ。心配らしい。私たち先発隊と、一緒に帰ることになった」
「まあ、ここら辺の魔物なら、簡単に倒せます。夜には、城へ戻れますけど」
「テッド。バードで魔王城の向かう十字路に、兵士を待機させておくように、連絡をしてくれ。念には念をだ」
「わかりました」
オルス達は、正門へと向かった。すでに、国王の馬車と、護衛隊が待機していた。先発隊は、国王の馬車と、護衛隊を囲むようにして、出発した。
太陽が西へと傾いていく。道中、立ちはだかった魔物は六匹だった。どれも一斬りか二斬りで片づける。休憩はなし。十字路の所で、さらに数十名の兵士達が待機していた。馬車はゆっくりと止まる。
オルスは何気なく、太陽の位置を確認した。
「まあ、ここまで来れば大丈夫だな」
少し視線を下げると、僅かに魔王城が見えた。
「ぎゃ!」
その時、近くの森から物音が聞こえた。一斉にロングソードの柄を握った。オルスとテッドは、音のした方へと走っていく。他の者達は、国王が乗った馬車を守るようにして、全方位に兵士を配置した。
再び、兵士の叫ぶ声が聞こえた。
オルスが森の中に入ろうとしたその時、森の中から、兵士が、フラフラと歩きながら、こちらにやってきた。
「おい、大丈夫か!」
兵士は片腕を切り落とされている。オルスは一瞬、立ち止まった。膝から崩れ落ちそうになった兵士に駆け寄り、すぐに支えた。
「逃げろ。ガイコツ騎士だ」
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