第7話 未知との会敵
「行きましょ、光一。」
エリーゼさん、もう転入生と仲良くなってる....。
少し離れて私は見つめる。
彼女はクラスだけでなく、他の科や学年の人たちにも人気で、対して私は注目はされても積極的に絡んで来てくれる人は少なかった。
羨ましくないと言えば嘘になるけれど、私が欲しいのは人気なんかじゃない。"力"が欲しい、何物にも負けない力が。いつかお母さんを殺した敵を倒すために....。
「桜井さん?」
「ん?。あ、ごめん。ボーっとしてた」
今は実習中で、ペアの子が心配してくれたようだ。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫大丈夫。」
にしても、あの転入生は一体.....。
それに何故ギアを二つも着けているのか....。
訓練用を着けるのは別に変じゃない。元々着けてるギアを着けないのは何か理由が?なら増々分からない。こんなわけのわからない奴をこの学校が受け入れるなんて、見た感じギアの操作も上手くはないのに。どうして、どうやって....。
「まさか親のこね?!」
いやまさか。
親が誰であれ、平等に合否を決めるこの学校がそんなことをするはずが....。
「避けろ!!!」
「——!?」
突然彼が叫んだかと思えば、急に降って来た"光"によって彼の姿が消える。
足元を見ると、彼が倒れているのが見えた。
「くっそ....早くみんな逃げろ!!」
上体を起こした彼が叫んだ直後、"何か"が高速で落ちてくる。
「グハッ!」
彼を押しつぶし、舞い降りた"それ"は、
「クトゥ....」
土埃の向こうでその"眼"が光る。次第に土埃は晴れ、その姿が現れる。
前屈みで等身は低く、それなのに大きく発達した前腕と鋭い爪はおどろおどろしい。
全長3メートルは優に超えるその巨体が次の獲物、エリーゼへと向く。
周囲の生徒はやっと状況を理解できたのだろう、甲高い悲鳴と共に混乱へと陥った。
「なぜ....ここに....!?、いけない!皆さん落ち着いてこちらに避難してください!!」
金村先生が避難誘導を始める。
「まさか、こんなに早く会えるなんて......。」
私は自身のギア固有の装備を取り出す。
光の粒が集まり出現したのは片刃の大剣で、今まで父のため、母のために共に鍛錬してきた剣だ。
クトゥに向かって飛び込む。
「桜井さん!ダメー!」
先生の声を無視し、剣を思いっきり振り下ろす。向こうはまだこちらを見ていない。
もらった!
「なにっ!!」
振り下ろした瞬間、目の前から敵が消えたのだ。
避けられた!!
気づいたときには遅かった。
クトゥは剣を横へとかわし、私の横っ腹にものすごい勢いで爪を突き立てた。
体は吹っ飛び、壁に激突する。
「カハッ!」
激突した衝撃で意識が飛びかけるが、なんとかこらえる。
ギアに装備されている身体への直接ダメージを軽減する魔力防壁、これが無ければ今頃あの爪で串刺しにされていた。しかし、
「ァァ......ゥ......」
声が出ない、体も動かない。額に熱いものが流れる。
このまま追撃されれば、終わる。
しかし、来ない。
クトゥは傍に倒れている光一を掴み上げると、手の平からゼロ距離でビームを放ち、光一の体はビームと共に近くの倉庫に着弾する。
クトゥはエリーゼへと向きなおる。
エリーゼはあまりの恐怖に動けないようだ。
クトゥは開いた手をエリーゼに向ける。
手の平にある砲口にビームが収束していく。
「ダ......メ.....ニゲ......テ......」
必死に声を上げようとするが届かない。
ビームが臨界に達する。
そして、
ビームが放たれた
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