第22話 いまどきの歯医者さん

 「歯医者は高くて長引く」という固定観念があり、市から歯科健診の通知が届いていたが、なかなか足が向かなかった。年内に必ず行くと心に決め、やっと新しくできた歯医者に行ってきた。

 受付は、美容院かコーヒーショップのカウンターみたいで、待合の椅子も病院ぽさのない布張りの椅子で落ち着きがある。名前を呼ばれてドアが開くと、歯医者さんも衛生士さんも紺やピンクのウエアで明るく挨拶をしてくれて、まるでアトラクションの入り口のようだった。案内された椅子に座って初めて、ここが歯医者だと認識するくらいだった。

 健診を終え、念のため、次回レントゲンを撮ることにした。歯のレントゲンと言えば、昆布の佃煮くらいの大きさの板を歯茎に充てられて、冷たく堅い板の感じが嫌だった記憶がある。もちろん、検査結果は来週に、だった。

 今どきの歯のレントゲンは、もうSFだ。タブレットガムくらいの小さな薄い板を前歯で軽く嚙んで定位置に立つと、タコ足型のヘッドブラシのような器具が頭に降りてきてカポッとはまり、小型のレントゲンが私の顔の周りを衛星のように一周して終わった。椅子に戻るとすぐ、目の前の画面に私のガイコツが映され、治療痕や口の中の状態の説明をしてもらった。特に悪いところもなく、歯石を取って終わった。歯石だけはやはり一度に半分しかできないそうで、もう一回通って、5年ぶりの歯科通院は3回で終了した。

 医療は確実にものすごく進歩していたのだった。

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