第10話 断捨離の神が降りてきた
5月に長女の引っ越しを手伝いに行った。今日、部屋を空にしなくてはいけないのに、噓みたいに生活感が溢れている部屋に絶句。文句を言っている暇はない。片っ端から段ボールに必要な物を投げ込み、躊躇なく不要な物をゴミ袋に放り込む。借りたバンにどんどん荷物を積んでいく。夫と長女は新居へ向かい、一人残った私は少しでも多く敷金が戻るよう、自宅に持ち帰る家具や荷物をまとめ、汗だくになって部屋の掃除をした。5時間後、なんとか引き渡せる状態に磨き上げた。空っぽになった、長女の4年分の思い出が詰まっていた部屋を見渡すと、自分が住んでいたわけでもないのに感傷的になって、泣きそうになった。
不動産業者の人が来て、あらゆる所を細かくチェック。長女からの申告はなかったのだが、洗面台にひび割れがあった。すぐに見積もりは出せないが、おそらく敷金は超えると言われ、感傷的な気分は一瞬で吹き飛んだ。すでに新居で浮かれている長女に怒りのスタンプを送り、想像がつかない修理代に震えが止まらないまま、部屋を去った。
断捨離したいと言い続けながら何年も何もできずにいたのだが、長女の部屋を短時間で片付けた勢いと長女への怒りのパワーが、ついに断捨離の神を降ろしてくれた。この2か月ほぼすべての休みを断捨離に費やした。ブックオフとゴミ集積所を何往復もして、ようやく理想の部屋に近付いている。
断捨離の神を降ろすきっかけをくれた長女に、何故か感謝していた。
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