前話のモブ視点で語られた“痴漢騒動”が、本話では一転――あの黒帽子の大学生、彼の内面が描かれ始めます。
特徴は何といってもその“冷静と怒りの狭間”を歩く語り口。
母親の背中を見て育ち、武術や危機対応のスキルを身につけた彼は、「助けなきゃ」と思っても動けない大半の人とは明確に異なる存在です。
けれど、彼は決してスーパーヒーローではない。
傷ついた女性を見てよみがえるトラウマ、記憶にこびりついた血の涙、飛び出た眼球の幻影。そこにあるのは“人として”の怒りであり、自らの過去を繋ぐ痛み。
誰かの勇気が届かなかった一瞬を、今度は彼が繋ぐ。
この二人の邂逅が、どんな因果を呼び起こすのか……続きを読まずにはいられません。