星界樹へと至る鍵
春海天夏
001・プロローグ
問 ゲームとはなんだろうか。
この問題に答えられる人はかなり少ないだろう。もしかしたらほとんどいないかもしれない。
たがあえてこの問題に対する答えをこれから話すちょっとした物語を聞いてもらってから答えて貰う。
何、心配することはない。この問題の答えは人がいる限り同じ答えなど存在しないある種の哲学的な問題だから。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「え〜これより明和14年度一学期修業式を始めます。まず初めに学校長訓話」
「本日は非常に暑い日差しの中、、、、」
長ったらしい校長の話を真面目に聞いてるふりをしながら物思いに耽る。
考えることは専ら明日から始まる約二ヶ月間の長い夏休みのことだ。課題は出たらすぐ終わらせているため今日出た課題以外はもう全て終わっている。もちろん今日の分も始まってから一週間以内に終わらせるつもりだ。
つまり何が言いたいのかというと今年の夏休みも九割以上を何もすることもなく過ごせてしまうのだ。
(去年は何をして過ごしてたっけ?)
毎日暇して過ごすというのは学生とニートの特権だ。つまり現学生の僕にとってはとても好ましいことなのだが何もしないで2ヶ月近く過ごすというのはなかなか精神に来るものがある。
(だからといってすぐに何か暇つぶしのタネを思いつくわけでもないんだけどね、、)
そんなことを考えているうちにツマラン校長のお話どころか修業式自体か終わっていた。
教室に戻り配られた保健だよりやら成績表やらを眺めていると僕の小学校以来の親友達が話しかけてきた。
「夏休みか~。春は今年も暇か?」
「うん、今年も色々とすぐに終わっちゃったからね」
「春は良いよなぁ、勉強ができて。俺なんか赤点が5個もあったんだぞ、、、今年もまた補修と再テスト祭りだ」
「それは自分の性でしょ。春の性にしないの」
「でもよ~、、、春と一緒に勉強したのにこいつは五教科九割以上で学年4位だったのに俺全部落ちたんだぜ?しかも学年順位は自己最低の382位」
「、、、貴方受験大丈夫?高2でそれって相当ヤバいわよ」
「大丈夫!俺プロゲーマーになるから!スカウトも受けたし!」
「それはあまり大丈夫とは言えないわよ、、、色々と、、、、」
「で、でもスカウトされるのはす、凄いことだと思います!!」
「ミー子はその純真さを忘れないでね、、、後悪い人に騙されないようにね」
さて会話だけ聞いても誰か分からないと思うのでざっくりと教える。
まず始めに僕に話しかけてきた男子が期末で自己最低順位を見事獲得した【浅間隆一】十六歳だ。
愛称はリュークである。他意はない。ないったらない。少し某死の手帳の死神っぽいが大きな関係はない。
次にリュークの心配をした女子が【櫻木凜華】十七歳だ。
愛称は姐さんだ。これについては色々あったのだ。もうほんとに。でもその全てを物理的なパワーと正論で完璧に近い形で丸く納めてきため姐さんである。当の本人はあまりこう呼ばれることが好きではないみたいだが。
その次が【天野美晴】十六歳。ロリ巨nyゲフンゲフン。身体の一部分の発育がとんでもない身長136cmだ。なんで身長を知ってるかって?自分から言ってきたからだ。
愛称は天使猊下である。様ではなく猊下だ。ちなみに彼女は陰でこう呼ばれていることを知らない。理由は学校中が猊下の御心を間違えないように?するためである(錯乱)。
最後に僕、【朱野春風】だ。年は十七。名前の由来は『暖かい春風のような人になって欲しい』ではなくただ単純に僕が産まれたときが春だったからと言う理由だ。
愛称は春。上三人と違ってかなりマトモだ。マトモすぎて何も言うことがない。
「それで皆は夏休み何して過ごすの?」
「俺はスカウトを受けた時に貰ったVRMMOの配信プレイをするつもりだぜ」
「え?貴方もしかして本当だったの!?」
「なんだよ?嘘だと思ってたのかよ。いくら俺でも趣味と飯には嘘つかないぞ」
「いや、妄想だと、、、」
「そうですよ!!リューク君は趣味と飯には嘘つきませんよ!!」
「ミー子、それちょっとズレてる、、、」
「まぁ良い。ところでお前ら夏休み暇ならゲームやんね?」
「、、、ゲームの種類によるわね」
「リューク君がやるなら私もやります!!」
「ゲームなら僕も暇を潰せるかな?」
皆ある程度乗り気だ。
「俺がやるゲームは【ユグドラシルの秘宝鍵】だ!!」
予想外の答えが帰ってきた。
「ユ、【ユグドラシルの秘宝鍵】って最近話題になってるあれ?」
「おう!!そのあれだぞ!!」
【ユグドラシルの秘宝鍵】はフルダイブ系VRゲームの最新版でグラフィックは勿論のことNPCに使われているAIも最新のものでほぼ人間と変わらない挙動をする。さらに狂人的な開発元は世界中の名のあるシナリオライターや小説家、果てには舞台作家まで起用し収集がつかないほどの代物になったとんでもないゲームだ。ネットの界隈では畏敬の念を込めて第6世代と呼ばれている。
「そ、そんなものをやっていいの?な、何かに呪われたりしないかしら?」
「それよりも人数分あるの?βテストの抽選倍率全世界で100万倍以上だったんでしょ?」
「大丈夫だ、問題ない。チームのスポンサーに掛け合ったらちゃんと四人分貰えた」
何かさらっととんでもないフラグが立ってすぐに折れた気がする。立ったフラグは泣いていい。
「ほら、これが製品版だ。失くすなよ?特に美晴」
「む〜リューク君はいつもそうやって子供扱いして!!」
(((実際子供だと思う……)))
そんなこんなで僕達に【ユグドラシルの秘宝鍵】の製品版が手渡されていく。パッケージのデザインは正しくなユグドラシルと銀の鍵っぽい鍵だ。なかなかにカッコいい。僕のなけなしの廚ニ心が2日ぶりにくすぐられた。
「サービス開始は世界標準時で正午。日本時間で今夜の九時だな。キャラクリ自体はもう出来るから開始前までには終わらせておけよ」
僕達は一糸乱れぬ動きでその言葉に頷いた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
家に帰ってから今日出た課題を本気で終わらせ、気づいたら8時半だった。急いでゲーム機のスロットに【ユグドラシルの秘宝鍵】のゲームカードを差し込み、仮想の世界へと旅立った。
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