第70話

 俺はダンジョンを出る。


「もう、真っ暗だな」


 すぐにうさぎ亭に帰ろう。



 うさぎ亭に帰ると、皆食事を終え、大部屋で談笑していた。


「ハヤト君、お帰り」


 そう言ってヒメはきゅうを回収する。

 

「ただいま」

「きゅうは私とお風呂に入ろうね」


「ヒメはお風呂に入ったばかりですわ」

「いいの!さ、行こう」

「きゅう♪」

「ほらやっぱり!きゅうも入りたいんだよ」


 ヒメがきゅうを抱いてお風呂に向かうが、ヒメの何気ない言葉がエロく感じる。

 一緒にヒメと俺がお風呂に入るイメージを想像してしまう。


「皆食事は済ませました。ハヤトも食べるのですわ」


 俺はテーブルに座って食事を摂る。

 そこにエリスがやって来る。

 まだ顔が赤い。

 流石チョロインだ。


「は、ハヤト、輪廻の刀が出来たよ」

「おお!今付けたい!」

「ハヤト、食事中ですわよ!」


 ファルナは世話焼きだよな。


「僕が、右手に付けるよ。ハヤトはすぐつけないと落ち着かないんだ」


 エリスが俺の右手の甲の漆黒の刀の紋章を剥して、輪廻の刀を張り付ける。

 俺は左手でパンを食べるが、紋章が気になって仕方がない。

 輪廻の刀の価値は1億魔石だ。


 付けてもらうまで落ち着かない。

 紋章を貼ってもらうとすぐに立ち上がり、輪廻の刀を出したり消したり振ったりする。


「まるで子供のようですわね」


 ファルナが何か言っているが、俺は気にせずステータスを開いた。

 ステータスの上昇は命の危機に直結する。

 最優先事項。

 そう、すぐ見る必要がある。




 ハヤト 男

 レベル:1

 固有スキル きゅう:LV9

 ジョブ:斥候

 体力:1+100  

 魔力:1+250 

 敏捷:7+350  

 技量:1+100  

 魅力:0+100 

 名声:0+100  

 スキル・闇魔法:LV10・刀剣術:LV10・聖魔法:LV10・斥候術:LV10・超人体:LV10・ステップ:LV10・カウンター:LV10 

 武器 輪廻の刀:400【NEW!】 ・防具 漆黒の衣:150 

 斥候の紋章 ・耐性の紋章 




 武器の攻撃力が250から400に上がった。

 それも嬉しいが、それよりも、武器の耐久力が滅茶苦茶上がった!

 顔がにやけてしまう。


 漆黒装備は攻撃力は高いが、耐久力が低い特性がある。

 そこから上位の輪廻の刀に変えたのだ。

 当然武器の耐久力は大幅に上昇する。




「食事中ですわよ」


 ファルナが後ろから俺の肩に手を当てて席につかせる。


「そう言えば、皆はもう、落ち着いたか?」


 スティンガー戦の後、熱を出して調子が悪くなる兵が出て来た。

 奇襲を受け、命の危険があるダンジョンで合宿し、更にスティンガー率いる英雄騎士団と闘ったのだ。


 命の危険を感じ続け、体調が悪くなるのは当然だろう。


「大分よくなりましたわ。後1日もすれば、皆回復しますわ」

「良かった。アオイに兵士のレベル上げを手伝ってもらおうかな」

「それは助かりますわ」


 俺は食事を終え、風呂に入ろうとしたがヒメときゅうが出てこない。

 早く出てもらうように言ったがすぐ出ると言って30分は出てこない。


 俺はきゅうを消した。

 きゅうは俺の固有スキルで、出したり消したりできる。

 カインの天使の翼も同じで出したり消したりできるのだ。


 ヒメがすぐに出て来た。

 髪は濡れており、少し怒っている。


「きゅうをどこにやったのよ!」


 俺はきゅうを出現させる。


「私が育ててるの!」

「それ俺の固有スキルだからな」

「私の子よ!」


 あ~これ、何を言っても駄目なパターンだ。

 俺は無言できゅうを差し出した。


 きゅうは俺よりヒメに懐いている。

 固有スキルなのか、生き物なのか分からなくなってくる。

 食べなくても死なないが、ヒメに出された食事はおいしそうに食べるし、あんまり意地悪をするときゅうは怒るらしい。


 きゅうはヒメに抱かれるか、大きなテーブルの中央に鎮座し、皆に撫でられる大事な使命を帯びていた。


 前見た時きゅうはテーブルの中央に鎮座していた。

 クッション性の高い小さい四角形の布団の上に乗り、つぶらな瞳はどこを見ているのか分からない。

 布団に乗ったきゅうは鏡餅のようだった。


 そのきゅうに兵士のお姉さん5人に一斉に撫でられていた。

 お姉さんはお尻を突き出すようにきゅうに手を伸ばし、テーブルに胸が当たり、行き場を失った胸が横に盛り上がる。

 そこにエロを感じてしまう俺は、変態なのだろうか?


 いや、この世界の女性の服が良すぎる。

 ビキニより布面積が多い服もあるが、水着じゃなく服でその布面積だと、ビキニよりエロく感じる。

 それにビキニアーマー&マントのお姉さんも居る。

 俺は、正常だ!


 現実に引き戻され、周りを見渡すと、全員半裸のお姉さんだ。

 お風呂に入ろう。

 妄想を頭から追いやる。

 忘れるのだ。


 風呂に入ると、『ヒメが入った後のお風呂』のイメージが溢れてくる。

 俺は風呂の中で丹田を膨らませて呼吸する。

 心を落ち着かせるのだ。




「ハヤトさん!今日のお風呂は長かったですね!」

「どのくらい入ってたんだ?」

「1時間くらいですよ!」


「そ、そうか」


 俺は精神統一にそこまで時間を使ったのか!


「そう言えば、うさぎ亭で働くみんなが戻ってきましたよ!」

「そうだったな。皆、スティンガーで避難していたんだった」


「それと、ハヤトさんをシスターちゃんが呼んでいました!」

「分かった」


 シスターちゃんが歩いてきた。

 両手を組み、神に祈りを捧げるようなポーズで言う。


「ハヤトさんは今日から毎日、儀式の間で寝てもらうのです」


「それだと、毎日エチエチイベントが起きる感じにならないか?それに俺は今強くなりたいんだ。女性に溺れてしまったら、ダンジョンの修行がおろそかになるだろ?そういう事は俺が強くなって、全部の装備を整えて、上級スキルも覚えて、ファルな兵の訓練を終えて、更に団員を100名に増やして、全員のレベルを60くらいには上げて、それが終わってからじゃないのか?」


「細かい事はいいのです!ハヤトさんが女性と寝ないのは神への冒涜なのです!」

「ハヤトさん、溜めすぎはよくありませんよ!」


「そうなのです。アオイから聞いているのです。ハヤトさんは性欲を我慢していると、もう調べはついているのです!性欲を溜めているのですね?女神エロスティアに嘘偽りなく答えるのです!」


 シスターちゃんはまるで警察官の取り調べのように俺の事情聴取をする。

 アオイがにやにやと笑いながら近づいてくる。

 モデルのような洗練された歩き方にイラっとする。

 まるで、ざまあして勝ち誇ったような動きに見える。


「アオイか、ステータスの事について、色々聞きたいと思っていた」

「あら、奇遇ね。私もこの世界の事や前の世界でやっていたゲームの事について、色々聞きたいと思っていたのよ」


 間違いない!

 アオイはゲーム経験者だ!

 言い方で分かる!


 アオイが笑う。

 きれいな笑顔だが、どこか不気味に感じた。

 いや、俺がアオイを怖がっているからか?


「今日の夜は、儀式の間で、2人だけで話をしましょう」

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