第68話

【王国歴999年冬の月82日】


 チュンチュンチュンチュン!

 すがすがしい朝日だ。


 儀式の間ではアオイ・エリス・シスターちゃん・トレイン娘が眠っている。

 きっと、しばらく起きないだろう。

 俺は皆から目を逸らした。


 みんなはまるで気絶するように眠っている。

 眠っているだけだ。


 大部屋に出たら声が凄かったと言われるだろう。

 それに扉の近くに椅子を置いて座り、聞き耳を立てて座っている者も居た。

 外でひそひそ話をしているのが聞こえてきた。


 神聖な儀式でそういうことするの良くない。


 俺は水差しの水を一気に飲み干す。

 水差しの水が空になった。


 窓から出て、ダンジョンに向かおう。

 俺はまだ弱い。

 攻略はダンジョン6階で止まっている。


 これからってところでダンジョン攻略が止まっていたんだ。

 俺は走ってダンジョンに向かった。




【ダンジョン6階】


「まずはダミーファックだ」


 ダミーファックと闘うのは久しぶりに感じる。

 いきなり7階に行くのは危険だ。

 まずは様子見をする。


 俺はダンジョンの1階で死にかけている。

 油断は駄目だ。


「おし!」


 俺は魔物をすべて倒しつつダミーファックを探した。

 だが、前より魔物の動きが悪く感じる。

 動きが読みやすいし、俺に倒されるように動く錯覚すら感じる。


 儀式部屋の件でハイになっているのかもしれない。

 慢心は危険だ。




「居た!」


 人型だが、青い体と、指先が触手のようにうごめく。


「来い!ダミーファック!」


 俺は自分に気合を入れつつ、ダミーファックに突撃した。

 ダミーファックも怖さはあるが、スティンガーほどの怖さはない。

 スティンガーの時は槍で突き殺されるイメージが何度も頭をよぎり、何度もそのイメージを遠ざける為に立ち回った。

 でも、こいつからはそのイメージが湧いてこない。


 ダミーファックの鞭攻撃をステップを使わずに躱し、ダミーファックに近づく。

 ダミーファックのサイドステップに合わせてステップを踏み、通常攻撃をヒットさせる。

 ダミーファックの攻撃はすべてカウンターで返す。


 ダミーファックの後ろに回るようにステップを踏みつつ何度も斬りつける。

 ダミーファックのHPが半分になり、状態異常の霧を発生させた。


 霧の攻撃モーションを使ってくれた方が隙があって攻撃しやすい。

 俺の連撃でダミーファックが倒れた。


「簡単、過ぎる」


 アーツスキルも魔法スキルも無しで普通に倒せた。

 そしてほぼノーダメージだ。


 正確には毒の状態異常が少しだけLV1になったがすぐに自然回復した。


 その後も3体のダミーファックをスキル無しで倒した。


「7階だな」


 7階は火山地帯だ。


 岩が赤く、マグマに入ると、スリップダメージを食らう。

 その他に気を付ける部分としては、ダミーファックの色が青から緑に変わって強化されている。


 特徴は同じだが能力値が上昇している。

 

 ……緑の体、ダミーファックだ!


 俺は無言でダッシュした。


 ダミーファックの側面から斬りつける。

 そして張り付いて攻撃する!



 7階のダミーファックも普通に倒した。


 その後5体倒したけど、一切苦戦する事が無い。

 8階、行くか?


 いや、ダメだ!

 一旦帰ろう!

 このパターンは危ない。

 俺は調子に乗って6階に上がって死にかけている。

 俺は走ってダンジョンから出た。



 ベンチに座りステータスをチェックする。




【変更前】

 ハヤト 男

 レベル:1

 固有スキル きゅう:LV8

 ジョブ:サムライ

 体力:1+100  

 魔力:1+150  

 敏捷:7+350  

 技量:1+100  

 魅力:0+100 

 名声:0+100  

 スキル・闇魔法:LV10・刀剣術:LV10・超人体:LV10・罠感知:LV10・敵感知:LV10・偽装:LV10・ステップ:LV10・カウンター:LV10 ・儀式:LV10 ・リカバリー:LV10

 武器 漆黒の刀:250 ・防具 漆黒の衣:150 

 斥候の紋章 ・耐性の紋章 


 



【変更後】

 ハヤト 男

 レベル:1

 固有スキル きゅう:LV8

 ジョブ:斥候

 体力:1+100  

 魔力:1+150  

 敏捷:7+350  

 技量:1+100  

 魅力:0+100 

 名声:0+100  

 スキル・闇魔法:LV10・刀剣術:LV10・聖魔法:LV10【NEW!】・超人体:LV10・罠感知:LV10・敵感知:LV10・偽装:LV10・ステップ:LV10・カウンター:LV10 ・隠密:LV10【NEW!】

 武器 漆黒の刀:250 ・防具 漆黒の衣:150 

 斥候の紋章 ・耐性の紋章 




 儀式のスキルを使ってジョブを聖魔導士に変えてスキル統合して斥候に変えた。

 だが、多用は出来ない。

 儀式のスキルでジョブチェンジする事で、MPを100ポイント消費するのだ。

 実際俺はジョブチェンジ2回の為に魔力ポーションを消費している。



 その代わりメリットは大きい。

 教会でのジョブチェンジ=エチエチイベントだが、【儀式】のスキルを取ればエチエチイベント無しでジョブチェンジできる。

 ここ重要!

 超重要だ!


 一回エチエチイベントを受け入れてしまうと、なし崩し的にエチエチイベントラッシュコンボが発動する。

 俺は時間を無駄にしてしまった。

 アオイも、エリスも、良かった。


 ……く、今はステータスを考える!

 考える事を減らしたい。

 スキル枠を空けておきたい。

 空けておかないと、微妙にストレスがかかる。


 また考えすぎて過労になるのは良くない。

 考えず、ひたすら動く時期も意図的に作る。


 聖魔法を一気にスキル統合したから、次は斥候もスキル統合する。

 これで、スキル枠を6枠か7枠までに抑える状態に持って行く。

 今は考えるのはやめよう。


 うさぎ亭に戻って食事にするか。

 もう日は昇り、昼になっていた。


 俺がうさぎ亭の大部屋に戻ると、全員が俺を見る。

 はいはい、昨日の件だよな?


「食事は出来てますよ!ハヤトさん!」

「昼はダンジョンで戦い、夜は女を抱く、ハヤトさんはまさに男の鏡なのです」

「お、おはよう」


 エリスはまだ恥ずかしそうにしている。

 そして、いつもきゅうを回収に来るヒメがきゅうを回収に来ない。

 俺は大きいテーブルにきゅうを乗せる。

 

 そこでやっとヒメがきゅうを回収した。

 鳥の餌付けを思い出す。

 

 俺は食事を摂りながら、兵士やメイドにベッドでの事を色々聞かれた。

 3日くらいは続きそうだ。

 そう思った。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る