第46話

【スティンガー視点】


 やっと帰ってきたか。


「訓練部隊!帰還しました!50名中死者10名!」


 訓練部隊の隊長が我に敬礼する。


 ほう、新しく入った剣聖ツヨシと勇者アサヒも生き延びたか。

 こいつらは代償が来るまでの使い捨てだが、それまでは使ってやろう。


「うむ、我ら主力部隊はダンジョンへの遠征を行う。それまでに、ファルナとアオイ、それと、見目の良い者すべてを捕まえておけ」


「は!かしこまりました!」


 今は魔物を貫き、金を集めよう。

 そして帰ったらファルナとアオイを突いてやる。


 穿つ者であるこの我の力を見せてやる。

 ダンジョンでも、帰ってからもな。


 スティンガーはダンジョンに出かけて行った。





【勇者視点】


 やっと帰ってこられた。

 僕は生き延びた。

 この隊のやつらの前では笑顔で居よう。


 僕をバカにした剣聖ツヨシ。

 そしてこの隊のくそども。

 僕が殺してあげよう。


 序列下位の僕には雑用しか回ってこない。

 女は上位の者だけが抱ける。

 許せない。

 僕を何だと思っているんだ?


 僕は覚醒した。

 今に思い知らせてやる。


「おい!アサヒ!仕事をしろ!」

「はい!すぐに」


 僕は笑顔で言った。

 覚えていろよ。

 いや、忘れていてもいい。


 思い出す時は、みんなが死ぬ時だ。


「おい!アサヒ!」


 剣聖ツヨシが近づいてきた。


「なんだい?」


 僕は笑顔で言った。

 

「お前の序列はいくつだ?」

「70だよ」

「は!そうかよ!俺は50だ!」


「そうかい、トップ50入りももうすぐだね」

「は!分かってんじゃねーか!ビビりのアサヒ。俺は上に上がる!そしていい思いをする!」


 僕は笑顔を張り付ける。

 運よく序列を上げた程度でいい気になるなよ。


 剣聖は攻撃に特化しているが、僕と同じでジョブチェンジ出来ない。

 そして、斥候のスキルを取れない。

 これは致命的だ。

 ツヨシの強さはパーティー戦で発揮されるが1人になればもろさを見せる。


 いつか弱点を突いて潰す。


「ま、おまえも序列は上がるだろ。上の序列が死ねばなあ!お前はそれしか出来ねえよ!」

「僕ももっと頑張るよ」


「頑張ってもビビりには無理だがなあ!」

「そうかい?僕は仕事があるんだ」


「雑用ヨローーーー!!」


 そう言ってツヨシは去って行った。


 頭にくる。

 あの言い方は明らかに僕をバカにしている。

 今に見ていろ!

 

 お前が気付いた時。

 それはお前が死ぬ時だ。


 僕は洗濯物を洗う。

 高速でもみ洗いする。

 怒りを洗濯物にぶつけた。

 

「アサヒ、余裕だな!これも頼んだぞ!」


 くそくそくそくそ!

 




 ハヤトや汗豚は後回しだ。

 今はツヨシだ。

 そして英雄騎士団も許さない!

 







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