第45話

【勇者アサヒ視点】


 僕は英雄騎士団に選ばれた。

 僕は勇者、英雄騎士団の響きは僕にこそふさわしい。

 僕はダンジョンの4階に居る。


 僕の華麗な戦闘で皆を圧倒してあげよう。

 そして僕が崇められ、トップに上り詰めるだろう。


 ボッチのハヤトと僕は違う。

 僕は英雄で勇者だ。

 残念ボッチコミュ障で根暗のハヤトとは違う。


 ここでレベルを上げ強くなる。

 更に魅力も上げてハーレムを作る。

 良くなる未来しか見えない。


 英雄騎士団の団員は100人。

 今は入団したばかりで序列は高くない。

 でも僕は勇者だ。

 すぐにぶっちぎるよ。



 隊長格の男が前に出る。


「皆無事50名全員が4階にたどり着いたか。だがパーティーでここまでたどり着くのは英雄騎士団であれば当然だ!本番はこれからだ!お前たち!この試練を無事突破し、真の男となれ!真の英雄騎士団の隊員となれ!俺からは以上だ!総員!連携を取りつつ魔物を倒せ!」


「「うおおおおおおおおおおお!!」」


「アサヒじゃねえか。おいおいおいおい!ビビりがこんな所に来て大丈夫か!?」

「剣聖、ツヨシ!」


「おい!お前の序列は?」

「僕はまだ入ったばかりだからね」

「俺もだよ!だから!序列はいくつだ?」


「僕は入ったばかりだよ。これから一気にぶち抜く」

「俺は70だ。お前は入ったばかりなら90か。ま、おまえが80になってる頃には、俺は40になっているだろう」


 英雄騎士団にはランク制度がある。

 40なら41から50位の間になる。

 常に競争が行われ、バトルモードや功績で順位が変わっていく。


 アサヒは90で91~100位の位だ。

 英雄騎士団は団長を除き、100名で構成されている。


 剣聖ツヨシの序列は70なので、剣聖ツヨシの序列の方が上になる。


 ツヨシは満足したように持ち場に戻っていった。

 そして魔物狩りが始まる。


「アサヒいいい!何をやっとるかあああ!すぐにトラップを解除せんかあああ!」


 僕は何度も怒鳴られた。


「アサヒいい!回復うううううう!」

「アサヒいいいい!なぜその能力値を上げたあああ!」

「アサヒいい!」


 ステータスを見られ、団の方針に合わない能力値振りをすると怒鳴られる。

 僕の自由はどこに行った!

 これじゃ刑務所と変わらない!



 アサヒは納得していないが、英雄騎士団の指導は理にかなっていた。

 アサヒに敏捷の能力値を上げさせ、アサヒの能力値はまともになっていった。


「ラビットに!こ、ころされるうう!」


 団員が逃げ出そうとする。

 それを後ろにいた指導官が斬り殺した。


「逃げたら斬り殺す!戦え!死ぬ気で戦え!逃げだした者は俺が殺してやる!」


 も、もう5人死んだ。

 まだ4階だ。

 5階まで登るのか?

 狂ってる。

 僕たちを消耗品のように考えている。


 アサヒはステータスを監視され、ギリギリまで追い詰められた後テントで就寝した。




【次の日の朝】


 隊長が皆の前で檄を飛ばす。


「次は5階に進む!逃げた者は後ろから斬る!特にアサヒいいい!ビビりのアサヒい!お前の後ろは常に見張っているうううう!逃げたら斬り殺してやる!ありがたく思えよおおおおおおお!」


 こうして魔物狩りが始まる。


「ああああああああああ!」


 僕は必至で双剣を振るが、ゴブリンキングのこん棒に吹き飛ばされた。


「周りの者はアサヒがターゲットを取っている間にしっかり攻撃せんかぁ!」


 隊長の怒鳴り声でパーティーのみんながゴブリンキングを攻撃する。


「ヒール!」


 今の内に回復だ。


「アサヒい!得意のブレイブアーツはどうしたあ!お前にはそれしか取り柄が無い!早く使わんかあ!」

「くう!ブレイブクロス!」

「シャキッとせんかあああ!1時間に1回しか使えんブレイブアーツの使いどころを見極めろおおおお!」


 十字の斬撃がゴブリンキングにヒットした。


 地獄だ。

 ここは地獄だ。

 何人死んだ?

 もう分からない。


 戦い方が無茶すぎる。

 レベルが上がってスタミナは上がっているはずだ。

 でも苦しい。

 体が痛い。

 魔力が少なくて具合が悪い。

 気持ち悪い。

 吐きそうだ。


「アサヒいい!ブレイブショットだろおがああああ!ゴブリンキングに使わずいつ使うのだあああ!早く使わんかぁあ!」


「ブレイブショット!」


 両手から魔法弾を連続で発射する。


 ゴブリンキングが倒れる。


『レベルが50にアップしました』


『勇者LVが4から5にアップしました』


『固有スキルの効果で体力・魔力・敏捷・技量の数値がそれぞれ50ポイントアップします』


「は、はははは!勝った!そして僕は覚醒した!そうか、今まで固有スキルのLVがアップしても変化が無かった。でもついに覚醒した!僕は勇者だ!僕は選ばれた人間だあああ!!!」


 ぱちぱちぱちぱち!


「おめでとう。勇者アサヒ!これでもっと戦えるなあ!もう手加減は不要か!あのゴブリンの群れに突撃しろ!」


 隊長の指差した先にはゴブリンの群れが居た。

 それより気になったのは倒れて動かなくなった人だ。


 何人死んだ?


 隊長を殺すか。

 その方が生存率は高い。


 その瞬間隊長の剣が俺の首の手前で止まる。


「死ぬか、勇気を見せるか、選ばせてやる」


 動きに反応出来なかった。

 逆らえば殺される。


「うああああああああああ!」


 僕はゴブリンの群れに突撃した。


 アサヒは英雄騎士団のしごきで力を高めた。

 そして英雄騎士団への敵意も高めていく。

 







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